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現実世界のお祭り

 フェスも終わり八月の中旬。

 つむぎは今日現実世界での出来事を楽しみにしていた。

 

 ピンクの浴衣を着ていつも出掛けるよりすこしだけおめかしをしている。


 今日は学校の近くで夏祭りがある。そこにひなたとことね、二人と一緒に行く予定だ。


 身支度を整えたつむぎは夕方、家を出ていった。


 目的地までの距離はだいたい徒歩30分。

 浴衣姿のためもう少し時間が掛かるかもしれない。なので早めに出ていた。




 数十分が経ち目的地についた。

 そこには見知った人影が二つある。



「おーい、つむぎー」


「二人とも!」


 

 ひなたとことねだった。

 


「つむ、夏休み元気にしてた?」


「うん、いろいろあって楽しかったよ!」


「そっか、久しぶりに顔を見れてことは嬉しいよ」


「こっちこそ今日は誘ってくれてありがと」


 

 ことねの問い掛けにつむぎは答える。

 今日夏祭りに行くことになったのはことねがきっかけだ。



 数日前ことねがひなたとつむぎにUINEで


ことね:せっかくの夏休みだしどっか遊びにいかないかな? 今度学校の近くでやるお祭りとかどうかな?

ひなた:いいねぇあたしは賛成

つむぎ:わたしも二人と行きたい!



 とやりとりをして今に至る。



「それにしてもみんな浴衣姿だね」


「まぁせっかくの行事だしねぇ。去年着てたのだけどこういうときしか着れんし」


 つむぎは二人の浴衣姿をみる。ひなたはオレンジと黄色が混じり合った浴衣でことねの浴衣は青に花柄がついている。


 

「それじゃあ行こうか」


 

 ことねの言葉で三人は階段を上がりお祭りの屋台がある場所へと向かった。


 お祭りはそれなりに賑わいがあった。

 様々な屋台の美味しそうな匂いに食欲がそそる。



 するとひなたはさっそく一人で屋台に向かった。



「夏祭りの定番といったらやっぱこれっしょ!」


 

 ひなたはリンゴ飴を購入していた。

 つむぎもなにか買おうと屋台をみる。



「じゃあわたしもかき氷食べようかな。いちご味」


「じゃあことはメロン味にするよ」



 つむぎとことねはそれぞれお金を出し合い一緒にかき氷を買った。

 氷の山にシロップが乗ったそれは夏にふさわしい食べ物だ。


 ストローでできたスプーンでつむぎはパクリと一口。

 かき氷は冷たくて甘く、でも普通のアイスクリームとは違った味わいで美味しい。夏の暑さにぴったりの食べ物だった。



 その後つむぎたちは屋台を見て回る。

 屋台には食べ物以外にも遊べるところもある。

 そこで一つつむぎはその中から射的を選んだ。

 お店の女性にお金を渡し銃を手に取る。


 つむぎは銃を構え、景品に狙いを定める。

 欲しい景品があるわけではなく目的は銃で景品を落とすと言う現実ではなかなかできない達成感。


 なので一発当てれば落とせそうなお菓子の箱を狙うことにする。


 何発か撃つ。しかし狙い通りにはいかず全弾外れてしまった。



「あはは、やっぱりなかなか当たらないね」


「普通そうなのよ。さっきの子はすごかったなぁ」


「さっきの子?」


 

 店の女性の言葉につむぎは首を傾げる。



「さっき中学生くらいの女の子がバンバン景品を撃って手に入れてたからね。いやー全部取られるかと思ってひやひやしたよ」


「そんな子がいるんだ」



 なにかそう言うことを日頃からやってる子なのかなとつむぎは思う。

 その後、ひなたも射的をしたが全然景品は落ちなかった。狙ってたのは最新ゲーム機だ。



 ◇


 その後つむぎたちはお祭りを一通り満喫した。

 輪投げや金魚すくいで遊び。焼きそばやベビーカステラを食べて思いのままに過ごす。

 

