貧乳ブルーの疑問
巨乳戦隊キョニュレンジャーが見事な巨乳技で怪人パワハラジョーシを倒すビデオを見終わると、熱原は溜め息をついた。
「やっぱり……いいな、巨乳……」
すぐにぶんぶんぶんとかぶりを振る。
「いやっ……! 私達は世に知らしめなければならんのだっ! 貧乳の素晴らしさを……」
「なんとか巨乳戦隊を潰せんもんだろうか」
隣に座る一風部長も嘘つきな顔だ。
「あんなものを毎週見せられていては目の毒だ。なんとかこの世を、ぺったんこに、落ち着かせたい」
「私達が戦います!」
貧乳レッドこと千々梨優美が拳を握り、言った。
「巨乳戦隊なんかより私達オッパイナインジャーZのほうが強いってとこ、見せてやる」
「慎ましさがなさすぎるのよ」
貧乳イエローこと平野ぺたも闘志満々だ。
「あんな牛みたいな乳、戦う時に邪魔なだけだわ!」
モニターを囲んでいる4人の後ろで、ばんっ! と机を叩く音がした。
何事かと振り返ると、メンバーの中で一番大人しい、貧乳ブルーこと微風ユレンがそこに立っていて、机に手をついてわなわなと震えている。
「みんな……っ! ほんとうは気づいているんでしょう?」
ユレンはか細い声を最大にして、それでもまだ小さい声で、言った。
「何をだ? 微風」
熱原が怪訝そうに聞く。
千々梨と平野は『何? 頑張って! ほら! 言ってみ?』と励ます顔だ。
微風ユレンは大きく息を吸い込むと、小さな声をさらにフルボリュームにした。
「なぜ……巨乳と戦う必要があるんですか!? 私達、どっちも悪と戦うスーパー戦隊だから、目的は同じでしょう!? なんか、何か巨悪的な力に踊らされてるような気が……するっ!」
4人は耳に手をあてて、なんとかそれを聞き取ると、揃って溜め息をつき、首をふるふると横に振った。
「わかってないな、微風は……」
一風部長がやれやれという顔で説明する。
「俺達は争ってるんだぞ? どちらがいい番組を作って、より視聴率を稼げるか。そして何より、貧乳と巨乳のどちらが優れているかをな」
「何かがへんっ!」
微風ユレンはたじろぎながらも続けた。
「私達……、同じぐらいの年頃の女の子同士でしょう? 仲良くすればいいのにっ!」
「参ったな」
熱原が立ち上がる。
「まさか仲間内に志を共にしていないやつがいるとは思わなかった」
何かを感じ取り、千々梨と平野が声を揃えて聞く。
「熱原さん……。まさか……」
「まさか……。また……?」
「ああ。特訓だ」
熱原の目が、きらーんと熱く光った。
「インドへまた飛ぶぞ。全員でだ。漉王老師に鍛え直して貰おう」
そして微風ユレンを睨むように見る。
「特に貧乳ブルー! おまえの根性を叩き直して貰う!」
びくん! と微風ユレンは怯えるように肩を跳ね上げた。