白マサシと黒マサシ
「やあ、キョニューレッドちゃん」
篠宮マサシは何を隠そうとする素振りもなく、笑った。
「そういえば以前、君とホワイトマサシの時に会ったよね」
「ホワイトマサシ?」
キョニューレッドこと獏羽生玲子の流す再会の涙が、止まる。
「貴方は……篠宮マサシ様ではありませんの?」
「僕は白い時と黒い時があるんだ」
マサシは胸を張って、自慢げに言った。
「今の僕は白黒マサシさ」
そう言うなり、また怪人めがけて猿のように飛びかかって行く。
「……どういうことなの?」
玲子は意味のわからなさに動けなくなってしまった。
「篠宮マサシ様が生きてらっしゃった……わけではないの?」
「玲子さん。アイツを知ってるの?」
ヒンニューレッドこと千々梨優美が崩折れそうになる玲子を支えながら、聞いた。
「以前に助けてもらったことがあるのよ」
「あー。アイツ、海難救助隊員やってたもんね」
「そう。客船の沈没事故で……。でも、あの方は別人なの?」
「私も最初、騙されたんだよ。爽やかなひとだと思ってたら、正体はただの変態だった。あれが篠宮マサシの正体だよ!」
そう言って優美がゴキブリを指差すように、怪人と戦う篠宮マサシの後ろ姿を指差した。
そう言われても玲子の目には、やはり彼はヒーローにしか見えなかった。
単に変態的なコスプレをしているだけだ。ピッチピチのしまうまスーツにミニスカートを穿いているだけだ。
死んだと思っていた憧れのヒーローが生きていてくれた。自分には変態のふりをしている彼の真の姿が見えている、そう信じた。
気になることを聞いてみた。
「優美さんはどういうお知り合い?」
「前にね、恋人同士だった」
がーん
頭の中で除夜の鐘のようなものが響いたが、玲子はすぐに頭を振って108煩悩を振り払い、初日の出を拝むように立ち上がった。
「わたくし……、あのお方をお守りしたくて、強くなりましたの」
その表情は微笑み、目には涙が浮かんでいる。
「もう強くなってもお守りするあのお方はいらっしゃらないと思ってた……。でも……」
優美が聞く。
「玲子さんは、マサシのことが好きなの?」
「ええ!」
玲子が駆け出す。
「強くなったのは無駄ではなかった! あの時、あのお方に守られてばかりだった自分を、わたくしは変えた! 今こそわたくしが、あのお方をお守りする番!」
「そっか……」
優美の瞳に炎がともる。
「それじゃ、私も玲子さんの大切なマサシを守らなきゃ」
玲子の後を追って駆け出した。
「それが、私の、正義だから!」




