宣伝しよう!
その日は快晴でパステルピンクの空。つむぎたちは喫茶雪月花の外で撮影をしていた。
◆Unreallyで穴場の喫茶店見つけちゃいました! │麗白つむぎ
「こんにちは、アンリアルドリーマーの麗白つむぎです!」
「咲夜だよ」
「はいはーいウチしきー! みんなウチのこと覚えてるー?」
それぞれが挨拶をする。しきは自分にカメラが写るとピースをして存分に自分をアピールする。
後についたコメントではいつも自爆する子だ、今日も自爆するのかなというコメントがついてたことはまだ知らない。
「今日はね、Unreallyであまり知られてない。でもすっごいおすすめの喫茶店があるんだ! それがこちら! 喫茶雪月花!」
喫茶雪月花の外観をバーンと見せる。動画の右下には雪月花のある場所が印されている。
「それじゃあ中へ入ろう」
咲夜は言がいい扉を開ける。
「Добро пожаловать いらっしゃいませでありんすよ」
店へ入るとエレオノーラがロシア語を交えて笑顔で迎えてくれる。店内は案の定エレオノーラ以外誰もいない。
「はい、こちらが店主のエレオノーラちゃんです。なんとエレオノーラちゃんロシアと日本のハーフなんだって!」
「ノーラでいいでありんすよ。今日はお店の紹介をしてくれてありがとうでありんす」
この企画を提案したつむぎにエレオノーラは感謝を述べる。
つむぎの考えた案はこうだ。
つむぎのチャンネルにお店の紹介動画を投稿しお店を宣伝する。
そうすることでお店を認知してもらいそこから客が増えないかと考えたのだ。
「ここの喫茶店は落ち着いた雰囲気があって居心地がいいんだ。コーヒーを飲んでゆっくり時間を過ごすのもいいと思う…」
「それにそれにーメニューの品は全部ボリューミーでガッツリ食べるのにおすすめーおすすめ~!」
落ち着いた咲夜とテンションの高いしき二人の落差は激しい。
「じゃあノーラちゃん!おすすめのメニューをお願い」
「承知しましたでありんす」
そう言ってエレオノーラは調理をはじめる。
調理しているシーンは動画ではダイジェストで送られることになる。それでも調理しているエレオノーラの姿は綺麗で美しく様になっていた。
厨房ではいい香りが漂っていた。
「出来たでありんすよ」
エレオノーラが調理が終わり料理をカウンター席へ差し出す。
デミグラスソースがかかっているオムライス。
山盛りのナポリタン。たくさんのフルーツにバニラアイスやクリームが乗ってあるプリンアラモードが出された。
しきはオムライスを、咲夜はナポリタン、つむぎはプリンアラモードを手に取りそろっていただきますと言った。
「うんまぁぁぁい! この半熟でとろとろふわふわな卵にデミグラスソースのコクが合わさって奇跡のハーモニー!」
「うん、美味しい」
「ほんと飾り付けも綺麗で食べるのが勿体無いよ」
しきは車載動画で食レポをする動画を出しているからかこういう時の反応に慣れていた。
咲夜は静かに一口食べ、つむぎは形が崩れないよう綺麗に食べる。
「喜んでもらえてうれしいでありんす。でも、まだこれで終わりじゃないでありんすよ。今回は特別に当店の裏メニューを紹介するでありんす」
「裏メニュー……?」
つむぎたちはその事は一切聞いてなかった。
一体何を出してくるのだろうか。
「裏メニュー……それは寿司でありんす!」
カウンター席の前に大きなまな板を置くエレオノーラ。すると大きな魚を取り出しまな板に乗せた。
「まずこのマグロを捌くでありんすよ」
「捌く!? いったいどうやって!?」
突然のエレオノーラの発言につむぎは驚く。
「それはこれでありんすよ」
腰に付けてた刀をエレオノーラは持つ。
そして深呼吸をし姿勢を整えエレオノーラは刀を抜いた。
「はっ!!」
そこからのシーンは動画で見直しても何をしているのかわからない速業だった。圧倒的な速度でエレオノーラは捌く。その一瞬でマグロは切り身になり一貫サイズのネタが大量にできた。
「す、すごい……いったいどうやったん?」
思わず目を見開くしき。
