ラストレター
昔、個人サイト(蒼い夜 白い月・現在閉鎖)にて公開していた作品の、登場人物の名前の変更とラストの手直しをしたものです。
もしかしたら目にした方もいらっしゃるかもしれませんので、前書きでお知らせさせていただいております。
「安藤俊介少尉」
「坂井中尉」
「何を見てたんだ?」
「・・・桜を」
そういうと、俊介は柔らかく微笑む。
「俺の故郷にもおんなじ様な桜がね、あるんですよ。此処より咲くのは後でしょうけど」
「それだけじゃ、ないだろう?」
俊介の言葉に坂井が意地悪く、からかうように笑う。
「約束したんです。その桜の木の下で。戻ったら一緒になろうと」
「・・・その、お前の胸ポケットに何時も入れてる写真の女性か?」
思ってもみなかった坂井の言葉に、俊介はその黒目がちの瞳を丸くして坂井を見つめる。
「な、何で知ってるんですか!!」
「はは。マメに手紙がお前の所に届くだろう? 女文字で。そのたびにお前は嬉しそうだしな。それに」
「それに?」
「寝る前に、何時も手帳の中の写真を見てると斎藤がいっていたからな」
楽しそうに笑いながら言う坂井の言葉に、俊介はバツがわるそうに頭を掻く。
「・・・許嫁か?」
「正式に交わしたわけではありませんが」
「なるほど。よし! 明日は休日だ。酒のつまみに話せ」
照れたように笑う俊介の肩に手を乗せ、坂井は機嫌よく笑う。
此処、鹿児島鹿屋基地に配属されて1ヶ月になろうとしている。
海兵学校時代からその飛行能力を買われ、海軍飛行予科練習生の指導という事で、この鹿屋基地に配属された。
坂井とは海兵学校の頃からの顔なじみの先輩後輩の間柄で、偶然、この鹿屋基地で再会した。
「お前、面食いなんだな。名前はなんと言う?」
「めぐみ・・・武井めぐみ、です」
坂井は酒を口に運びながら、俊介から渡された写真を眺める。
俊介が見せる事を渋っていたのを「上官命令」と言い、無理やり出させた。
「ふーん。で、この許嫁殿は何をしてるんだ?」
「今、故郷の隣町で教師をやってます」
俊介は、憧れだった海軍に入隊した。
そして、めぐみは夢だった教師となった。
「なるほど。しかし、お前。海兵学校時代、一言もそんな事言わなかったぞ?」
「・・・遠回りしすぎたんです」
そういうと俊介は柔らかく、幸せそうに微笑む。
小さい頃から一緒にいた幼馴染だった。思春期特有の気恥ずかしさから、だんだん疎遠なってしまい、ずっと思いを寄せたまま中学卒業と同時に希望していた海軍兵学校へ入学が決まってしまった。
休暇で故郷に戻る度、変わらない笑顔で迎えてくれるのを支えに、思いを伝えたのはつい1年前の事。
お互い思いあっていた事を知った。
そして。
この鹿屋基地へ来る前、2人でよく遊んだ桜の木の下で約束した。
『次の桜が咲くとき、一緒になろう』と。
酒の力もあってか、坂井の問いかけに俊介も素直に答える。
その表情は幸せそうで。
まるで弟のように俊介を可愛がる坂井の表情も、自然と柔らかくなる。
「次の長期休暇の時、お前の故郷についていくぞ。その許嫁殿に会って挨拶をしないとな。『愚弟を宜しく』と」
そういって笑う坂井に俊介も笑う。
「安藤、手紙だ」
「有難う御座います」
そういって受け取った手紙は、いつもの見慣れた文字が並ぶ。
文面はいつもと変わらない、近況報告と自分を気遣う内容。
それだけで、俊介は強くなれる気がした。
戦果は芳しくない。
この鹿屋基地に来て2ヶ月。
日々、同じ鹿児島の知覧からは特攻隊として陸軍の飛行機が飛んでいると聞く。
この鹿屋基地からも何機も飛び立っている。
敗戦の色が濃いのは、誰が見ても明白だった。
