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大切な思い出

「さやちゃんははじめてわたしの家来るよね?」


「うん」



 つむぎとさやはつむぎの家へと向かっていた。

 雪は時間が経つにつれ少しずつ勢いがつよくなり積もりかけている。



「さやちゃんのマンションに比べたら普通の家だから期待しないでね」


「大丈夫……」



 さやの家はこの市一の高級マンション。しかしつむぎの家は普通の一軒家。

 

 なので比べてはいけない。


 そうしているうちに二人はつむぎの家に着いた。



「ただいまーお母さん」



 自分で持っている鍵で玄関を開けるつむぎ。


 すると部屋にいたであろう一人の長い髪の女性が玄関へとやってきた。つむぎの母だ。



「おかえりなさいつむちゃん……あらその子は?」



 つむぎの母は不思議そうにさやを見る。



「ど、どうも黒葛さやです……つむぎさんとはいつも仲良くしてもらってます」



 緊張しているのか、年上に対する礼儀なのかさやは恐縮していた。



「あらーあなたがさやちゃんなのね! つむちゃんからあなたの事は聞いてるわ! せっかくだから夕飯食べていって」


「あ、ありがとうございます。お言葉に甘えて……」



 母は手を合わせ嬉しそうにさやを見ていた。

 さやのことは母に話していた。クールで演奏と歌が上手くてかっこよくてでもちょっとかわいいがある、そんな友達だと伝えている。



「じゃあさやちゃん、わたしの部屋にいこ」



 つむぎはさやを自分の部屋へ案内するように二階への階段へと行った。




 

「どうぞ入って。散らかってないかな……定期的に片付けているんだけど」



 つむぎは部屋を確認する。

 部屋はベッドに勉強机、本棚がある。

 本といっても漫画や雑誌ばかりである。最近の人気のアニメ化作品などが綺麗に順番に並べてあった。

 

 またフィギアやポスターが少しばかり飾ってある。こころにティンクルスターのフィギュアに、キララマジカルのポスターが貼ってあった。



「大丈夫……私よりは綺麗にしてある」


「散らかってるとお母さんに怒られるからね」



 あらかた確認したが散らかってる場所は無かった。いつも部屋は綺麗に使うようにと母親から言われているのを守ったのが今日に活きた。


 すると母が二階に上がってきてこちらに声をかけてきた。



「さやちゃん、生憎なんだけどこの雪の勢いじゃ今日は帰れそうにないわ。家で良かったら泊まっていって」


「で、でもそこまでされる義理は……」



 雪の勢いが更に強くなったらしい。天気予報だと降っても数ミリ程度しか積もらないと言っていたのに思った以上の積雪になりそうだ。



「いいのよ、つむちゃんのお友だちでしょ? 近所のひなたちゃんはよく遊びに来てたから慣れっこよ。ね、つむちゃん?」


「うん、だから遠慮しなくていいよ。着替えもわたしの貸すから」


 

 母に話を振られつむぎは頷いた。

 さやが今日泊まってくれるなら一晩中楽しいはずだ。



「それじゃあ……今晩はよろしくお願いします」



 さやは母にお辞儀をした。




 ◇



「ふぅ、あったかい……」



 その後風呂へと入り出てきたつむぎは髪の毛をタオルで乾かしながら部屋へと戻ってきた。乾かしている途中で今日はもう夕食を食べて寝るだけなのでリボンを結ばない。



「あれ?さやちゃんなに見てるの?」


「つむぎのアルバム。おばさんが持ってきてくれた」



 さやは床に座ってつむぎの思い出写真がつまってあるアルバムを見ていた。先に風呂に入っていたさやはつむぎの予備のパジャマを着ている。


 つむぎはさやの後ろに立ちアルバムの中を見る。そこにはつむぎの人生を物語る写真がざっと貼られていた。


「懐かしいー。ひなたちゃんが勇者ごっこしてた頃だ。わたしも僧侶役やらされてたなー。

小学校、これは絵で賞を貰ったときの写真だよ。

中学はあんまり今とかわってないかな……」



 思い出の数々をさやに説明していくつむぎ。

 その当時を思い出しながら懐かしさを覚えてきた。



「いっぱい写真あるんだ……」


 

 さやは呟くように言う。



「そうだね、大切な思い出だからね」


「私との思い出はある?」


「そういえばこっちでは一緒に写真撮ったことなかったね」



 さやの質問につむぎは答えた。クラスの集合写真ならあるかもしれないが個人的に取ったものは無かった。


 するとパン! とさやはアルバムを閉じた。



「つむぎとの思い出はさやでは残ってない……」


 

 シュンとした顔で寂しそうに犬のような表情をするさや。だいぶ落ち込んでるようだ。



「お、落ち込まないでっ! そうだ! 今撮ろうよ!」



 さやを元気付けようとしたつむぎは今写真を撮ることを思い付きスマホを取り出す。


 カメラを自撮り画面に設定してつむぎはさやに顔をくっつけた。



「ほら笑って!」


「……」



 さやは無言のままだった。でも少しだけ口元が緩んでいる。


 パシャりとカメラが撮られる音がした。



「はい、これで二人の思い出としてちゃんと残せたよ! あとでUINEで送るね」


「うん……」


 

 さやはそう言われると嬉しそうに微笑んだ。



 ◇



 夕食を食べ二人は部屋で動画をみたり話してたりした後就寝についた。


 客人用の布団は無かったためつむぎとさやは一緒のベッドで寝ることとなった。



「つむぎ……今日は誘ってくれてありがとう」



 横で寝ていたさやが向かい合って言ってきた。



「そんな、結局雪降っちゃって泊まらせることになっちゃったし」


「別にいい……むしろ楽しかったから。リアルで遊ぶのも悪くない……」


「そっかそれならよかった」



 少し心配していたが本人は楽しかったようで安心した。

 するとさやはつむぎの手を握ってきた。



「私たち……学校卒業しても親友でいられる……かな」


「さやちゃん?」



 さやはなにか別の不安があったようだ。



「不安……この楽しい日々がいつか消えてしまうんじゃないかと思うと……」


「大丈夫だよ……」



 悲しそうな顔でさやは言う。

 そんなさやを見てつむぎは手を強く握りしめた。



「もふあにTVのときもねもふあにさんたちが言ってたんだ。活動から四年経って成長してこっちの世界ではもう四人とも揃って会うことは少なくなって別々の夢に向かって頑張っているんだって」



 つむぎはもふあにと撮影外で話した事を言う。

 彼女たちはそれぞれ別の大学に行っていてリアルでは会える機会が減っていると言っていた。



「でも、それでもUnreallyでは一緒にいるから今までとそんなに体感変わんないんだって。だからリアルで離ればなれになったとしても……わたしたちもきっとずっと一緒にいられるよ」



 つむぎはそう強く願う。

 リアルは大事だ。二人にとってアンリアルだけが二人の関係ではなくリアルだけの関係でもない。

 

 二つとも構成されて今の関係がある。

 

 でも大人になれば今のようにはいかない。


 でもUnreallyはいつでも会いにいける。リアルの顔を知らない友達だってたくさんいる。


 だからこの絆はきっと切れない。



「そう……ならいいな……」



 さやは安心したかのようにいい目を閉じた。


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