貧乳戦隊の憂鬱
HTVプロデューサーの熱原は打ちひしがれていた。
彼の手掛けた新番組『貧乳戦隊おっぱいナインジャー』の視聴率が奮わないのだ。
「160ptか……」
ライバル局であるπTVが制作している対抗番組『巨乳戦隊キョニュレンジャー』の数字を見る。
「354ptだと……!?」
頭を抱え、呟く。
「我々の番組は半分にも届かないというのか……!」
「やっぱり男の人は巨乳が好きなんですね……」
制作室の片隅で回転椅子に座り、くるくるもせずにポッキーを黙々と齧っていた千々梨優美が、ぽつりと言った。
「口では『大きさじゃない』とか言っといて……。うそつき」
「まぁ……、それは社交辞令というやつだ。優しさなんだ。わかってやれ」
熱原が彼女を励ます。
「タイトルに『巨乳』と入っていれば、その番組にポイントはつく。『おっぱい』でもいい。おっぱい=巨乳だと勘違いするやつが多いからな。しかし、『貧乳』はやはりダメなのだ」
「しかし……」
黙って何か書き物をしていた一風部長が顔を上げ、喋り出した。
「今さらタイトルを変更するわけにも行かん。こっそりメンバーの豊胸をするというのはどうだ?」
熱原は首を横に振る。
「テーマを変えるわけには行きません。我々は貧乳の素晴らしさを世に知らしめるためにやっているんだ」
「「局長!」」
声を揃えて貧乳戦隊のメンバー2人が部屋に入って来た。
「「貧乳の素晴らしさって……一体何ですか!? 教えてください! 私達は自分で自分の貧乳の素晴らしさを知らないんです!」」
「ブルーにグリーンか……」
熱原は彼女ら2人に目をやると、投げ槍に言った。
「清貧……みたいなものかな」
そこへヒンニュー・イエローが勇ましく入って来るなり、檄を入れた。
「違うでしょう!? 熱原さんと一風部長が設立したこのテレビ局、HTVとは何の略だか忘れたんですか!?」
ヒンニュー・レッドこと千々梨優美が、暗い目をしてポッキーを噛りながら、言った。
「HTV……かな」
「HTVでしょーがっ!」
イエローがレッドを叱咤する。
「命名した優美が忘れててどうすんのよ!」
「そうね……」
レッドの瞳に光が戻りはじめた。
「貧乳の武器は"はじらい"……。そうだったわ。思い出させてくれてありがとう、イエロー。いいえ、平野ぺた!」
「ぺたちゃん!」
ブルーとグリーンが時間差をつけて平野の名前を呼んだ。
「ぺたちゃん!」
そう呼ばれるとイエローはいつもがっくりと床に手をついて項垂れるのだった。
「その名前で……呼ばないで……。イエローって呼んで……。あたし……自分の本名……嫌いなの。何よ……『ぺた』って……」
冷原哲史さま、一布さま
……
どうもすみませんm(_ _)m