熱原哲司のラッキースケベ
HTVプロデューサー熱原哲司は悩んでいた。
この前の戦い、ライバルの巨乳戦隊を差し置いて、怪人にとどめを刺したのは自分のところのヒンニューレッドだったというのに、それでもいまだに人気は巨乳戦隊のほうが倍以上も上なのだ。
『女のチッパイは男のチビに相当するという……』
ミキシングコンソールに肘をついて熱原は考えた。
『チビな男のほうが好きだという女子もいるとは聞く。実際、この小説の作者も自らのチビ専を疑っているとは聞く……。だが、しかしっ……!』
髪をかきむしった。
『しょせんはマニアックなのではないか!? やはり巨乳好きな男が大半であり、チッパイ好きはニッチ層と言えるのではないか!?』
そして己の胸に手を当てた。
『私は……どうだ? 貧乳戦隊の創始者である、この私自身は? ほんとうに貧乳は素晴らしいと思っているのか? どうだ? どうなんだ、熱原哲司!? 嘘偽りのない、ほんとうの気持ちを答えろ!』
そこへ歩いてきたヒンニューレッドこと千々梨優美が椅子の足に躓いた。
「わああっ!?」
叫びながら、倒れてくる千々梨に気づき、熱原が振り返る。
「危ないっ!」
がしっ!
熱原は千々梨を受け止めた。
受け止めた拍子に、千々梨の胸に顔を埋めていた。
「きゃあっ! スケベ!」
ばっちぃ〜ん!
千々梨の平手打ちが熱原の頬に炸裂する。
千々梨優美はぷんぷんしながら部屋を出て行った。
しかし熱原は嬉しそうに笑っていた。
『なっ……、なんて柔らかいんだ……!』
鼻血を流しながら、彼は思っていた。
『Aカップって、柔らかいんだなぁ……。まるでマシュマロじゃないか』
ふいに熱原を後ろから抱きしめる腕があった。見上げると、ヒンニューグリーンこと千々梨マリアの慈悲深い微笑みがそこにあった。
「局長さん、ごめんなさい。ウチの妹が平手打ちなんかしてしまって……」
「い……、いや、いいんだ。マリアくん」
そう言いながら、熱原は己の後頭部を包み込む生クリームのような柔らかさを感じていた。
『し……、Cカップでもこんなに包み込めるんだ……?』
流れ出す鼻血が止まらなくなった。
耳元でとても小さな声が聞こえる。
「私も……ナデナデしてあげます」
見るとヒンニューブルーこと微風ユレンが心配そうに顔を覗き込んでいる。
彼女の手が頭を撫でてくれた。その拍子に、Bカップの胸が、熱原の腕に押しつけられる。
「ぶーーーっ!!!」
熱原が勢いよく鼻血を噴き出した。
「「きゃあっ!?」」
驚いてグリーンとブルーが慌てて逃げ出した。
『なっ……、なんて優しくて、心を癒してくれる柔らかさなんだ……っ!』
熱原は止まらない鼻血をティッシュを詰め込んで押さえながら、思った。
『イケるっ……イケるっ! 俺は貧乳の素晴らしさを世に広めたいぞっ! 俺は貧乳戦隊を推せるっ! 心から、貧乳が、好きだ!』
その後、なかなか鼻血の噴水は止まらず、熱原は病院へ搬送された。




