幕間:参加選手たちの語らい
「あの社階灰汁って人、弱かったねー」
「結構イケメンだったけど、なんかヤバい人の香りがしたよね」
「優美の敵じゃないよ、あれは」
選手控え室で、それぞれに好きなものを食べながら、参加選手たちが雑談をしている。
全員が巨乳戦士か貧乳戦士である。敗退した謎のデブと謎のエロオヤジは帰宅していた。
「すまん……。オレも君と戦いたかったのに、負けてしまった」
巨乳イエローこと堀スタインが、貧乳イエローこと平野ぺたと長机を挟んで向き合い、プロテインバーを食べていた。
「巨乳を吸収する怪人が相手では仕方がないですよ」
平野ぺたはスナック菓子を食べながら、尊敬する先輩を慰めていた。
「相性が悪かったんです。吸われるもののないあたしだったから勝てたんです」
平野ぺたの齧るスナック菓子が、寂しげな音を立てた。
「うっ……く」
巨乳ピンクこと出階堂小心はまだ泣いていた。
「……ぐすっ」
貧乳ピンクこと鬱布瑛華もまた泣いていた。
二人で長机を挟んで向き合い、ひとつの袋からチョコパイを取りながら、食べていた。
「……あんたとどっちが強いか、決着つけたかったのに」
「よかったね。戦う前にボクたち二人とも敗北にされて」
「何がよかったのよ?」
「だってあんた怪人に捕まるしか脳がないじゃん。ボクのダンガン・ピンクを受けてたらきっと土偶が一瞬で割れるように壊れてたよ」
「バカにしないでよね! 大体、『のうがない』は『能がない』って書くのよ!」
「意味わかんない。土偶のくせに威張らないでよ」
しゃくり上げながら、二人は一つの袋からチョコパイを食べ続けた。
巨乳ブルーこと青野ヶ原虚無子と貧乳ブルーこと微風ユレンは仲良く紅茶を飲みながら、ロールケーキを食べていた。
「このロールケーキ、美味しいどすなあ」
「……」
「そうそう。皮の部分がしっかり食感で」
「……」
「なかなかグルメどすな、ユレンはん。そこまでウチは気づきまへんでしたどすえ」
「……」
「ふふ。笑った顔もおかわゆいどすな。ウチの弟の嫁に欲しいぐらいどすわ」
「……」
微風ユレンはようやく理解者を見つけたようだ。
巨乳グリーンこと牛野陽奈と貧乳グリーンこと千々梨マリアは、みんなと少し離れたところで白ワインを酌み交わしていた。
「みなさん楽しそうね。あたしたちも参加すればよかったかしら?」
「フフ……。牛野さんが参加したら治療をする人がいなくなりますわ」
「社階灰汁さん、治療をして差し上げようと思ってたのに、帰っちゃった……」
「フフ……。残念そうね、牛野さん」
「結構いい男だったもの。存分に治療を施してあげたかったところよ。ウフフ」
「でもあの方、誰かに似てたような気がします」
「そうね。誰なのかしら」
「まあ、弱かったですし、どうでもいいことかしら。ウフフっ」
二人は大人の乾杯をした。
巨乳レッドこと獏羽生玲子は一人、窓辺でモナ王を食べていた。
「あのひと……。見に来てくださると思ってましたのに……」
玲子は窓ガラスにそのひとの顔を思い描く。
キラーンと白い歯を光らせて、篠宮マサシが笑っていた。
後ろから貧乳レッドこと千々梨優美がソースカツを手に持ってやって来た。
「玲子さん」
「優美さん?」
「ソースカツ、美味しいよ。食べる?」
「ありがとう。でも、今はモナ王を食べているから……」
「ああ、ごめん。食べ合わせが悪いよね」
「でも、一口だけいただきますわ。かぷっ」
「ど……、どう?」
「新発見! ソース味ソフトクリームみたいで、なかなかイケますわ!」
「えっ! そうなの? モナ王、一口ちょうだい?」
「どうぞ、どうぞ。千切らずに直接齧っちゃって」
「イケる! これは新発見だね!」
「ふふふ。気が合いますわよね、わたくしたち」
「と……、ところで玲子さん……。き、キハ仮面さんは大会、参加しなかったんだね」
「ああ。あの方は神出鬼没ですから」
「手合わせしてほしかったのになあ……キハ仮面さん」
「ふふ……。わたくしの一存ではどうにもなりませんわ」
「でも玲子さんとは戦える」
「勝ち進んで行けば、ね」
「是非決勝で会いましょう!」
「ふふ。そこまでで当たっちゃうかも?」
二人はがっしりと握手をした。
漉王老師はカレーを食べながら、困った顔をしていた。
「次の試合……。一体、どうなることじゃろか」
そして傍らで仲良く鍋のカレーをチャパティにつけて食べる二人の美女をチラッと見た。




