表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/105

田良子坂プロデューサーの謎

 熱原元プロデューサーが立ち上げた番組『巨乳戦隊キョニュレンジャー』を引き継いだπTVプロデューサー、田良子坂たらこざかは謎に満ちていた。


 まず、その名字は局の者なら誰でも知っているが、下の名前は誰一人として知る者がない。

 もしかししたら『田良子』が名字で『坂』が名前なのかもしれなかった。


「なあ、青野あおのはらよ」

 廊下ですれ違ったキョニューブルーを呼び止め、田良子坂が言う。

「おまえ、プロデューサーとすれ違っといて挨拶もなしって、何考えとん? 天然ボケならなんでも許されるとか思っとんじゃねーべ」


 その口からはたまに方言のようなものが飛び出すが、それが果たして何弁なのか、誰も知らない。


 その私生活も謎に包まれていた。

 

 彼の通勤風景は誰も見たことがなかった。いつの間にか局にいて、いつの間にか退勤している。

 ワープが出来るのか、あるいはタイムトラベラーなのではないかと噂されていた。


 彼の個人電話番号は0120から始まる。フリーダイヤルである。


 どこに住んでいるのか誰も知らないが、ペットに虎を飼っているという噂があった。

 彼のスマートフォンの待ち受け画面が、虎と添い寝している田良子坂の姿だったのを、誰かが見たのだ。

 ちなみに今では可愛らしい宇宙人の子供を写したものに変わっているらしい。


 性別も謎だった。表向きは男性を自称しており、その見た目も声も、確かに男性のものではある。

 しかしいつも真っ黒なサングラスをかけており、その奥にある目がやたら色っぽかったという、目撃者の証言がある。

 そしてよく見ればその顔立ちは中性的。ヒゲのあまりの薄さも疑惑を導くものであった。

 徹夜で番組編集をした時も、その朝に他の男性局員は皆ヒゲが伸びていたのに、田良子坂だけはツルッツルだったとの証言がある。

 ちなみに女性だとするなら、恐らく、いや間違いなく、貧乳である。


 田良子坂は料理が得意だ。特技であるとさえいえる。

 自らのツイッターに手料理の写真をよく載せており、それはまるでペンションあたりで出されそうな、じつに美味しそうなものである。

 しかし、彼が食事をしているところを誰も見たことがない。

 彼の作る料理も、実際に見たことがある者は誰もいなかった。


「田良子坂さ〜ん、今度、ご自慢の料理を私達にもふるまってくださいな」


 メンバー最年長のグリーンがみんなの声を代表して、そう言ったことがある。

 その時、田良子坂は、こう答えたそうだ。


「俺はじつは人間ではなく、水産加工品なんだ。つまり、食べられるほうなんだ」


 その背中には哀愁が漂っていたが、その言葉の意味がわかった者は誰もいなかったという。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
俺はじつは人間ではなく、水産加工品なんだ > つまり、た~らこ~、た~らこ~、たっぷりた~らこ~、た~らこたっぷりたっぷりた~らこ~?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