だけど、口に出してはいけない禁忌の事実。
ひらり。
手紙の中から、2枚のしおりが落ちた。
俊介は床に落ちた2枚を拾う。
『勤める学校の裏庭にもあの桜に良く似た木があります。こちらも桜が咲きましたので押し花にしました。
お守り代わりに持っていてください』
手紙の最後を読んで、雅紀は胸ポケットから手帳を取り出すと、2枚を写真とともにはさむ。
鹿屋基地に来る数日前に、2人で撮った写真は、端が少し痛んでいたがそこに写った思いは変わらなかった。
数日後、俊介は司令部より命を受ける。
『神風特攻隊 大和隊司令官として出撃せよ』
「…安藤」
坂井は表情を殺して、俊介に声かける。
「坂井中尉」
部屋は小奇麗に整頓され、机の上には家族に宛てた手紙等が置かれていた。
「あとは、宜しくお願いします」
「……頭など、下げるなっ!」
苦しげに、坂井の顔がゆがむ。
「…何故お前でなくてはならない?!」
その言葉に俊介はゆっくり微笑む。
状況は日々、悪化していた。このままでは本土決戦も間近だろう。
何とかこの状況を打開する為に、海軍でも優秀な飛行技術をもつ俊介に白羽の矢が立った。
参謀部としても、優秀な人材の損失よりも実をとったのだった。
「・・・俺は。国も大事ですけど、愛するものの笑顔を守る為に逝くんですよ」
何よりも、願って止まないもの。
それを守る為ならば。
「…そうか。許嫁殿に伝える事はあるか?」
「…約束を守れなくてすまなかった、と」
「手紙は?」
「ありません。書きましたが…それは俺がもって逝きます」
「……そうか」
「鹿屋基地所属、帝国海軍少尉 安藤俊介 神風特攻隊大和隊 司令官として、いってまいります」
真っ直ぐな瞳で、坂井を見つめ俊介は敬礼を取る。
「健闘を祈る」
夕闇の中、頼りないエンジン音が響く。
年若い少年飛行兵たちは羨望のまなざしで、俊介たちを見つめる。
爆装隊員25名を連れ、ゼロ戦機が飛び立つ。
伝えたい事はたくさんある。
きみに触れる事はもう出来ないけど。
どんなに離れても。どんなに遠くても。
心はきみのそばにいるよ。
何時でも、どんな時でも。
きみだけを愛してる。
きみの笑顔を守る為に。
国よりも何よりも。愛する人を守る為に。
・・・・・・・どうか俺の「死」が
大切な人に優しく届きますように。
1945年5月。
安藤俊介海軍少尉 散華
校長室の隣の応接室の扉を静かに開けると、海軍の制服を着た青年が一人いた。
「武井めぐみさんですね」
青年は確認するようにめぐみの姿を見つめる。
「はい」
「鹿屋基地所属、帝国海軍中尉坂井健といいます」
「…武井めぐみです」
「今日は貴方に、安藤の…いえ、安藤俊介海軍少尉の最後を伝えに参りました」
「…最後…?」
「はい。出撃命令を受け、5月20日特攻隊員として飛び立ちました。夕闇の中…。貴方へ残した言葉は『約束を守れなくてすまなかった』と…」
「…そう…ですか…」
その言葉にめぐみの瞳から涙が溢れ、頬を静かに濡らす。
「…アイツは、何時も貴方の事を話してくれました。自分にはやっと思いを遂げた相手がいるんだと」
そういうと、坂井は自分の横に置いてあった風呂敷の包みの結び目を解く。
「これは、安藤の残していったものです。安藤の御両親には許可を頂きました。是非、貴方にと」
広げられた風呂敷の上には『安藤俊介 様』と宛名の記された何通かの手紙と、桜の花弁の押し花が施された
しおりが一枚。そして、使いかけの便箋。
「貴方からの手紙が届くたび、アイツ嬉しそうにしていました」
めぐみは震える手でそれらに触れていく。
