友達
体育祭当日になった。
快晴の青空はこの日のために用意されたかのように綺麗だ。同時に日差しの暑さが一直線に来る。
体育祭はクラス対抗だ。A組~E組までの5クラスでの競争となる。
はじめの種目は100m走だった。
「ふぅ」
「ひなたちゃん一位おめでとう!」
100m走を走り終えて水筒のスポーツドリンクを飲んでいるひなたにつむぎは祝福の言葉を掛ける。
ひなたはぶっちぎりで100mを走りきった。
「シシッ、あたしにかかればこんなん余裕よ」
自信満々に笑うひなた。
A組のつむぎたちの中でも一番運動神経がいいのはひなただ。今でこそ部活は所属してないが中学はバスケ部エースで県大会まで行っていた。
今も時々他の部活にも助っ人を頼まれたりすることがある。Unreallyでの活動が優先であまり受けることは少ないらしいが。
「わたしはビリだったよえへへ……」
苦笑いをしながら同じく100mを走ったつむぎは言う。
つむぎはもともと運動は得意じゃなくUnreallyにいてばかりでリアルで運動不足だったため余計だった。アンリアルで鍛えられるのは反射能力だけで体力面や筋力はリアルでは変わらない。
「まぁつむぎが運動音痴なのはしってるからいいよ。その分あたしが点を稼ぐからね!」
ひなたは自信満々に言う。ひなたは一番競技に参加する数が多かった。
そこがA組が一位をとれる期待でもあった。
「うん……それでさ。二人三脚の方はどうなのかな?」
つむぎは不安だったさやとひなたの関係を問う。あの後1000歩走ることになったのはしきが100と1000を間違えて設定してたらしくそのせいで長時間二人は走っていた。
1000歩は無事に達成したらしく終わった頃は二人は倒れていた。
「あぁ、それなら大丈夫だよ。こっちでは言えないこともあっちではいろいろ言えたからね。なんとかなる」
微笑みながらひなたは言う。それは少しだけ自信があるように見えた。
そうして種目が次々と行われる。
障害物走。綱引き。玉入れ。そういったお馴染みの競技が行われる。
そして問題の二人三脚。
ひなたとさやは二人足に紐をつけていた。
「それじゃあ頑張ろっか! 黒葛 さん」
「うん……」
さやは大人しく返事をする。だが前より変化がある。
最初の頃はもう少しそっけない、気まずい雰囲気があったが今はひなたが明るく前向きに二人は話しているように見える。
「頑張ってね二人とも!」
つむぎは二人が競技の出場前励ましの言葉をかけている。
「まっかせて、あたしたちの成果ばっちり見せるよ! 一位目指して頑張ろ、黒葛さん!」
ウインクをしてさやに言うひなた。
「まぁそれなりに……頑張る」
二人の距離は少なからず近づいたのかもしれない。さやの口数は最初のころよりすこしだけ増えていた。
そして二人は二人三脚へと出場していく。
他のクラスと現状五分五分の結果。
できるだけ点を稼ぎたい。
なので二人には是非上位に入って欲しいが簡単にはいかないだろう。どれだけ互いの歩幅に合わせてスムーズに走り続けられるか。それが問題だ。
リアルでの練習では上手く成果が出せなかった。Unreallyの成果は無事でるのか。
そんな不安と共に二人の番がきた。
5クラス5組がそれぞれスタート位置につく。
さやとひなたは二人はそれぞれ肩と腰に手を合わせ深呼吸をひなたはする。
そしてスタートの合図をとるスターターピストルをレースの審判が構え片手で耳を押さえる。
緊張の瞬間。スタートダッシュが要だ。
「位置について……よーいドン!」
銃がそらへと響いた。
瞬間それぞれが息を合わせて走り出す。
「1、2! 1、2!」
ひなたとさやはそれぞれ掛け声を出す。
大きい声のひなた、小さいながらも頑張ろうと声を出すさや。
二人は最初スタートダッシュに遅れたが他の子に追い付くために走り出す。
「がんばれーひなたちゃんさやちゃん!」
「つむも二人もがんばってるね」
「ことねちゃん!」
応援席でつむぎが二人を応援していた所にことねが声をかける。
「結構よくなったみたいだね二人とも」
「うん! 二人が仲良くなるようにいろいろ協力したんだ」
Unreallyでのことは教えない方がいいだろうと思い曖昧に答える。
「二人はこのまま上手く最後までいけるかな」
「いけるよたぶん……トップだって狙える」
つむぎはそう信じている。
咲夜とミーシェルはあのことがきっかけで仲が深まったはずだ。いじられいじる関係だがその関係が二人にはいい。
その二人がリアルでどういう関係になるかはわからないがきっと上手くいく。
現実でもアンリアルでも心は一緒なんだ。
レースは終盤へと向かっていた。
他の子達は最初に転倒する子もおり先頭は二組。
その一組にひなたたちがいた。
息が合いたどたどしい動きもなく二人は走り続ける。
「頑張れ頑張れ!」
つむぎは願う。せっかくここまできたのだ。一位を取ってほしい。
それはさやとひなたも同じだった。
「黒葛さん……いやさや、まだ加速できるよね? 練習の成果みせてあげよ!」
「うん……」
二人は思いきり足を踏み込み加速した。
そして先頭から突き抜け。
ゴール!
「やったぁぁ一位だぁぁ」
つむぎは嬉しさのあまり叫んだ。
◇
それから競技終盤。
今の競技は借り物競争だった。
借り物競争にはさやが参加していた。
借り物競争は地面においてある紙からお題の内容のものをもってくる。それでOKがでたら先に進める。
いたってシンプルだがお題によっては大変だ。
あまり難しくないものであってほしいとさやは思う。
ピストルの音がなりさやはスタートする。
お題のある場所にやってくるとひとつの紙をめくった。
「……っ!?」
途端にさやは硬直する。
つむぎはどうしたのかと思う。
さやはA組の応援席を見る。
視線が定まらない。なにかを悩んでいるように思う。
他の子達は既にお題のものをもちゴールへと進んでいく。このままでは最下位だ。
それからさやは意を呼吸を整えこちらへと向かっていく。
つむぎの方へくる。と、思いきやさやはひなたの方へと行っていた。
「これお題」
さやはひなたにお題を見せる。
そのお題には『友達』と書いてあった。
ひなたは目を見開く。
「え、それあたしでいいの? それってつむぎのが適切なんじゃ……」
ひなたは驚いていた。心を開いてなかったひなたを選ぶのはなぜなのか。
「つむぎは親友……友達以上の存在。だからこれには当てはまらない。だから仕方なくそれに近い雨宮さん……ひなたに代役を任せる……」
それはある意味さやにとって認めた存在なのかもしれない。友達という存在を信じてなかったさやがそれでも友達を選ぶなら誰か、それの最適な人物がはじめて現れたのだ。
ひなたはさやを見つめたあと、にやりと笑う。
「仕方ないなぁ! それじゃあいくよさや!」
こうして二人はゴールへと向かっていく。
結果は最下位だった。
だがそれはさやにとってはとても大切なはじまりのひとつであった。




