怪人ストー・カー vs ヒンニューブルー
「ユレンちゃん」
怪人ストー・カーこと影山緋色が口から白い煙を吐く。
「僕のこと、倒せないよね?」
ヒンニューブルーこと微風ユレンは助けを求めるように仲間達を振り返った。
「あうっ……!」
「ううっ……!」
4人の貧乳戦士達が動けずにもがいている。
「ウキー! キッキーーッ!」
怪人ざんぎょう法師が連れていた猿、人身悟空が4人を不思議な力で金縛りにかけていた!
「あの猿は、元々僕のものなんだ。ざんぎょう法師さんに貸してただけさ」
怪人ストー・カーがゆっくりとブルーに迫りながら、言う。
「僕を邪魔するやつを金縛りにかける能力がある。……二人きりになれたね、ユレンちゃん」
「近寄らないで!」
「……声が小さすぎて聞こえないよ」
「今まで聞き取ってたくせに……!」
「僕が聞きたくない言葉は聞こえないんだ」
ストー・カーはユレンにキスできるほどまでに近づくと、優しく笑った。
「さあ、言ってくれ。僕を愛していると」
「ユレンっ!」
仲間達が後ろから声援を送る。
「私達……動けないっ!」
「倒して! その怪人を倒して!」
「キキキィーーーッ!」
猿がザマァ見ろというようにシンバルを打ち鳴らす。
「君に僕は倒せない」
怪人の唇が、ユレンの唇に迫る。
「僕らは恋人同士だからね」
ユレンの脳裏に、緋色との思い出が走馬灯のように流れた。
転校初日、彼の周りに煌めいて見えたあのオーラは、思えば怪人を判別するために彼女に備わった能力だった。
彼が自分の小さすぎる声を聞き取れるのは、怪人の能力だと思えば合点がいった。
彼と付き合った月日は、たった4日。情が移るほどのものではなかった。
そして今、目の前の緋色は、キモいその正体を現していた。
「ブルー! ドラゴン・スクリューっ!!!」
ブルーの身体を水龍が包み、その牙が回転しながら怪人へと突進する!
「すとぉぉぉかぁぁあーーッ!」
怪人ストー・カーは、バイバイキンみたいに叫びながら、空の彼方へ飛んで行き、キラリと星のように瞬きながら、爆発した。
「ウッ……キャッ……キャーッ!」
猿は慌てて逃げ出した。
「お猿さん……。あなたに暴力はふるわないわ」
ヒンニューブルーこと微風ユレンは動物好きだった。
「ユレン!」
「ユレンっ! やったね!」
動けるようになった仲間達が笑顔で駆けつける。
「男なんて信じちゃダメだよ」
「優しい嘘で固めて、その実下心満載なんだから」
ブルーは笑顔でうなずきながら、仲間達に何か答えたが、誰にも聞こえていなかった。
緋色が飛んで行った空の彼方を見つめると、少しだけ、目の端に涙を浮かべる。そして、思った。
『緋色くん……。ありがとう。思い出だけは奇麗にとっておくよ』