「…何時も持っていた貴方の写真と、このしおりの片割れは見当たりませんでした。たぶん、アイツが持って逝ったんだろうと思います」
「…そうですか」
涙を堪えるように俯き呟くめぐみを見て、坂井は瞳を伏せる。
「…わざわざ、有難う御座いました」
門まで見送りに出た絵美は、深く坂井に頭を下げる。
「いえ、貴方にどうしても会って伝えたかったんで、気にしないで頂きたい」
そういうと坂井はめぐみに顔をあげるように言う。
「…貴方の事を話す安藤は本当にうれしそうで、幸せそうでした。何時か安藤は『国を守る為でもあるが、貴方と、貴方が大切に思う生徒の笑顔の為に自分はここに居るんだ』と、言っていました」
坂井の言葉にめぐみが瞳を閉じる。
「だから、アイツの為に笑ってやってください。貴方の事を、アイツに伝えてやらなくちゃならない」
その言葉にめぐみが息を呑む。
「……坂井さんもですか……」
「ええ。この度、特攻としての命令が出ました。もう貴方とも会うことはありませんが、お元気で」
敬礼を取る坂井に、めぐみはゆっくりと笑う。何時か、俊介が坂井に「見ていると幸せになる」といった笑顔を。
「ありがとう。これでアイツに胸を張って会えます」
「坂井さんも…」
めぐみは言葉を続けられず唇をかむ。その様子を見て坂井は頷くと門を後にした。
深夜、そっと寝所を抜け出しためぐみは裏庭へ向かう。手には俊介の元から戻った一枚のしおりと使いかけの便箋。
向かった先は一本の桜。
送ったしおりの桜の花弁はこの木のものだった。
2人が育った場所にあった、桜を思い出す。
幼い頃、一緒に遊んだ場所。
俊介と将来を誓ったあの桜の木。
願いを込めて、ついこの間この木の花弁をしおりにして俊介の元に送ったのに。
めぐみは堪え切れず、声上げる。
もう、あの人は居ないんだ。
昼間の思いが一気に溢れる。
「……約束したじゃない…戻ってくるって。一緒に幸せになろうって……」
手にした便箋としおりを胸に抱えるように、まるで俊介自身を抱きしめるようにしてめぐみは泣きじゃくる。
ふわり。
一枚の花弁が泣きじゃくるめぐみの肩に落ちる。
一枚だけじゃなく、あとからあとから。
「えっ…」
涙に濡れためぐみの瞳が、自分の頭上を見上げる。
そこには、満開の桜・・・
「…どうして?」
さっきまでこの桜は葉桜だったはず。
今だ涙の止まらないめぐみの髪に、肩に、桜の花弁が落ちる。
まるで、めぐみを慰めるように。
「俊介・・・?」
めぐみは便箋に落ちる花弁を見つめる。
そこには書かれてない筈の、最後の手紙が月明かりに浮かび上がる。
俊介が持って逝ってしまった、最後の手紙。
『何時でも、どんな時でも、きみだけを愛している』
「めぐみ?」
背後から優しく名前を呼ばれ、めぐみは声のほうへと振り返る。
「……どうして?」
「もう、泣かないで?」
そういうと俊介はそっと絵美の目元を拭う。
「…しゅん、くん……」
「…懐かしいね、その呼び方」
優しく微笑みながら、俊介が言う。
体温なんて感じられないはずなのに、懐かしい暖かさに触れられめぐみは俊介に寄り添う。
その細い体を、俊介もゆっくりと抱きしめる。
「約束、守れなくてごめん。でもね、大丈夫だから。きっと、また逢えるから」
愛しそうにめぐみを抱きしめながら俊介が言う。
「…また、逢えるの?」
「うん、きっと。どんなに姿が変わったって、何度生まれかわったって、ちゃんと分かるよ」
「……うん」
「絶対ね、何度生まれ変わっても俺はめぐみを見つけられるよ。何度でも出会って、その度に幸せになろう?」
「うん。…私も絶対、見つけられるわ」
「ほんの少しの間だよ、だからもう泣かないで…」
どうやって戻ったのか。