 そして20時が近づこうとしたとき。



「あ、わたしそろそろ帰るね」



 つむぎはスマホで時間を確認して二人に言った。



「どうしたのつむ? もうすぐ花火がはじまってこれからが本番なのに」


「あはは、ちょうど八時からは用事があるんだ。それじゃあまたね!」



 そう言ってつむぎは二人と別れた。

 八時には花火がはじまる。

 本来ならここからがお楽しみなわけで本当なら一緒にいたい。


 しかしつむぎにはどうしても外せない約束があった。


 その約束を果たすためつむぎは彼女のいる所へと足を進めたのだ。



 ◇



 つむぎは一人目的地へと歩いていく。

 彼女との約束は午後八時。

 

 賑わっている人だかりから徐々に人がいない場所にやってくる。

 

 目的の場所は祭りの場所から少し離れた河川敷だった。そこにはすでに約束していた彼女の背中姿があった。



「さやちゃん!」



 彼女は振り向く。約束していた少女。それはある意味最近ずっと一緒にいて、ある意味では全然会ってなかったさやだった。



 つむぎは夏祭りの約束をしたときさやと個別でUINEでやりとりをしていた。


つむぎ:今度学校の近くでやる夏祭りひなたちゃんたちと行くんだけどさやちゃんも来ない?

さや:大勢はいや

つむぎ:そっかごめんね



 親友にはなれたけどやっぱりまだリアルでの溝は大きい。そう思ったが数分後。



さや:でも夏祭りにはいく

さや:だから二人きりなら会ってもいい

つむぎ:なら一緒に花火見よう!

さや:うん



 というやりとりがありつむぎはさやと一緒に花火をみる約束をしていた。



「ごめん待ったかな?」


「別に……私もさっきまで楽しんでたから大丈夫」



 わたあめをもってさやは言う。

 彼女にしてはちょっと意外な格好をしていた。

 服装は水色の浴衣姿をしており左上の頭には白い狐のお面がつけられていた。

 お面は屋台にあったものと同じだ。


 それと巾着袋一杯にぬいぐるみやらお菓子が入っている。

 

 

「その荷物どうしたの?」


「これは射的で取った景品たち。Unreallyで培ったスキルがリアルでも反映されるかやったらいっぱい取れた……」


「あーあれってさやちゃんのことだったんだ」


 

 つむぎはさっきの出来事に納得した。



「あれって?」


「中学生くらいの女の子が景品バンバン取っていったってお店のお姉さんが言ってたんだよ~」


「私中学生じゃない……」


「ごめんごめん……」


 

 さやはふてくされるように背中を向けた。

 実際さやの身長は140㎝台で中学生に間違われても仕方ない。



「でもさやちゃんが楽しんでたならよかったよ」


「一人は一人でそれなりにたのしい……いつもそうしてきたから」



 その後「でも」と言いつむぎの方を振り返るさや。



「今日はちょっとだけ……寂しかった」



 彼女の寂しそうな気持ちは目で分かった。

 一人でいることが多かった彼女。でも最近は学校ではつむぎといることが多くなっていた。

 だから孤独への寂しさを彼女は知ったのかもしれない。


 そんな彼女の気持ちを読み取ってつむぎは笑顔を振り撒く。



「それじゃあ今からはわたしが一緒だよ! 一緒にお祭りを盛り上がろう!」


「……うん」



 さやはつむぎを見つめて口元を緩めた。



 するとドーン、ドーンと音が鳴る。


 夜空に花火が打ち上げられた。

 打ち上げ花火の始まりだった。



「花火、始まったね! 見ようさやちゃん!」



 二人は河川敷の草地にシートを敷き座った。



「綺麗だねぇ」


「ん」


 

 色とりどりの鮮やかな花火が夜空に絵を描く。

 二人はそれを眺めていた。



「リアルでこうするのもいいよね」



 つむぎはさやの方を向いて言った。

 さやは花火の方を向いたままぽつりと



「まぁ……きらいじゃない……かな」


 

 と言った。

 その綺麗な景色はUnreallyと変わらない。

 そして絆も思い出もちゃんと自分の心に残るものだった。



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