最終回:そして伝説へ
「やった! やった!」
元ピンク同士が抱き合い、飛び跳ねて喜ぶ。
「10人揃ったらあの巨大な敵をやっつけれちゃったよ!」
しかし出階堂小心の目には、喜びながらも涙が浮かんでいた。
『たらこP……ありがとう。大切なことを教えてもらったよ』
「友情の勝利ね」
牛野陽奈がそう言い、隣で膝をついている牛野千房に語りかけた。
「千房……。あなたのボスは死んだわ。これからはあんたもあたしたちの仲間になりなさい」
「あほくさ」
項垂れていた千房が顔をあげ、言った。
「仲間なんてあほくさ。友情なんてあほくさ。言っとくけどあたしが真のラスボスよ。社会悪ギゼン真のラスボス、ドクター・チヴ様なんだから」
「もう、いいから。そういうの」
「何よ! 王道パターンでしょうが! ラスボスが死んだと思ったら真のラスボス登場!」
「はいはい」
「信じてないわね!? この懐に入ったカプセルから無限に改造人間を出すことができるんだから!」
「……じゃ、つまり、あくまでも社会悪であるあんたは、あいつらのお仲間ってわけ?」
「あいつら?」
「おーい!」
「おまえら、よくやった!」
駆けつけた二人のおじさんが嬉しそうに声をあげる。熱原局長と、一風部長だ。
一風部長は優美と玲子に駆け寄ると、鼻の下を伸ばしながら、二人の肩を抱いた。
「しかし土壇場でよく気づいたな! そう、おっぱいに貴賤はないんだ! デカパイも、チッパイも、どちらも男性にはない尊きものなんだ! よくぞそのことに気づいた!」
貧乳戦隊の人気のなさに、戦士たちの豊胸を提案したこともある一風部長の白々しいことばに、一同が白目を剥いた。
「おまえらだ……」
わなわなと震えながら、牛野千房が二人を指さす。
「おまえらが……あたしを奈落の底に落としやがったんだ! よくもたった1サイズの胸の違いでこのあたしを……バカにしやがって!」
「ん?」
「ん?」
熱原局長と一風部長が揃って千房を見る。
そして、ニヤけた。
「ギゼンの幹部、ドクター・チヴくんだね? 君を新たな美乳戦士、『ビニュウ・バイオレット』として迎えよう!」
「何しろインド美女たちが漉王老師を葬った後、故郷へ帰ってしまってね。新番組に困っていたところなんだ」
「田良子坂くんの不祥事でπTVはもうダメだろう。僕たちが君ら11人を引き受けよう」
「新番組『美乳戦隊ビニュレンジャー』を放送してあげるよ。我々のHTVへみんなで来なさい」
「真の社会悪……それは……」
玲子が言った。
ことばの後を優美が引き継ぐ。
「私たちをいいように価値づけし、操ろうとする……大人のオトコ!」
「なっ……、なんだ? おまえら……」
「なっ、何をする……? うっ、うわーっ!」
ぼいーんっ!
玲子のGカップの胸が一風部長を空の果てまで吹っ飛ばした。
「貧乳聖撃波!」
優美のはじらいポーズからの聖撃波が熱原局長を山のむこうまで吹っ飛ばした。
「とどめじゃーっ!」
牛野千房が懐から取り出したカプセルの中から白いオタマジャクシのような怪人がたくさん飛び出し、飛んでいく二人を追いかけていった。
その頃、漉王老師と篠宮マサシは原始の地球を彷徨っていた。
ティラノサウルスを倒して焚き火で焼きながら、漉王老師が言う。
「帰りたいのう……現代に」
「一刻も早く帰って優美ちゃんをまたAカップにしてあげないと!」
篠宮マサシのことばに老師がツッコむ。
「いい迷惑じゃと思うぞい」
「キハ仮面くんも相手役の僕がいなくなってきっと寂しがってる!」
「うぬぼれんな」
「しかし、あなたの妻の能力は凶悪なものですね。我々を物語の外に追い出すのみならず、原始時代まで飛ばしてしまうなんて……」
「あいつらチートじゃからな」
「どうすれば元の時代へ戻れるのでしょう?」
「なぁに、簡単なことじゃ。ナーナミの機嫌が戻ればすぐに連れ戻してくれる」
「どうすれば奥さんの機嫌が戻ります?」
「ほっとけばええ。何しろナーナミはわしのことを愛しとるからの。三日も経てば寂しくなって、わしを呼び戻すことじゃろう。ウフフ……」
しかし三日経っても四日経っても、一年が経っても呼び戻してもらえる気配はなかった。
篠宮マサシが遂にツッコんだ。
「うぬぼれんなジジイ」




