怪人去ってまた怪人
猿だけが気づいていた。
動物の超感覚で、ブルーの声が聞こえていた。
猿が気づいたので、ざんぎょう法師も気づいた。
ざんぎょう法師は心の中で呟いていた。
『あっ……、ヤベっ。ブルーが加わったらコイツら全体攻撃使ってくんぞ。猿、気づくな、気づいてないフリしろ』
「キッ……! ウキーーーッ!」
猿はしかしブルーを威嚇した。
「あっ?」
貧乳戦士達もそれで気づいた。
「ブルーよ!」
「ブルーが来たわ!」
「これで合体攻撃が使える!」
「猿ーーーーッ!」
ざんぎょう法師は怒鳴り声を上げた。
しかし、遅かった。
「「「「「合体! おっぱいナインジャ〜〜〜!!!」」」」」
貧乳戦士達が声を合わせ、同情を誘うように泣き叫ぶ。
「「「「「残業なんぞ、しナインジャ〜〜〜!!!」」」」」
「どぺぽ!」
ざんぎょう法師がその労働組合のごとき結束の力に吹き飛ばされる。
「ろうどうきじゅんほーーーっ!」
バイバイキンを言うように、空の彼方へ飛んで行った。
「無事、タイムカードを押せたわね」
レッドが額の汗を拭く。
「ユレン、間に合ってくれてよかった」
「ユレンちゃん!」
突然、背後からしたその声に、ユレンが振り返る。
どうやって追いついて来たのか、緋色がそこにいて、責めるような目で自分を見ていた。
「緋色……くん」
「ユレンちゃん……」
緋色は怖い顔をして、言った。
「君は……僕の、カノジョだよね?」
「えっ?」
「ええっ!?」
貧乳戦隊の仲間達が驚きの声を上げる。
「恋愛禁止だよっ!? ユレン」
「今の……熱原さんにも聞こえちゃってたら……」
『ユレンっ!』
空から熱原プロデューサーの声がマイクで響いた。
『その男が言ったことは本当か!?』
「み……認めます」
ユレンは言ったが、熱原の耳には届かなかった。
「ユレンちゃん……。ユレンちゃんは僕よりも仲間のほうが大事なんだね?」
緋色の顔がだんだんと恐ろしくなる。
「僕は……こんなにも! ユレンちゃんのことだけが好きなのにっ……!」
「緋色……くん?」
「僕のこと……、彼氏だと認めるんだったらっ……! 僕だけを愛せよ!!!」
『おいっ! ブルー! そいつから離れろっ!』
熱原の声が叫んだ。
『怪人反応だっ! その男、怪人だぞっ!!』
「ええっ……!?」
驚くヒンニューブルーこと微風ユレンの前で、どんどん緋色の姿が悪魔のように変わっていく!
バキバキと音を立て、二本の木の枝のような角が頭から生え、爪がフェレットのように鋭く、長くなっていく。
「緋色くん!?」
熱原が怪人の名を口にする。
『こいつは……! 怪人、ストー・カーだ!!』
「ストー・カアァァァ〜……」
変身し終わった緋色は紫色の口から白い煙を吐いた。
「そ……、そんなっ!」
ユレンは何も出来ず、たじろいでいる。




