HTVの明日
「熱原くん!」
大慌てで一風部長が編集室に入って来た。
「あの子らに何をした!?」
「何もしてませんよ……」
熱原局長は回転椅子に寂しそうに座りながら、光をなくした目で、言った。
「みんな自分の意志で、出て行ってしまいました……」
「せっかく人気が出始めたところだったのに……」
一風部長は床に膝をつき、うなだれた。
「巨乳どもの半分の視聴率をやっと少し越えたところだったのに……」
「貧乳戦隊おっぱいナインジャーZは我が局唯一の看板番組でした」
熱原局長は、何もかもを諦めた人のように言った。
「これで明日から私たちは路頭に迷うことになるでしょう」
「熱原くん」
「一風部長」
二人は心中を決意するカップルのように見つめ合った。
そこへ漉王老師が妻たちを引き連れて入って来た。
「やー、熱原くん。わし、用済みみたいじゃから、インド帰るね? っていうか貧乳戦隊のトレーナーとして呼ばれてわし、なんにもしてなかったけどね、結局」
「あっ」
「おっ」
熱原局長と一風部長は揃ってそっちを見た。
漉王老師の背後に、5人の美女が立っていた。
ナーナミ・イート
げん・ラー
そしてインドから漉王老師を追って遂にやって来た残り二人の妻──
ソラーハ・ラウミ
サッキー・ソーラ
もう一人は日本人で、最近、新たに迎えた5人目の妻──
とりあ えずこ(・ω・)はん──であった。
ずらりと立ち並んだ迫力の美女たちを見て、熱原と一風は思わず呟いた。
「行ける……!」
「行けるぞ、これは!」
「「インド美女戦隊! 新番組を作るんだ!」」
「あのう……」
漉王老師がうろたえる。
「インド……、帰りたいんじゃが……」
「お願いします! 老師!」
熱原が老師の手を握る。
「我々、崖っぷちなんだ! あなたの美人妻たちを貸してはいただけないでしょうか!」
「これは行けるぞ! 日本人好みのインド美女ばかりだからな!」
一風部長は興奮している。
「しかも日本人の、和食のようなあっさり美女が一人、これがいいアクセントになっている! これは当たるぞ! しかも全員、ぼん、ぼぼぼん……ボイィ〜〜〜ン!」
「局の名前をHTVからBTVに変えなければいけませんね、一風部長!」
「それぐらいのこと! フ◯トワークがト◯ルエクスプレスジャパンに変わる程度のこと! この私に任せろ、熱原くん!」
「あのう……」
漉王老師の声は、もはや二人には聞こえていなかった。
「勝手に話を進めないでくれんかの。……うちのヨメたちの意思も……」
5人の妻たちは声を揃えて言った。
「私、やりたいですわ」
「アイドルになれるんかー、やたー!٩(ˊᗜˋ*)و」
「みんながやるって言うなら、私もやるしかないわね。何を隠そう映画女優みたいになりたいって思ってた私だもの」
「こたつでみかん食べながら、あのひとのことを思い出したいと思います」
「私はけんちん汁定食が食べたいかな(・ω・)」
「よし! 早速新しいスーパー戦隊の名前を決めよう! 『三神一体ヒンディージャー』とかどうだろう?」
「センスがないな、熱原くんは。大体5人いるのに三神はないだろう。ここはやはり、アレだ。『神のおっぱいを持つ戦隊カミパイジャー』で行こう。うふふふ(・∀・)」
「し……、知らんぞ。日本が沈没しても、わしは知らんぞ」
漉王老師はそう言い残し、6人目の妻を作るために街へと出ていった。
「知らんぞーーっ!」
この作品はフィクションであり、登場する人物名はすべて架空のものであり、実在のなろう作家さんとは何の関係もありません
※とりあえずごはん(・ω・)様より許可はなんとかいただいております




