キョニューレッド 獏羽生玲子の座右の銘
この章はギャグなしのシリアスになる予定です(予定は未定)
名門国立美柔学院大学のキャンパスは秋の爽やかな風に吹かれ、学生達の顔も過ごしやすそうに綻んでいた。
「あっ」
「玲子さまよ! 玲子さまだわ!」
ブラウンのワンピース姿に長髪を靡かせ、ツンと上向きの巨乳を揺らして歩く彼女とすれ違う学生達は、皆が感激の声を漏らす。
「キャー生で見ちゃった!」
「実物はさらに素敵!」
高貴を絵に描いたようなお嬢様であり、巨乳戦隊キョニュレンジャーのレッドとしても知られる彼女は獏羽生玲子19歳。
玲子は日本を代表する私鉄会社『獏羽生鉄道』社長の娘でありながら、スーパー戦隊のオーディションに応募し、悪と戦うお嬢様となった。
生まれつき赤いサラサラのウェーブロングヘアにグレーのメッシュを入れ、細く尖った顎に切れ長の目、燃えるような大きな瞳が見る者を吸い寄せる。
特筆すべきはそのプロポーションである。159cmと決して身長は高くはないが、キュッとくびれた腰、迫力ある強そうなお尻、何より胸にそびえる上向きのGカップ。その弾けるような巨乳が揺れるとみんなの心も心地よく揺らされた。
「おい、玲子!」
メロンパン消しゴムを買いに購買へと歩いている時だった、中庭で玲子を呼び止める男の声があった。チラリとその顔を確認すると、玲子は無視して先へ行こうとする。
「おいおい! 無視すんなよ! 俺だよ、俺!」
ニヤニヤとゲスい笑顔で馴れ馴れしく声を掛けたのは、同じゼミのチャラい男、名前を葛五味彦といった。
「何か御用かしら?」
玲子は仕方なさそうに相手をする。
「わたくし、急いでいるのですけれど?」
五味彦は日本を代表する最大手の建設会社『クズ建設』の御曹司であり、身分的には玲子と対等といえた。
しかし玲子は彼のことを、同じ人間だとすら思っていない。
3人の取り巻きの男を従え、五味彦が近づいてくる。
玲子の肩を馴れ馴れしく触った。
玲子がすぐさまそれを手で払いのける。
「なあ、この間の話、考えといてくれたか?」
五味彦は挫ける様子もなく、玲子に顔を近づけた。
「何の話でしたかしら?」
「デートだよ、デート。デートしようって誘ったじゃん」
「悪いですけどわたくし、戦隊の仕事もあるし忙しいんですの」
そう言って先に行こうとした玲子の腕を、後ろから五味彦が掴んだ。
「なあ、一回ぐらいいいじゃんよ〜」
「無礼者!」
五味彦には何が起こったのかわからなかった。
ボヨヨヨ〜ンという音を聞いたと思ったら、いつの間にか第二講義棟の屋上まで飛ばされていた。
落ちたのが柔らかい芝生の上だったとはいえ、どこにもかすり傷ひとつない。
ちなみに中庭から第二講義棟屋上までは120メートル、高さにして15メートルの距離があった。
「こ……、怖え〜〜!!! あの女、怖え〜〜!!! 人間じゃねぇ〜〜〜!!!」
五味彦はそれ以来、玲子につきまとうのをやめた。
取り巻き達が呆気にとられて見つめている前で、玲子はパンパンとワンピースの胸を払いながら、五味彦を飛ばした方角を見ながら、言った。
「ごめんなさい、葛五味彦さん。わたくし、貴方のようなクズは論外として、殿方が苦手ですの」
キョニューレッドこと獏羽生玲子の座右の銘は『男の手を借りずに生きる』であった。




