ハッピーニューイヤー!
咲夜が一旦休みとなり年越しそばを作っている中ですごろくゲームは続いて行った。
一周目が終わり二周目のしきの出番が回ってきた。
「なになに、この中で一番かっこいいと思うのは誰?」
お題に出てきた文面をしきは読み上げた。
「この中でかっこいいって言うとやっぱり咲夜ちゃんとか?」
つむぎは言う。咲夜は基本かっこいい。
歌っている時の咲夜はなおさらそう思う。
それは周知の事実だと思っていた。
「いやウチが一番かっこいいと思うのはウチ自身だよ!」
しきは胸をはって言った。
「君のどこがかっこいいと言うんだい?」
それを呆れるように言うひそか。
「だってあらゆるマシンを駆使して扱う最新型のアンドロイドのしきちゃんだぞ! マシンに乗ってるウチはかっこいいって言われるもん! ふんふん!」
「それはマシンがかっこいいのであって君ではないじゃあないか」
「マシンはウチが作っ……博士が作ったやつだし実質ウチがかっこいい!」
いがみ合うように言い合うひそかとしき、彼女達は自分達が知り合うより前からの知り合いだったからか仲の良さが伺える。
そして次はひそかのターン。
置かれたマスのお題は……
「今年あった一番怖い話をする。だね」
「なんでよりにもよってひそかちゃんなのよ!? 絶対怖いやつじゃない! あんまり怖いのはやめてよね!」
「それは無理な話だね。一番怖い話と言ってるじゃあないか」
ひそかが読み上げたお題にねねこは叫んだ。
ねねこは怖いものが苦手だ。
そしてひそかは怖いものが大好きだ。
怖いものが苦手なねねこにしたら一番来てほしくないテーマであり相手だっただろう。
こほんと咳払いをしたひそかは語りはじめた。
「これはね、とある廃墟で映画撮影していたときの話なんだ」
「すでに怖い臭いぷんぷんじゃん」
思わず突っ込むしき。
「その日の収録は長引いてね、夜遅くまで撮影していたんだ。いやいやそれはそれは、いいものができたと収録を見ていたときはおもったよ。でも終わったあと確認したらね……あるべきものがそこにはなかったんだよ……」
「な、無かったってなにが……」
「それは……うう……思い出すだけで悪寒が……」
ひそかはその時のことを思いだし体を震わせていた。
「ひそかちゃんが怖がってる!? なかったもの……それは……」
「それは……?」
唾をごくりと飲むつむぎとねねこ。
そしてひそかはいった。
「撮影のボタンを押すのを忘れていて今日撮影したデータが全て無かったんだ……」
ズコー!
思わず拍子抜けをする一同。しきにいたってはギャグ漫画のようにズッコケていた。
「なにが怖いって言うのさそれ! ただのミスじゃん!」
「データの消失ほどこわいものがあるというのかい。お陰で傑作を取り直ししなくちゃいけないんだ、気が気でないのさ」
「なんちゃってオカ研組織作ってる団長が怖いものがデータ消失なんてみんな拍子抜けだよ」
「君だってアンドロイドなんだデータが無くなったら死も同然だと思うけどね」
「う、ウチは高性能アンドロイドだし。そういう心配はないから平気だもん!」
またいがみ合う二人。
つむぎはそれをあははと苦笑いしてみていた。
「年越しそばできたよ」
ちょうど咲夜が完成した年越しそばを持ってきた。
咲夜はそれをテーブルに置く。
「すごい! 普通の食材しか用意してないのにとっても美味しそう!」
「そうかな、まぁ料理は家庭の事情で自炊することが多かったからね」
つむぎの反応に咲夜は答える。
咲夜は親が仕事で家にいる時間が少なくて自炊することも多かった。なので自然と自炊することになったのだろう。
それにしても美味しそうだった。そばには海老天が衣をたっぷり付けてあって飾りつけがきれいにされてある。
咲夜の女子力は意外と高いようだ。
みんなはいただきますと言い年越しそばを食べはじめた。
「んまーい!」
「ふむ、味もいいじゃあないか。天ぷらもさくさくでひそかは好みだよ」
感想をいうしきとひそか。
味は文句のつけようがなく美味しかった。
「美味しいわね、あたしにも今度料理教えてよ」
「わたしも教わりたい! そうだ! 咲夜ちゃん料理配信してみたらどう?」
ねねこの言葉で思い付きつむぎは咲夜に提案してみた。
「いや私は……そういうのはノーラがやってるし別に需要はないんじゃ」
咲夜は頬をかいて戸惑っていた。
「じゃーノーラと二人でウチたちに料理教える配信してよっ」
「それやりたい! 咲夜ちゃんのギャップのある姿もっとみてみたいなぁ」
「まぁ……考えてみないこともない……かな」
ちょっと照れるように咲夜は目をそらしていた。
◇
その後咲夜を入れてすごろくゲーム再開した。
そして……
「結果発表! 一位になったのはねねこちゃんです!」
画面にはそれぞれの顔と順位が出された。
一位ねねこ
二位つむぎ
三位ひそか
四位咲夜
五位しき
こういう結果となった。
「うう……ウチ途中までトップだったのに残り7マスで7回連続1が出るなんて……」
しきは涙目になりながら言う。
彼女の不運体質のせいだろうか。
途中まで順調でもう少しでゴールというときにしきは7回連続サイコロの目が1だった。
結果最下位だ。
しかしコメント上ではむしろ同じ目が7回連続出るっていったいどんな奇跡が……?
と、驚きのコメントが流れてきた。
「それじゃあ一位のねねこちゃんにはプレゼントがあります」
「プレゼント?」
首をかしげたねねこにつむぎはプレゼントを取り出した。
それは銀色に輝くティアラだ。
「えっとね一位の人はこのティアラを被ってお姫様として全員に命令できるよ」
「お、お姫様……」
「さぁお姫様……なんなりとご命令を……てねっ」
姫に忠誠を誓う騎士のようにつむぎはポーズを取った。
コメント欄ではねねこ姫ーねねこさまーというコメントがつき盛り上がっている。
「あーもう恥ずかしいじゃない! 一位なのにこの羞恥ってなんなのよ!」
顔を赤くして恥ずかしそうにねねこは叫んだ。
それから一息つきねねこは片目を閉じて髪をなびかせて言う。
「それじゃあ姫の命令よ。カウントダウンになったら花火が上がるから今から広場に行くわよ!」
姫のような気品のある言い方でねねこは言い放った。それは本物の姫のようであった。
◇
つむぎたちはさっそく広場へと向かった。
広場には大勢の人が集まっていた。
考えることは皆おなじなのだろうか。
広場に設置してあるモニターにはこころのライブ配信が映っていた。
「あと3分で新年だよー! 今のうちに今年を振り返っておこうね!」
こころは笑顔でモニター上で言っていた。
つむぎは今年を振り返る。
今年はとても変化のあった年だった。
Unreallyに来てアンリアルドリーマーになるなど夢にも思ってなかった。
引っ込み思案だった自分が変われたのもUnreallyのなりたい自分になれるという世界のおかげだ。
来年ももっとたくさんの刺激的な毎日が遅れたらいいなとつむぎは思った。
「はいそれではカウントダウンです!」
こころが言った。
もう新年まで10秒を切っていた。
そして残り3秒となる。
「3、2、1!」
そのあとドーンと花火があがった。
『ハッピーニューイヤー!』
つむぎたちはそれぞれ叫ぶ。
「あけましておめでとうみんな! 今年もよろしくね」
つむぎは笑顔で配信画面に向けてみんなへと新年の挨拶を言った。




