BUTOKAI
「オレ、ぶとうかいに出るんだ」
巨乳イエローこと堀スタインがそう言ったのを聞いて、巨乳ピンクこと出階堂小心はすぐに、踊るほうの舞踏会ではなく『ああ、闘うほうの武闘会なんだな』と気がついた。
堀スタインのムキムキの筋肉を見れば、誰だってドレスよりもタンクトップとトレーニングパンツのほうが似合うと思うだろう。
爽やかに白い歯を見せて笑いながら、「ピンクも出ないか?」と誘う。
「あたし、イエローと違って武闘派じゃないもん」
「大丈夫。得意な戦法で闘える大会なんだそうだ。だからピンクも得意のアレで闘ればいいさ」
「あたしの得意って……」
ピンクは考えた。
自分の得意は……アレだ。相手に簡単に捕まり、敵に隙が生まれたところに、仲間に強力な攻撃をぶち込んでもらう。敵はそれで爆発するけど、自分は自慢のIカップで攻撃を弾き、無傷で生還できる。つまりは囮だ。
ピンクは読んでいたティーン向けファッション雑誌を投げ出し、ソファーに顔を埋めて泣いた。
「あたし……、考えたら一人じゃ何もできない子じゃない!」
「大丈夫」
イエローが勇気づけるための言葉を優しくかける。
「それを打ち破るために、参加することに意義がある」
そしてまた白い歯を見せて笑ったが、その頭は何も考えていなかった。
♡ ♥ ♡
「え。武闘会?」
控室のソファーでスマホをいじっていた貧乳ピンクこと鬱布瑛華が顔を上げた。
「うん! 絶対楽しいと思うんだ。瑛華も参加してみなよ!」
貧乳イエローこと平野ぺたが興奮しながら言う。
「それって弾丸みたいに飛ぶのもあり?」
「もちろんだ! なんでもありの武闘会なんだ。瑛華にはそれしかないからな」
「ふぅん……」
興味なさそうに瑛華が目をそらし、スマホで再びラーメン屋情報を閲覧しはじめる。
「考えとく」
「巨乳さんのほうのピンクも参加するらしいよ」
イエローのその言葉に、瑛華の目がギラついた。
「え?」
「向こうのピンク……出階堂ちゃんとはライバルなんだろ? どっちが強いかはっきりさせるチャンスじゃない?」
「ら……、ライバルなんかじゃないけど……」
瑛華はスマホを置き、立ち上がった。
「あの子きらいだからぶっ倒したい!」
「よし! じゃあ一緒に参加登録しとくよ」
ぺたも目をギラギラと輝かせた。
「あたし、堀スタイン先輩と闘ってみたかったんだ!」
テーブルの上に武闘会のチラシが置かれていた。
それには大きな文字でこう書いてある。
『日本一強いのは果たして誰だ?
おまえの力を見せてみろBUTOKAI開催!
優勝賞品は最強の称号だ!
主催者 松戸バーカー博士』
♡ ♥ ♡
「あら。ナインジャーのブルーはんではおまへんことぉ?」
「あっ……」
貧乳ブルーこと微風ユレンが街のファンシーショップでかわいい商品を見て回っていたら、へんな京都弁でそう話しかけられた。
「かわいいところでばったりお会いできて、奇遇やなぁ」
へっこり笑う彼女は巨乳ブルーこと青野ヶ原虚無子だ。
「ところでユレンはん、例の武闘会にはお出になるんどすえ〜?」
「わたしは……その……闘いなんて……」
「水の龍でも飛ばせばユレンはん、最強やと思いますわぁ〜」
へろへろ柔和に笑いながら虚無子が言う。
「わたくしも弓を持って参戦いたしますどす〜」
「え……。参戦……するんですか?」
「はい〜」
「って……いうか……」
「はいな〜?」
「虚無子さん……。わたしのちっちゃすぎる声が……聞き取れるんですか?」
「耳のよさには自信ありますどすぅ〜」
この日から二人は親友になった。




