表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨乳戦隊キョニュレンジャー VS 貧乳戦隊おっぱいナインジャーZ  作者: しいな ここみ
第十章 巨乳ブルー 青野ヶ原 虚無子の恋
78/105

恋のはじまりは唐突で

 貧乳ブルーこと微風そよかぜユレンは、小さな口でダルゴナコーヒーを上手に飲むと、わずかに口の周りについた泡をそっと舐め取った。


 目の前では巨乳ブルーこと青野ヶ原(あおのがはら)虚無子こむこが口の周りに派手に泡のひげを生やして、自分をナンパしてきたはずのチャラ男と楽しそうに会話している。


「おまえ、おもろいなー。おもろい女は俺、好っきやで」

「あんたはチャラいなー。でも、なんか嫌な感じせぇへんわ」


 ユレンはチャラい男は苦手なはずだった。


 しかし、今、なんだかくっつきかけている二人を見ていると、取り残された寂しさとともに、心の奥から羨ましさがモワモワと煙のように、湧き出てくるのだった。


『いいな……』

 口に出してもどうせ虚無子こむこにしか聞こえないのだが、ユレンは心の中で思った。

『いいな……、こむちゃん。男の子と、楽しそう……』


「よっしゃー! こむこちゃんの連絡先ゲットぉー」

「今度どっかに遊びに連れてってなー」


「あっ。ユレンちゃんも……」

 チャラ男がこちらを振り向いた。

「連絡先、教えて?」

 急に標準語に戻った。


「あのっ……。戦隊のルールで異性交友禁止されてますんで……っ!」

 そう答えたが、聞こえなかったようだ。


「え? なんだって?」


 虚無子が助け舟を出す。

「その娘、アイドルやってんねん。恋愛禁止や」


「わぁ! アイドル? 道理でかわいい〜って、思ったよん!」


「あ……、アイドルじゃ……ない」


 虚無子がウィンクして、口の動きで『そういうことにしとき』と言う。


 チャラ男はしつこくユレンの芸名、活動拠点などを聞いたが、すべて虚無子が「まだ売り出す前やからネットにも出てへんで」と、うまく誤魔化した。


「じゃ、こむこ〜。また遊びに誘うなっ!」


 そう言いながら、手を振ってチャラやかに、江尻くんはカフェを出ていった。


 虚無子も手を振り返しながら見送ると、二人きりに戻ってユレンと話をはじめる。


「やー! チャラい男嫌いや思っとったけど、あんな鬱陶しくない、イケてるチャラ男もおるねんな〜」

「こむちゃん……、ニセ京都弁、消えてるよ?」


「えーねん、えーねん。なんか今、素の自分をさらけ出したい気分やねん」

「ところで巨乳戦隊って、恋愛禁止じゃないの?」


「ウチらはテレビ局と契約しとった時から、むしろ恋愛は推奨されとったで」

「ほんとに!?」


「うん。『恋は乳を育てる』いうてな、田良子坂たらこざか局長も『自分の好きを大事にしろ』言うとった」

「いいな……」


「玲子はんが立ち上げた『獏羽生ばくにゅうプロダクション』も、方針は一緒やねん。『よく食べて、よく動いて、よく心にも栄養を』って言うてるわ」

「羨ましい……」


「貧乳はんたちって、ホンマに恋愛禁止なんやなぁ……」

「うん。そっちの逆……。『なるべく女性ホルモンを分泌するな』って」


「やめり! やめり! そないな鬱陶しいルールのある戦隊なんか。ウチに来たらええやん」

「び……、Bカップじゃ無理だよ」


「もうね、玲子さんが『巨乳縛り』やめてもええ言い出してんねん。そっちのメンバーみんなこっちに来ればええ」

「え……」


「10人で、おっぱい関係なしの『美少女戦隊』作ろうや。あ、少女やない人も若干名、おるけどな。アッハハ」

「……」


「な? みんなにも相談してみ? メンバー増えたら楽しゅうなるわ〜」

「……」



 ユレンの心の中がざわついていた。


 自分に声をかけて来たイケメンの男の子を、虚無子に横取りされたような気持ちがしていた。


 虚無子は自分を助けてくれたのに、そののほほんとした柔和な顔つきが、裏で舌を出しているように感じてしまう。


 二人は一緒に遊びに行くことを約束したという──



 虚無子の誘いに、今はどうしても乗る気になれず、コーヒーを一口黙って飲むと、間を置いて、こう答えた。



「……考えさせて」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
疎外感ー! 内気なヒトは男女問わずにこういう感じになるよな~。 解る解るよユレンちゃん。 病み度が高いとヤンデレるんだけど、彼女はそうはならないかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