一風部長の秘密
HTVを熱原とともに立ち上げた一風部長は、ほんとうは社長である。
名前なのだ。フルネームが『一風部長』なのである。
前にいたπTVでは部長をやっていたが、つまりは正しくは『一風部長部長』だったのである。
しかし熱原以外の誰もが彼が社長であることを知らず、部長だと信じて疑っていなかった。
「ね〜、部長」
ヒンニューピンクこと鬱布瑛華が話しかけてきた。
「かわいい土偶の帽子見つけたんだけど、あれ買ってもいい? かぶってインスタに載せたらボクの人気上がりそうな気がするんだけど」
「買いなさい、買いなさい」
ソファーに座り、ゴルフクラブを磨きながら、ニコニコしながら一風部長は言った。
「いくら? 経費で落とすから領収書貰って来てね」
「部長さん」
ヒンニューグリーンこと千々梨マリアが後ろからハグをしてきた。
「この間のフルーツ生クリームプリン、とても美味しかったですわ。また買って来てくださる?」
「来る、来る」
後頭部をCカップの柔らかさに包まれながら、一風部長はホクホクした。
「もっとしてくれたらもっともっと買って来るよ」
みんなが自分を下の名前で呼んでくれるのが嬉しかった。
みんな知らずに呼んでいるだけだが、ホリエモンが女子社員から『貴文』と呼ばれているようなもので、なんだかみんなが自分の恋人みたいな、ふわふわソワソワした気持ちになれた。
一風部長社長の通勤手段は徒歩である。
女子社員から下の名前で呼ばれる幸せにいつも少しランニング気味であった。
独身なので一人暮らしのマンションに帰る。そして部屋に入ると、正体を現す。
彼の正体は、怪人であった。
「フフフフ……」
スーツを脱ぎ捨てると、ニコニコ笑顔だったその表情が、エロエロに変わっていく。
「お〜っぱぁ〜いっ!」
彼の部屋には、壁を覆い尽くすほどの、大小さまざまなサイズのおっπが貼りつけられてあった。
それは生きた女性から剥ぎ取ったものに見えるが、すべてシリコン製の作り物だ。
彼の正体は『怪人おっπ大好き男』だったのだ!
普段からそれを隠してはいないが、人前ではまだ一応人間のふりをしていた。
一人の部屋にいる時のこの姿を見られてしまったら、誰もが彼を人間としては見てくれないだろう。それほどまでにその姿は化け物じみていた。
戦隊ヒーローものが大好きな良い子達には決して見せられないのでそれから一風部長が一人の部屋で何をしたかは描写できない。
ただ、彼のために一言弁護しておこう。
彼は悪い怪人ではない。




