もっと非現実的な日常を
7月。
期末テストが終わり、もうすぐ夏休み。Unreallyで過ごす時間が増えたつむぎ。
今は自分の家で咲夜とのんびり過ごしている。 部屋は最初の頃はだいぶ質素だったが、こっちの世界のお金を貯め、テレビや絨毯、ソファを購入しそれなりにいい感じの部屋ができつつある。
二人はソファーに座りテレビで動画を見ていた。
◆スカイダイビングしてみた! │もふもふあにまるず
「良い子のみんなー元気にしてるか! もふもふあにまるずリーダーのウルだ!」
「スゥでーすよー」
「シマリけん」
お馴染みの挨拶から開始されるもふあにの動画。三人はヘリの中に乗っていた。
「今回はスカイダイビングばするばい!」
「今度は落ちるのか……嫌な予感がするぞ」
前の動画でウルは月まで大砲で飛ばされている。それを思い出したのか嫌そうな顔をしていた。
「大丈夫でーすよー。今回は私たちも一緒に落ちますのでー」
「ほんとうか? 本当だなっ!?」
「心配しなくても大丈夫ばい。一人にしないとよ」
「ならいいぜ! どんな条件でもばっちこーい」
いつもの元気を取り戻すウル。左手で右手の拳を受け止め調子良さそうに言った。
「今回のスカイダイビングは高度10kmからのダイビングでーすよー」
ヘリのドアが開く。下には雲が雪のように地を覆っていた。
「うぅ……ちょっと怖かと……」
「ふふん! こんくらいあたいにしてみればちょろいぜっ!」
尻尾をしならせているシマリとは裏腹に元気に声を出すウル。
「準備はいいでーすかー? それではちゃんとパr───」
「それじゃあたいが先に突撃だぁーー!」
「あ、ちょっと!?」
スゥの言うことを最後まで聞かず、一番乗りに空へと落下するウル。
カメラはそのウルの落下していく姿を追っていく。
「うおおおおおおお!」
顔や髪が荒ぶりすごいことになりながらもウルは前回ので慣れたのか、少し楽しそうにしているようにも感じる。
「意外といいもんだなこれ!」
「あのーおおかみさん……?」
遅れてやってきて、画面に映るスゥとシマリ。
二人はゴーグルをしていた。スゥはなぜから前髪越しからゴーグルをしていて相変わらず目が見えない。
それでほんとうに見えているのだろうか。
シマリはきゃあぁと叫んでいた。
雲を突き進み、地上が見えてくる。
「なんだよスゥ! 今さら怖じ気づいたか!?」
「いやーそのでーすねー……大変申しにくいのですけど……パラシュート、つけてますか?」
「へっ?」
その瞬間、ウルの表情は凍りつく。
よく見るとシマリとスゥはパラシュートを背負っていた。
だがしかしウルの背中には───
「それ先に言えよおおおおお!!!」
パラシュートはついてなかった。
スゥとシマリはしばらくしてパラシュートを開き、落ちる速度は遅くなっていた。
ウルはそのまま変わらずの速度で落下していく。
「ぐおおおおおおお!」
半泣きになりながら、ウルは叫ぶ。
もの凄い勢いでウルは隕石が落下するかのように砂浜に追突した。ウルは顔を砂浜に埋める。
「おおかみさん大丈夫でーすかー?」
しばらくした後、パラシュートで着地したスゥとシマリはウルの方へと駆けつけていった。
ウルは顔を引っ張るように両手に力を入れていた。
「ぶはっ!! 大丈夫なわけあるか!! アンリアルじゃなきゃ死んでたぞ!!」
「ちゃんと最後まで聞かないでパラシュートを使わなかったウルが悪かばい……」
砂だらけの顔を大きく振り払うウル。
それを呆れたような顔でウルを見るシマリ。
「みなさんはスカイダイビングをするときはちゃんとパラシュートを使って安全にやりましょーねー」
「いやそれあたりまえやけん!」
スゥが手を振って動画は終了した。
◇
「あはは、ウルちゃんほんと面白いよね!」
「うん、そうだね」
つむぎは笑顔で隣に座る咲夜に言う。
それに口を緩めて返す咲夜。
「わたしもああいう面白い企画したいなぁ」
「具体的にどんな感じのやつ?」
「うーんとねっ、もっと日常的じゃない非現実的な。ファンタジーっぽいかんじのなんか!」
つむぎは言う。
今までにないような動画が撮りたいとつむぎは思っていた。
スイーツプラネットの時のような楽しいことをやってみたい。
「それなら実際に剣や魔法があるファンタジーの世界に行く?」
「出来るの!?」
咲夜の提案に目を光らすつむぎ。
「うん、行けるよ。Unreally屈指の人気VRゲーム ″アンリミテッドファンタジア″ に」