次に目が覚めたとき、めぐみは自分の布団の中に居た。
「…夢…?」
少しずつ、昨夜の記憶をたどる。
夢でも良い、俊介に会えたのだから。
ふわり。
一枚の花弁がめぐみの髪から落ちる。
淡い、薄紅色の花弁。
「……夢、じゃなかった……」
めぐみの瞳から涙が落ちる。
大丈夫。約束したから。今は叶わなくても。何時か必ず。
けたたましいサイレンが、深夜小さな町の中に響く。
「早く!! みんな裏山の防空壕へ!!」
学年主任の教師が叫ぶ。
米軍の爆撃機が次々と焼夷弾をおとし、小さな町を焼いていく。
めぐみも生徒たちを連れて、慌てて防空壕へと駆け込む。
「…みんな、大丈夫?」
大きく息を吸うと、めぐみは子供たちを安心させるように優しく問いかける。子供たちは怯え、ただ頷くだけだった。
敗戦は明白だった。
こんな小さな町にまで、米軍の攻撃が容赦なく降りかかる。
『俊介はこの子達と私の為に戦ってくれたんだから。俊介のためにも私がこの子達を守らなくちゃ』
崩れてしまいそうな心に言い聞かせ、めぐみは顔を上げる。
「大丈夫よ?」
優しく微笑むと、怯える子供たちを包むように抱きしめる。
「武井先生!! 生徒が!!」
同僚の、女性教師の言葉にめぐみは何を意味するのかを察したのか、生徒の顔を確認するように見渡す。
「山下くん!!」
そこにいない生徒を確認して、めぐみは立ち上がる。
「私が探しに行きます!」
「でもっ!外は……」
「あの子だけ残すわけには行きません」
絶え間なく響く爆音と、飛行機のエンジン音が降り注ぐ。
「すみませんが、先生はこの子達の事をお願いします」
そういうと、防空壕から駆け出る。
「山下くーん!!」
まるで、地獄のようだった。
家々は破壊され、炎が燃え上がる。
炎で赤く照らされた夜空には、不気味に米軍の戦闘機が浮かんで見える。
幸い小さな町のためか、老人、女子供は各防空壕へ避難できたようで、残り少ない町の男たちが爆撃を避けながら消火作業に当たっている。
「ダメだー!! これ以上は消火は無理だ!!」
「川から向こうも手がつけられん!!」
「畜生!! アメリカめ!!」
口々に叫ぶ声がサイレンとともに響く。
「先生!! 何やってるんですか!! 早く壕へ非難を!!」
「あの!! 小学生の男の子を見かけませんでしたか?!」
めぐみの姿を見つけた中年の男が叫ぶ。
「小学生? このあたりにゃもう俺たち以外はいないはずだが……オイ!! 先生、そっちは!!」
男の言葉を聞いて、めぐみは駆け出す。
「山下くん?」
燃えさかる町の中、泣きじゃくる子供の声を聞いて、めぐみは足を止める。
「・・・せ、んせ・・・」
傍の祠の影から少年が顔を覗かせた。
「山下くん!」
めぐみは少年の顔を見て安心したように溜息をつくと少年の傍へ駆け寄る。
「先生、僕…」
「話はいいわ、さぁはやく逃げましょう。みんな壕で…」
優しく諭すように、座り込む少年のそばで膝をつくと、少年の足へと視線を向ける。
『…ひどいっ』
逃げる際に、民家から飛んできた木片が当たったのか、少年のふくらはぎの部分に大きく抉られた傷があった。
「大丈夫。壕へ戻ったら手当てをしてあげるわ」
安心させるように少年に微笑むと、めぐみはポケットから手拭を取り出すとまだ鮮血が止まらない少年の足へと巻く。
「さぁ、先生の背中に乗って」
まだ泣きじゃくる少年を背負うと、めぐみは来た道を駆け戻る。
「…大丈夫よ。みんな待ってるからね」
次の瞬間、傍にあった建物が大きく崩れた。
「先生!!」
一瞬気を失っていたのか、気がつくと、さっき自分と会話をした男が少年を抱え、自分を助けようと躍起になっている。
