子を鍛える親
「誰……って」
「あなたは私たちの上司で……」
「巨乳戦隊キョニュレンジャーの番組を熱原さんから引き継いだ……」
「田良子坂プロデューサー……ですよね?」
超・たらこパンチを受けて息も絶えだえになりながら、四人の巨乳戦士たちが答える。
「それだけか」
ビルゲ将軍はとどめを刺すでもなく、腕組みをして聞いた。
「おまえたちの知っている私は……それだけなのか」
「おかしい……あのラスボス」
地に倒れ伏して起き上がることのできない巨大ロボの中で、優美が言った。
「おかしいよ。あれだけ強ければ、とっくに私たち、とどめを刺されててもおかしくないのに……」
「容赦している?」
マリアが妹の言葉に答える。
「弄ばれているのかしら、わたしたち?」
「違う……。何か、何かがおかしいんだ。まるで、あれは、子を鍛える親のような……」
「わたしたちの父親はパチンコばっかりしてたからわからないわ、そのたとえ」
「確かに」
「……でも、優美ちゃんの言うことはわかる。だって、あのラスボス……、強いけど、厳しいけど、でもそれ以上に……」
「そうだよ、お姉ちゃん」
「「優しいっ!」」
「いいか。聞け、おまえら」
ビルゲ将軍は巨乳戦士たちにむかって、言った。
「私は社会悪の頂点、ビルゲ将軍である」
そして、問うた。
「おまえらは誰だ?」
「わっ……、わたくしたちは……」
玲子が答える。
「社会悪を倒すため集められた……正義のスーパー戦隊……」
「それで……」
ビルゲ将軍はさらに問う。
「巨乳と貧乳、一体どちらが正義なのだ?」
「それは……決まってるよっ」
優美が、篠宮マサシが消えてCカップに戻ったとはいえまだまだ小さなその胸をおさえ、呟く。
「巨乳こそ正義……! 無念だけど、わたしたちは巨乳に劣る……」
「そんなことはないわっ! 優美さん!」
玲子が約100メートル離れた優美の声を聞き取り、叫んだ。
「あなたたちチッパイさんたちには邪魔なものがない……! 闘うためにおいては、小さいほうが正義なのよ!」
「いえいえ。巨乳のほうが……」
「あなたたちは自分の貧乳を誇るべき!」
「どうでもいい!」
突然、ビルゲ将軍がイライラしたように叫んだ。
「巨乳だの貧乳だの、バカバカしい! おまえらは同じ美しき胸をもつ戦士たちではないのか?」
「うっ……」
「美しい?」
「この腫瘍のような胸が?」
「この地平線みたいに平べったい胸が?」
「そうだ」
ビルゲ将軍が真面目にうなずく。
「おまえたちは巨乳だの貧乳だの、そんなバカバカしいことで争いあってきた。そんなおまえらを見ていて、プロデューサーの私はどう思っていたと思う?」
「どうって……」
「あなたが作っていた番組でしょ? キョニュレンジャーは」
「対向番組のおっぱいナインジャーのことは疎ましく思ってたんじゃないの?」
「はっきり言おう」
ビルゲ将軍はそう言って、真面目に言い放った。
「『おまえらバッカじゃねーのか?』そう思っていた!」
「ハァ、ハァ……」
その頃、牛野陽奈は駆けていた。
「やっと見えてきたわ! あっ? あの巨大な化け物は何!?」
たらこみたいにピンク色の大魔神のようなラスボスを見て、陽奈は一大事を悟った。
それを離れた場所から地面に座り込んで観戦している女の後ろ姿も見えてきた。自分と同じ後ろ姿だった。自分と同じセクシーな白衣姿だ。
「千房!?」
その名前を叫ぶと、白衣の女が振り返った。
陽奈と同じ顔に赤いべっ甲フレームの眼鏡をかけた、しかし陽奈よりもおっぱいのワンサイズ小さい女が、こちらを見てニヤリと笑う。
「陽奈……、久しぶりね」




