ボス戦
「やっと最深部だ!」
しばらく探索した後、つむぎたちはマップのチェックしてある場所についた。
そこはエメラルド色に輝く聖なる泉になっており、神々しく光っている。
RPGでよくみる回復ポイントのみたいだ。
これで瓶に泉の水を組めばクエストはクリアだ。
さっそく泉のところへ行こうとする。
だが簡単には行かせてはもらえなかった。
ウゴゴゴ!
一つの大きな木が動き出す。それは他の木より特段と大きく、まがまがしくもあった。
よく見ると目がある。凶暴な目付きをした木のモンスターだった。
「これって……!」
「まぁたぶん、ボス戦……だよね」
モンスターのステータスの表示が出る。
モンスター名:おばけ大樹
レベル:20
このミッションが推奨レベル20になっている理由だろうか、ボスだからだろうか。
他のモンスターより明らかにレベルが高かった。
「準備はできてるつむぎ?」
咲夜は銃を構える。
「もちろん、いくよ咲夜ちゃん!」
つむぎもマジカルステッキを持って戦闘態勢に入った。
二人は左右に分断する。
できるだけ大樹とは離れ攻撃範囲ギリギリに。
大樹は腕らしき枝を咲夜にむけて殴りかかってきた。咲夜はすばやくそれを回避する。
それは咲夜の後ろにあった木を折り倒した。
直撃を喰らったらひとたまりも無さそうだ。
アンリアルとは言え痛覚はそれなりにあるし直撃だけは避けたい。
咲夜は距離をできるだけおきつつ銃で着実にダメージを与えていく。
何発でも連射できるわけでなく、リロードもしないといけない。その隙をつかれないように、走りながら咲夜は攻撃していく。
つむぎも魔法使いで後方型だ。
距離を取って攻撃をする。
「メラメラファイアー!」
魔法を唱える。火炎放射のように出るその炎は、木との相性は抜群だ。
レベルは低くとも深いダメージを与えることができた。
ゴゴゴゴ!
すると大樹は怒り狂い、枝を振り回してきた。
あたりをなぎ倒すように振り回す。そしてその攻撃はつむぎへと向かってきた。
「きゃっ!」
「つむぎっ!?」
その攻撃を喰らいつむぎは吹き飛ばされる。
心配する咲夜。あの攻撃を喰らえばつむぎのレベルでは一撃で死亡だ。
だが攻撃をくらったつむぎは消滅することなくその場にいた。
「いてて……持っててよかった! ラファエルの盾!」
つむぎの手には複製したラファエルの盾があった。それでガードしたおかげで一撃で倒されることはなかった。
つむぎはすぐさま回復ポーションを飲む。
ポーションはエナジードリンクのような味がした。体力が回復をしていく。
「これでおわりっ!」
つむぎが回復している内に咲夜は手榴弾を取りだし大樹になげた。
そしてドカン!と小さな爆発が起こる。
ゴゴゴッ……ゴッ!
大樹はその攻撃がとどめとなったのか、断末魔をあげ消滅していった。
大樹を倒し、つむぎのレベルは1つ上がり14レベルになる。
「やったぁ! ボス討伐!」
つむぎは咲夜に笑顔を向けてハイタッチを要求した。
「うん、がんばったね」
咲夜は微笑み、優しくハイタッチをする。
「それじゃあ泉の水をくもうか」
「うん!」
つむぎは瓶をとりだし泉の水を汲む。
水は冷たく、触れているだけで体力が回復しているようにも思えた。そう思えるくらい気持ちいい。
瓶一杯に水を汲んだあと蓋をして咲夜のところに向かう。
これでクエスト達成だ。
「よし、これで王都に帰れば────」
そのときだった。
空からなにかが現れ大きな影を作った。
「な、なに……これ!?」
つむぎは目を丸くした。咲夜も言葉を放たずただ呆然とその影、モンスターをみて驚いていた。
全長10メートル以上ある大きな翼、牙、爪をもつ紫のドラゴンだ。
モンスターのステータスを見る。
モンスター名:アルティメットドラゴン
レベル:500
「レベル500!? これもイベントなの!?」
「いや、もしかしたら偶然ここに現れたのかもしれない……生息する地域を離れてレベルの高いモンスターが低レベルの場所に来ることはそう珍しい話じゃないんだ」
咲夜は冷静に説明をする。
この世界のモンスターもまた生きているのだ。
システムに縛られた行動をするとは限らない。つまりこのイベントは偶然起きた不運。
つまり……
「これって詰みじゃ……」
つむぎは声を震えさせた。
刹那、ドラゴンは咆哮を上げる。
その咆哮は耳が痛くなりそうなくらい大きくて耳をふさいだ。
未だに空を支配するアルティメットドラゴン。
このまま逃げられるか? いや無理だろう。
あまりにもステータスが違いすぎる。
ここで負けてもアイテムは獲得したことになるだろうか。未獲得と判定されてまたここにくるのは大変だ。もし来てもまだこのドラゴンがいたら意味がない。
これで終わりか……そう思ったとき。
「鳴れ……シュヴァルトブリッツ!」
一つの声がした。
その一瞬、ドラゴンに黒い大きな剣が複数突き刺さっていた。
正確には剣ではない。剣の形をした稲妻のようなものだ。
グオーーーーー
ドラゴンは悲鳴をあげる、そしてそのままぐったりとして地面へと倒れようとした時消滅していった。
「いったい何が怒ったの……」
「わからない……」
二人は唖然とした。なにが起こったのかまったくわかっていない。
「大丈夫か……のだ」
一つの声が空からする。さきほど聞こえた声だ。よく聞くと女の子の声だった。
その方には人影があった。
人影というには独特なシルエット。ドラゴンのような尻尾、背中に悪魔の、腰に天使の翼が生えた、角をもつ謎の少女だ。
「あなたは……」
つむぎは問う。するとその少女は赤いマントを広げた。
「シッシッシッ……我が名はミーシェル! 天魔竜族の末裔なり! ……ってつむぎ!?」
ミーシェルと名乗った少女は自慢げに自己紹介をしたが、つむぎをみると驚いた表情をしていた。
「ミーシェル!? たしかアンリミテッドファンタジアでトップランカーとして噂されてたあの!?」
「有名人なの咲夜ちゃん?」
「Unreallyでは地味に有名だね。でも本人は撮影NGだからDreamtubeには出たことないし、Unreallyやってない人には知られてないよ」
「そういうこと……なのだ。貴様ら今日″は″配信や撮影してないだろうな?」
空から地面へと降りてきたミーシェルが言った?
まるでつむぎたちを知っているようなそぶりだ。
「うん、今日はただ遊びにきただけだから大丈夫だよ?」
「そっか、ならよかった……のだ。ここらへんにアルティメットドラゴンが現れたって聞いて来てみればまさかこんなことになるとはな。思いもよらない……のだ」
ミーシェルは口元に指を当てながら考え事をしていた。
つむぎはなにかが引っ掛かっていた。
ミーシェルという名前に、何故か見覚えがあった。いつだか知らないがUnreallyでだ。
そしてこの声、とても馴染み深い声のように思った。
ミーシェルという名前。馴染み深い声。
これまでの記憶。
そしてつむぎを見たときに驚いてた表情。
それらすべてを重ね合わせる。
「あっ!?」
つむぎは何かがわかったかのように叫んだ。
その声にミーシェルはびくっと驚いていた。
「も、もしかしてひなたちゃん?」