「先生、動けるか?」
その問いにめぐみは弱く首を振る。
さっき崩れた建物に、どうやら腰から下が、下敷きになっているらしい。
回りはますます火の手が強くなる。
「私の事は良いですから、早くこの子を皆の所へ」
「でも!」
「せんせー」
「…先生は大丈夫だから」
涙と煤でぼろぼろの顔をした少年の頬に、めぐみはそっと手を伸ばす。
「すみませんが、お願いします」
「…分かった……先生、すまねぇ」
状況を納得したのか、男は悲痛な顔で頷くと少年を連れてその場を離れる。
「いやだー、せんせいー!!」
翌朝、燃えるもの全て燃やし尽くしたのか。
火の手が弱くなったのを見計らって、住人が消火活動を始めた。
一角に人々が集まる。
そこには。
あれ程の劫火だったのにも拘らず、火傷ひとつないめぐみの姿があった。
1945年7月。
武井めぐみ 永眠。
この約1か月後、日本への人類史上初の原子爆弾投下が行なわれ、1939年から6年余りにわたって繰り広げられた人類史上最大の戦争が終わる。
月日は流れ・・・・・・
もうすぐ、見つける。
もうすぐ、出会うから・・・。
もうすぐ・・・・・。
もうすぐ・・・・・・・・。
ほら・・・。
「第2支店よりこちらの支店に配属されました、安藤俊介です!」
配属された部署のフロアの前で挨拶する声に、みんなが拍手と笑顔で迎える。
下げていた頭を勢いよく上げると、集まった社員やパートさんが温かく笑顔を向けている。良かった、みんなと上手くやっていけそうだ。
笑顔でぐるりとみんなの顔を見回した時、その中の一人の女性に目が留まる。
丁度隣の女性と話していた彼女は自分の視線に気がついたのか、こちらに向き目が合うとふんわりと笑った。
順調に仕事も進み、新しい環境にも慣れてきた。不慣れな時に何かとサポートしてくれたのは、あの時目の合った武井さんだった。おっとりとした印象だけど、仕事に関しては社内のみんなから信頼が厚い。さり気なく助言やサポートをしてくれる事で、思ってた以上に新しい環境に慣れることが出来た。
いつかお礼を、と思っていたのになかなかプライベートな事に関しては声を掛けることが出来なかったんだ。
それは、たぶん。自然に彼女に惹かれていたから。
ついさっき、彼女が別の階の部署に書類を持っていくと席を立ったあと、書類の挟まったクリアファイルが机に置いてあるのが目に入った。
「あ、これも持って行かなくちゃいけないものじゃない?」
彼女の先輩にあたる女性が気がつく。
「あ、俺持って行ってきますよ」
自然に言葉が出て、クリアファイルを受け取ると早足で武井さんを追う。
廊下に出て、角を曲がると彼女はエレベーターの前に居た。
「あの、武井さん!」
俺の声に彼女が振り返る。
「あれ、安藤さん? どうしたんですか?」
「これ、忘れていたよ」
「あ、ほんとだ。ありがとうございます」
彼女は受け取りながら、ある時と同じようにふんわりと花が咲くように笑う。
「あのっ、今度お礼もかねて食事にでも、行きませんかっ?」
つい出てしまった言葉に一瞬彼女の目が丸くなる。
「お礼って・・・書類を持ってきてくれたのは安藤さんなのに?」
「いや、うん、まあ。ずっと助けてもらっていたから、そのお礼」
苦し紛れのように伝えた言葉に彼女が笑う。
「ありがとう、誘って貰えて嬉しい。じゃあいつ行きますか?」
・・・・・・・・きっと、また逢えるから。
だって、運命だから。
今度こそ、2人で幸せになろう・・・・・・・・・。
お読みいただき、ありがとうございます。
15年ほど前に書いたものですが、とても思い入れのあるお話です。
感想などいただけると嬉しく思います。