キョニューピンクもヒンニューピンクがだいきらい
キョニューピンクこと出階堂小心は16歳。高校一年生である。
身長は142cm。巨乳戦隊で2番目に小さいレッドが159cm、一番大柄なイエローが175cmなので、みんなと並ぶと特別小さく見える。
彼女はこの間ショッピングモールで出会ったライバル戦隊のヒンニューピンクこと鬱布瑛華から言われた一言が気になっていた。
『アンタ……、なんかデッサン狂った埴輪みたい』
はっきり言って意味がわからなかった。
ネットで検索してみたのだが、出てくるどの埴輪を見ても、自分と似ているとはとても思えないのだ。
あまりにわからないので仲間に聞いてみた。
「ねえ、あたしって埴輪に似てる?」
「は?」
唐突な質問をされ、キョニューイエローこと堀スタインは間抜けな声を出してしまった。
「ハニワ?」
「この間ね、失礼なやつにそう言われたの。似てるって……」
「ハニワってあの、とぼけた顔した、縦に長いやつだよな?」
器具を使っての筋トレを続けながら、イエローは言った。
「全然似てねーよ? どっちかってーとおまえ、胸のデカすぎる土偶じゃね?」
ネットで遮光器土偶の画像に辿り着いた小心は声を上げた。
「これか!!?」
ずんぐりむっくりした体型に短い手足、大きな目、上方向に結い上げた髪、でっかいお尻……。胸は小さいが、確かにこれをデフォルメしてIカップにすれば自分に似ている気が──
「しない! しない!」
ピンクのパイナップルヘアーを振り乱してぶんぶんと否定した。
「あの小学生級チッパイめ……。土偶と埴輪を言い間違えやがったな? こんなもんにあたし似てないわよ! 今度会ったらギッタギタにしてやる」
「あっ」
「あっ」
学校帰りにばったり会った。
「こんにちは」
「……こんにちは」
歯ぎしりをしながら、コイツも何かに似てると言ってやろうと思った。たとえるとしたら、なんだろうか。土偶ではないし……
これしか出てこなかった。
皮肉のつもりで言ってやった。
「アンタ、よく見たらちび○さに似てるじゃん」
「あ……、ありがとう」
しまった、なんか褒めてしまった。そう思い、悔しさに唇を噛みしめていると、鬱布瑛華が恐縮した様子で言い出した。
「この間は……ごめんね」
褒められて照れたのか、頬を赤くしている。
「埴輪だなんて言っちゃって……。あれ、土偶の間違いだった」
やっぱりかよ……。
あたし、あんなにずんぐりむっくりなんか……
そう口に出そうとした時、瑛華がうつむきながら、また言った。
「山形土偶ってのが……あってね、それに似てるんだよ」
「山形土偶?」
初めて聞いた言葉だった。
「何それ。どんなの?」
「かわいいの」
瑛華はまだ照れているのか、うつむいたまま、言った。
「あっ。ボクは、かわいいと思うの。よかったらまた調べてみて?」
小心の顔が、ぱあっと明るくなる。
どんなのだろう? 早く調べたかったが、歩きスマホはしないと決めていた。
「ありがとう、瑛華ちゃん! 後で調べてみるね」
「うん! 同じピンク同士、仲良くしようね、小心ちゃん!」
自分のほうが二学年も年上だからそこは『出階堂さん』だろ、とは思ったが、褒められたらしいことに気をよくして、にこやかに手を振って別れた。
家に帰ってすぐに『山形土偶』を調べると、なんかおっぱいのやたら尖った、子供が作ったバケモノ人形みたいなのの画像がいっぱい出てきた。
まだ遮光器土偶のほうが見慣れているぶん、ましに思えた。
「やっぱりアイツ、だいきらい!」




