貧乳戦隊の新メンバー
「突然だが新メンバーを紹介する」
熱原プロデューサーが言った。
「ヒンニューブラック&ホワイトこと黒木メイコちゃんだ」
「黒木メイコでぇ〜す」
やたらくびれのない、ぺったんこというよりは胸筋のある胸をした、黒いストッキングをかぶった美少女……なのかどうかよくわからないものが、ぺこりと愛想よく挨拶をした。
マリアが意味ありげにくすっと笑う。
優美が気になるものを見るようにメイコをしげしげと見る。
熱原が紹介を続ける。
「彼女は見ての通り、なんだか男らしいキャラだ。バラエティーに富んでいるほうがいいとの判断で合格させた」
てへっ☆ と、メイコが照れたポーズを作って笑う。
「メイコちゃん、自分で自己紹介を……」
「よろしくお願いしまぁす! あたし、強くなりたくて、この戦隊に入隊しましたぁ。先輩方のない胸をお借りしていいですかぁ?」
イエローがそう言われてAカップの胸を傷ついたような表情で、隠した。
「メイコちゃん」
優美が控室で話しかけた。
「メイコちゃんって……、もしかして、私が知ってるひと?」
「なんでですかぁ?」
メイコがぶりぶりと気持ち悪い動きをしながら聞く。
「千々梨先輩のことはもちろん知ってますけどぉ……、でも初対面ですよぉ〜。あたし、ただのファンだったんだから」
「あのさ……。なんか男みたいな匂いするよね?」
「気のせいですぅ〜。ってゆうか、ひどいぃ〜」
「その喋り方気持ち悪いからやめて」
「ひどいですぅ〜」
「もしかして篠宮マサシじゃないよね?」
「なんのことですかぁ〜?」
「私を追いかけて、変装して女性戦隊に入隊してまで……ストーカー?」
「そうじゃないっ」
黒木メイコは男の声を出した。
優美がゴキブリを見たように、壁際まで一瞬で後退した。
黒木メイコは黒いストッキングを顔から脱ぐと、篠宮マサシの顔を現した。
「僕は君の胸が好きなんだ」
マサシは言った。
「僕が好きなのは世界でただひとつ。君の胸だけが好きなんだ」
篠宮マサシは貧乳フェチであった。
豪華客船でキョニューレッドこと獏羽生玲子を助けた時に、その見事な巨乳には目もくれず、玲子から誠実な男性だと思われたのも、巨乳には興味がないからであった。
「最低……っ。熱原さんに男なのバラして即刻クビにしてもらうっ!」
がしっ!
篠宮マサシが後ろから優美を羽交い締めにして引き止めた。
「ぎゃああああ!」
優美が狂ったように叫ぶ。
「忘れたのか? おまえのCカップだった美乳をAカップの貧乳にしてやったのは僕だ」
「放せ変態!」
「僕はおまえの胸を自分が作った最高の作品だと思っている」
優美は変身すると、必殺の正義エルボーを篠宮マサシのみぞおちに食らわせた。
「おぼうっ!?」
倒れるマサシ。これが並みの怪人なら一撃で爆発しているほどの威力であった。しかし彼は倒れない。
ヒンニューブラック&ホワイトこと篠宮マサシ。彼の能力は猿のような素早さと、何よりもその打たれ強さであった。
「優美ちゃあ〜ん。仲良くしてくださあ〜い」
この男と優美は一年前までは恋人同士だった。誠実な人だと思っていたら変態だった。
彼が好きなのは、優美の『胸だけ』だったのである。




