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不幸なメンヘラアンドロイド

「いやー鳥にいじめられててここまでくるのにたいへんだったよー。ふんふん」


 

 空で飛行している少女は言いながら広場に降りてきた。


 手の平や足からはガスバナーのように青い火が噴出しており降りるにつれてその威力は弱まっていった。



「ウチは試作品ナンバー000、零式。みんな気軽にしきって呼んでー!」



 少女はみんなに大きく手を振ってそう叫んだ。金髪で金色の瞳をした少女だ。目元には金色に光る縦線が入っている。


 胸元の中心には青くて丸い、水晶のようなものが埋め込まれていた。



「あ、あれ……お、おかしいな。み、みんなー?」



 みんなぽかーんと口を開き沈黙していた。

 状況は入学式のクラスの自己紹介で広大に滑る人のようだった。実際は突然空から現れてきたしきと名乗る少女に皆驚きを隠せなかった。

 

 アンリアルだから不可能ではないが、あんまり見ない光景だ。



「な、なんか失敗しちゃった……? あぁ……やっぱりウチなんかと仲良くしてくれる人なんていないよね。遅刻してきたし根暗だし不幸だし……」



 しょんぼりと顔を下にするしきは、ぼそぼそとネガティブな呟きをしはじめた。


 ますます空気が重くなる。


 この気まずい状況、誰が変えてくれるか──



「しきちゃんっていうんだねっ! ねぇ、さっきの飛行ってどうやったの!?」



 つむぎが目を輝かせ、しきの前に来て言った。

 つむぎは気まずい雰囲気よりも好奇心が勝り、話しかけていた。

 

 するとしきはしょんぼりした顔から明るくなっていく。



「ウチのボディ気になるなる!? ふんふん! ウチは高性能なアンドロイド! その高性能なパワァァで、飛行できるの!」


「やっぱりアンドロイドなんだね! かっこいい!! わたしつむぎっていうの、よろしくね!」

「よろしくつむぎー!」


 二人はいつの間にか握手をして仲良くなっていた。



「うんうん、無事仲良くなれたみたいだね!」



 これまでの様子を見守り黙っていたこころが喋りだした。



「交流会は途中参加もOKだから遅刻しても大丈夫だよ! せっかくだし次はしきちゃんの動画を流すね」



 そうしてディスプレイはしきの動画を映し出す。



◆気ままにドライブ!!【安全運転】│零式.しきちゃんねる


 

「はいはーい! 試作品ナンバー000、零式。しきちゃんだぞ! 今日はウチの好きなドライブでみんなにサイバー素敵な風景を届けるんだぁ。ふんふん!」



 住宅街をバイクで走るしきが映っている。

 白と黄色でデザインされたバイクだった。



「バイクって気持ちいいんだよ。風が心地いいの。ウチ、前から車載動画とかキャンプ動画とか見てそういうの好きなんだー」



 走りながら楽しそうにしきは歌い始める。



「るるんららるん~るるんららるん~」


 

 女の子がバイクでドライブをしている光景。これはほのぼのとしてていいものだ。



 

 そう思っていたが……



『アホーアホー』


「げえぇ!? カラス!?」



 自体は一変した。10羽以上のカラスがしきのところに集まってきた。



「ちょっやめっ! いたっ! あばっ!」



 アホーアホーと言いながらしきをつつくカラスたち。

 それに涙目になりながら運転を維持しようとするしき。



「このままじゃぶつかるーーー!!」



 ハンドルを操作することもブレーキをかけることも、カラスたちの妨害でできずバイクはそのまま住宅街の壁に追突する。

 アンリアルの壁は壊れず、変わりにしきの顔が思いっきり壁に衝突した。


 追突するまえにカラスたちは図ったかのように去っていた。



「うぅ……今回もだめだったよぉ」



 ほぼ半泣きのしき。衝突した顔面は真っ赤になっていた。

 バイクは倒れ、黒い煙を上げている。


 するとしきは壁に寄り添い。体育座りをした。



「はぁ……やっぱウチは不幸なんだ……ガチャ課金したのに爆死したし、テストは赤点だし、せっかくのバイクがまた故障だし鳥には散々いじめられるし……だれもウチを愛さない」



 ボソボソと呪いでも唱えているかのように言うしきは目が死んでいた。

 演出なのかまわりが負のオーラで漂っている。



 そして彼女は言う。



「もういいや……自爆しよ」



 真ん中のコアのような水晶が光輝く。


 刹那───



 ドカーーーーーン!!


 

 しきは爆発し動画にはご視聴ありがとうございましたと書いてあり終了する。




「なんで爆発したの!?」



 つむぎはしきに問う。



「え、だってウチロボット、アンドロイドだし自爆くらい普通にできるし……」


「そうじゃなくてなんで自爆する意味があったの!?」


「いやだって爆発すると気持ちいいでしょ?」


「爆発経験前提で言われても……」



 言葉のキャッチコピーができてなかった。



「ウチ、一度気分が落ち込むと、とことんネガティブになって爆発するとその感情も爆発してすっきりすんだ」


「そ、そうなんだ。ロボットってことはビームとかも出せるの?」


「そんなことしないよ! ウチの博士が作るマシンは環境に優しい、攻撃目的のものは作らないんだぞっ」


「自爆はするのに!?」



 それはいいのかとツッコミたくなるつむぎ。



「つむぎ、よく初対面の人とあんなに話せるね……」


「ほんとよ……いきなりあのテンションで来られたときはびっくりしたわ」



 ねねこと咲夜はひそひそと会話をしていた。

 つむぎの興味あるものへの行動力は凄い。


 それは二人とも実感している。



「あっ咲夜ちゃん、ねねこちゃん、二人もこっちにおいでよ!」


「えっ……?」

「にゃっ!?」


 

 影で見ていた二人はつむぎの発言に戸惑う。



「紹介するね! 咲夜ちゃんとねねこちゃん、わたしの友達なんだぁ」


「と、友達になった覚えないわよっ!」


 

 しきに紹介するつむぎ。それを恥ずかしそうに否定するねねこ。やれやれといった表情で目をそらす咲夜。



「よろしくねねこー、咲夜ー!」



 笑顔で二人に声をかけるしき。



「よろしく……」


「ふ、ふんっ……よ、よろしく」


 

 テンションが高いしきとは気が合わなそうな二人だった。


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