「家柄上剣術を習ってきたので習得できたでありんすよ」
「いや人間業じゃないでしょあれ!」
「ここはアンリアルでありんすから」
「そう言われたら否定できないけどっ!?」
ツッコミをいれるしき。アンリアルならなんでもあり、そう言われたら否定できないのがこの世界だ。
会話をしながら慣れた手つきでエレオノーラは酢飯を取りだし寿司を握る。
「どうぞ、マグロのお寿司でありんす」
二貫ずつ皿に置いてつむぎたちにそれぞれ差し出す。
醤油を付けつむぎたちは一口食べる。
「おいしい! こんなにおいしいマグロはじめて食べたよ!」
「口の中がとろけるぅ! 普通に板前の寿司って言われても信じるレベルール!」
「うん、おいしい……」
それぞれが感想を述べる。
「はい、ということで今日は喫茶雪月花に行ってきました! 個性的な店主さんとお得で独自のメニューでとっても素敵な場所なので是非来てね!」
こうしてつむぎたちは動画撮影を終了させた。
◇
翌日つむぎと咲夜は喫茶雪月花に向かっていた。
「お客さんいるかな」
「どうだろうね」
行ってみないとわからない。再生数はまずまずの伸びだ。だがDreamtubeを見ているのはUnreallyにいる人間だけではない。そこからお店に来るまでの行動力にまで至るとは限らない。
とにかく雪月花へとつき扉を開けた。
すると予想以上の光景が目の前にはあった。
なんと店内のほとんどの席に人が座っていて満席に近かった。その店の中にいたお客の中にはUフェスでつむぎのブースに来た人の顔もあった。
「すごいこんなに人が…!」
「つむぎどの! 咲夜どの!」
接客をしていたエレオノーラがこちらに気付くとつむぎたちの方へとやってきた。
「大変そうだねノーラちゃん」
「ええ、ありがたいことにつむぎどのの動画を見て来てくれた人がたくさん来てくれたでありんす。これもつむぎどのたちのおかげでありんすよ!」
エレオノーラはニコニコと笑顔で応える。
「よかった! わたしたちの力でこのお店が人気になって」
「しかしDreamtubeに動画を投稿するとここまで変わるんでありんすねぇ」
「それはね、その人のチャンネルを気になった人がチャンネル登録をしてくれてその人を好きになってファンになる。そうして好きな人となにかを共有したいってなって行動に移してくれると思うの……。わたしも好きなアンリアルドリーマーの影響を受けて行動に移す時があるから分かるんだ」
えへへ、と言いながらつむぎはファン側の視点Uドリーマーの視点両方での説明をする。
こころの占いの影響でリアルでイメチェンしたりティンクルスターの作ったお菓子を買うのにスイーツプラネットに行ったり、そして咲夜に出会ってアンリアルドリーマーになったり。
そういった好きな人の影響で行動に移す人はつむぎだけではないはずだ。だからきっとここへ来てくれるファンが少なからず居てくれるとつむぎは信じていた。
「アンリアルドリーマー……ふむ」
口元に手を当ててエレオノーラは考える。
「もし……わたくしがアンリアルドリーマーになってこの店を宣伝していけばもっと人が来てくれるでありんすか?」
「来るよ!」
「その自信は?」
「だってノーラちゃんは魅力的だしもしUドリーマーになったらわたしファンになっちゃうよ! きっといいなと思った人が、好きな人がきてくれて通い続けてくれる。その時は今の何倍も人気なお店になっちゃうよ!」
つむぎは笑顔で答えた。
「よし……決めたでありんす!」
エレオノーラはなにかを決意したように言った。
「わたくし、これからアンリアルドリーマーとしてこの店を宣伝してくでありんす! 元々人を喜ばせるのは好きでありんしたからやってみたくはあったでありんすよ!」
「ほんと! それじゃあわたしたちこれからアンリアルドリーマー仲間だね」
笑顔でつむぎはエレオノーラの手を握る。
「はいこれからよろしくでありんすよ!」
笑顔でエレオノーラは返す。
こうして夏の終わり。新しいフレンドとアンリアルドリーマーが誕生した。




