第三試合 堀スタイン vs 謎のデブ
さて、サクサクと参りましょう、馬込さん。
それがいいですね。
第三試合の出場選手は既にネクストバッターズ・サークルに入っております。
野球じゃないんですから……。
赤コーナー、堀スタイン選手。青コーナーには謎のデブ選手が入っております。
謎のデブってなんなんですか。
堀スタイン選手は日本とノルウェーのハーフ。がっちりしたマッチョな肉体にGカップのバインバインな胸を揺らす男気に溢れた格闘家です。
バインバインな時点で男気はないんじゃないでしょうかね。
対する謎のデブ選手。ほんとうに謎です! デブだということ以外には何もわかりません!
描写ぐらいしてくださいよ。
「あれは君が作った怪人だね? ウシノくん」
あっ? 私どもの後ろから謎の白髪の老人が放送席に乱入して参りました! 誰なのでしょう!?
ああ、大会主催者の方ですよ。松戸バーカー博士ですね。
「フフフ。その通りですわ。松戸バカ博士」
おおっと!? また一人、放送席に乱入して来た! 今度は白衣に身を包んだ赤いメガネの綺麗なお姉さんだ!
綺麗な方ですね。
「残念だが相手が悪かったな、ウシノくん。あれこそ私がファンをやっている巨乳マッチョの堀スタインくんだ。君のポンコツ怪人ごときが敵う相手ではない」
「ウフフ……。それはやってみないとわかりませんわ」
どうやら主催者の松戸博士は堀スタイン選手のファンのようです! えこひいきとかするつもりなんですかね、馬込さん?
主催者がえこひいきしたって何も変わりませんよ。実力勝負ですからね。
「堀スタイン先輩、頑張れ!」
おおっと!? また一人、今度は黄色いトレーナーを着たショートカットの貧乳美少女が放送席に乱入して来ましたよ?
誰なんですかね。
「あっ。あたしは平野ぺたっていいます。堀スタイン先輩と戦いたくて、この大会に選手として参加しています」
なるほど。挑戦者なんですね?
それほどまでに堀スタイン選手は強いんですか?
「はい! 堀スタイン選手こそ陸上最強の生物です!」
おおっ! 陸上生物最強の称号、出ました!
ファンらしいオーバーなコメントをいただきましたね。
「よくわかってるね、君! しかも明るくて我々を元気にしてくれるあのカラッとした性格が最高なのじゃ!」
松戸博士もいかにもファンらしい発言だ!
誰かを好きになれるのって羨ましいですね。
「クスッ」
「何を笑うのかね! ウシノくん!」
「陸上最強生物を作り出せるのはこのわたくしだけですわ」
綺麗なお姉さんが自信満々の発言ですが意味がわかりません。
謎のデブを作ったのはこのお姉さんということでしょうね。
それでは試合開始です! どちらが勝つと思いますか? 平野ぺたさん?
いや、そこは解説の私馬込に聞いてくださいよ。
「堀スタイン先輩……頑張れ」
おおーっと! 平野さん、私の質問を無視して祈るように手を握り、ただ呟きました!
誰かを応援する美少女っていいもんですね。
カーン!
ゴングが鳴りました! 両者間合いを素早く詰める!
どちらも速攻型のようですね。
「ハハハハハ! そんなだらしない体型でこのオレの筋肉に勝てると思うのかい?」
堀スタイン選手、自慢の肉体美を誇らしげに俊敏に動かし、謎のデブ選手にストレートを打ち込みました!
Gカップの胸もいい具合に揺れてますね。
ぼよ〜ん!
あーっと!? 謎のデブ選手、渾身のストレートをお肉で弾き返しました!
骨まで遠そうですよね。
「うわあーっ!?」
堀スタイン選手、絶叫です! 何かダメージを受けたんでしょうか?
弾き返されただけに見えましたけどね?
「ウフフ……。あの子は贅肉のかたまり。全身が贅肉で出来ているの」
おおーっと!? 綺麗なお姉さんが解説を始めましたよ!?
セクシーな声ですね。
「あの子の名前は『怪人マックスメタボ・レディー』。動きは鈍いけれど誰もあの子には触れられないわ。あの子の贅肉に触れた途端、すべてのものは砕けて散るのよ」
なるほど! いわば防御特化型ということですね!? 最強の防御は最強の攻撃ということですか! ねえ? 答えてくださいよ、綺麗なお姉さん!?
無視されてますよ、新館さん。
「何をーっ! 負けるかーっ! 根性ォーっ!」
堀スタイン選手、懲りずに今度は中段蹴りを繰り出します!
迫力がありますね。
ズボッ!
なんとーっ!? 堀スタイン選手の右足が、謎のデブ選手のお腹に突き刺さったーっ!
まるで足を食虫植物に食われたようにも見えますね。これは危険な捕食だ。
「堀スタインくーんっ!」
「堀スタイン先輩!」
二人の熱烈なファンの声も虚しく、堀スタイン選手、謎のデブ選手の体の中へ取り込まれて行きます!
これはエグい捕食シーンですね。
どんどんどんどん! 堀スタイン選手の体が謎のデブ選手の中へ埋まって行きます!
これは……本日2回目の殺人シーンが見られるかもしれませんよ?
「根性ォーっ!!」
あーっと! 堀スタイン選手、根性で抜け出した!
しかし……! み……、見てください、新館さん!
「ハア……ハア……」
おおーっ!? これはっ……!? 堀スタイン選手の巨乳が……! 少しだけ小さくなっているーっ!? Gカップだったのが、明らかにFカップぐらいになっています!
どうやら女性として大事なものを吸われてしまったようですね。
「……ニコッ」
バタッと倒れました、堀スタイン選手! 最期の笑顔はなんだったのでしょうか!?
おっぱいが小さくなったというのに嬉しそうでしたよね?
「先輩は……胸を小さくするのが夢だったんです」
平野ぺたさんが涙を流しながら解説してくれました!
しかし、なぜ、あんな立派な胸を持ちながら?
「格闘家として、あんな重たいものは、動くのに邪魔なだけだって……。ウウッ……!」
堀スタイン選手、敗北しながらも幸せそうに笑っています!
試合終了ですね。平野さんの涙の理由は悲しみなのか、清々しい笑顔で倒れた先輩への祝福なのか、私どもには推し量れません。




