喫茶雪月花
喫茶店の内へと入って行った。
入ってすぐつむぎたちはアバター情報をリセットをして濡れた服をリセットする。汚れなどを落としたり乾かすならこうするのが一番手っ取り早い。
「Добро пожаловать いらっしゃいませでありんす」
すると一人の女の子が挨拶をしてくる。
目の前には長い白髪の少女がいた。瞳は青く綺麗でまつげが白く可愛らしい少女だ。太ももが見える丈の短いピンクの着物を着ておりロシア帽子を被っている。
腰には刀を所持していた。
彼女は優しそうな嬉しそうな笑みでこちらをみている。
「雨の中お疲れさまでありんす。わたくしは店主のエレオノーラ。どうぞ席についてくださいませ」
エレオノーラと名乗った店主は席へと案内した。
店内はおしゃれなBGMが流れており、落ち着く雰囲気が漂っている。だが落ち着きすぎている。
客はつむぎたち以外一人もおらずさきほどまでエレオノーラ一人だった。
つむぎたちはカウンターへと案内され席へと座る。
メニュー表を渡されつむぎたちはメニューを注文することにする。メニューの中身はパンケーキやパフェなどのデザートからオムライスやサンドイッチ、ボルシチなどメニューのバリエーションが多い。
「それじゃあわたしはいちごパフェで」
「ウチはホットケーキ……」
「私はコーヒーをお願いするよ」
つむぎ、しき、咲夜の順でメニューを注文した。店主エレオノーラはそれを聞くと「かしこまりましたでありんす」と言い料理を開始する。
Unreallyでの食べ物は賞味期限などがないため作りおきしてアイテムとして複数作っておける。そのため大量に仕込みをして注文が入ったら即座に出すところが多い。
エレオノーラは丁寧に一から注文を作っていた。
「お待ちどうさま、いちごパフェ、ホットケーキ、コーヒーでありんすよ」
しばらくした後、エレオノーラがお盆にのせた注文品をそれぞれつむぎたちの前に差し出す。
咲夜はシンプルなコーヒー一つ。
しきは分厚いピラミッド上の三段のホットケーキに蜂蜜が滝のように流れている。
つむぎのいちごパフェは上が半分に切ったいちごが囲んであり、中心にミルクアイスの上に丸ごといちごが乗せられた豪華なパフェだった。
「すごいとっても豪華!! これでこのお値段なんてすごいお得だよ」
この店の値段は他の店と値段は変わらない。
だがボリュームや豪華さは他の店より段違いで見映えも良かった。
「приятного аппетита 召し上がれ」
エレオノーラは口を隠すように丸いお盆を持ちにっこり微笑んで言った。
「いただきます……」
大人しいしきはナイフとフォークで一口サイズに切りぱくりと食べる。
するとガタッ! っとしきは立ち上がった。
「う……うっ……うまああぁぁぁい!」
ぱぁ、としきの表情は変わっていった。
元気のなかったしきの表情に明るさが戻ってくる。
「うまいよこれ! もちもちでふわふわで甘いぃ! 元気ふっかーつ!」
「静かだったのにうるさいのがまた戻ってきた……」
騒がしいしきを横目にコーヒーを手に取り咲夜は呟く。だがしきが元気になったのはよかった。
彼女が元気でない姿はあまりみたくない。うるさいくらいがちょうどいい。
そんな気持ちをリセットするために毎回自爆しているのだろうとつむぎは思う。
「それじゃあわたしもいただきまーす!」
つむぎもいちごとアイスを一緒にしスプーンでパフェを食べはじめる。
「おいしい! 見た目も味も最高だよ!」
「Спасибо お褒めの言葉ありがとうでありんすよ」
「あの……さっきから言ってる言葉ってなんですか?」
つむぎは質問した。先ほどから海外の言葉のような単語が聞こえたのを疑問に思ってた。
「失礼、わたくしはロシアと日本のハーフでありんすよ。小さい頃はロシアに住んでたので時々口に出しちゃうでありんす」
「なるほどー」
見た目からしてロシア人っぽい感じはしたがほんとうにロシアとのハーフだとは思ってなかった。
「咲夜どのはほんとうにコーヒーだけでいいんでありんすか? なんならサービスで傘回しを披露するでありんすよ」
「別にそういうのいいよ……私はお腹すいてないし」
エレオノーラは傘と玉を取り出していた。だが咲夜は静かにコーヒーを飲んでいる。
値段以上のボリュームといいとにかくサービス精神が凄いのは見ていてわかった。
「そうでありんすか……ここには滅多に人がこないのでわたくしがやれることはやるでありんすよ」
「ここってそんなに人来ないのー?」
しきは質問する。確かに疑問だ。こんなにいい店なのに人が全然来ないのは不思議だ。
するとエレオノーラはため息をする。
「そうでありんすよ……せっかく夢だったお店を出したのに中心地と離れてるせいでなかなかお客様がこないでありんす。中心地は人が多いけどその分店を建てる値段があまりにも高いんでありんす」
悩むように右手に頬をのせるエレオノーラ。
中心地はエストヴィルのオルベージュ区だ。
そこが最も人が多いのは、そこがチュートリアルが終わった後プレイヤーが最初にくる区だからだろう。その辺を中心に周りの区は人気で建物も多くのプレイヤーがすんでたり店を経営している。
だがここはエストヴィル外の別のエピンルシャルトという場所だ。エストヴィル、エピンルシャルトは現実世界で言うところの都道府県のことで○○区は市町村のことだ。
物価は安いが人が少ない。
わずかにNPCがいる街というのはUnreallyでは数多くある。
なにしろUnreallyの大きさはワンダーランドプラネットで地球一個分の広さ。他の数多もの惑星がUnreallyにはあり行き来できる。
だが総プレイ人数は1億人にも満たない。
4周年に6000万人を越えたようだがそれでもこの大きな世界にはあまりにも広い。
その中で人々は交流を取ることを目的にしているので一部の場所に密集しやすかった。
だから人がこない土地には滅多に人がこないのである。
「なにかいい方法はないでありんすかねぇ……」
悩むエレオノーラ。そんな彼女を見るのは少し悲しい。彼女はせっかく夢だった店を出したのだ。
つむぎたちが来たときもすごい嬉しそうに迎えてくれてサービスもかかせない。
この店はもっと評価されるべきだ。
でもどうしたらいいか──
「そうだ!」
つむぎはなにかをひらめき立ち上がる。
「なら、わたしたちの力で宣伝しよう!」




