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友達なんていらない

 黒葛さやは小さい頃から一人っきりだった。

 昔から目付きが悪く、また会話が苦手で、それがまわりを寄せ付けず小学校では孤立していた。



 そんな彼女に両親はせめてやりたいことを好きにやらせてあげようと思い、音楽が好きだったさやにピアノ教室を通わせる。



 音楽はさやにとって生きがいだった。

 さやの生活の励みとなって、演奏をしていると生きていると実感できる。


 音楽の才能があるさやはそれから次々に実力を発揮し、たくさんのピアノのコンクール賞を受賞した。


 だがそんなピアノ教室でもさやはその実力や雰囲気から周りから近寄りがたい存在となっていて、友達がほとんどできなかった。



 ただ一人を除いて。



「さやちゃんのピアノすごいね。私もさやちゃんみたいになりたいなぁ」



 それは霧谷かすみと言う少女だった。

 その少女は気さくでさやにも話しかけてくれた。

 


「さやちゃんはどうしてピアノをはじめたの?」


「音楽が、好きだから……」


「そうなんだぁ」



 目付きが悪く話が苦手なさやにも少女は嫌な顔せず話しかけてくれた。



 そんな少女にさやは心を開いていき、仲良くなっていった。




「この曲聞いて……」



 一つの曲をさやは演奏する。

 


「すごい! なにこの曲? 私教わったことも聞いたこともないよ!」


「これ私が作ったオリジナルだから……知らなくて当然だよ」


「さやちゃん作曲できるの!? すごい! すごいよ!」


「そうかな」



 少し照れながらさやは頬をかく。

 自分が作って演奏した曲を誰かに誉められるのは嬉しい。



 それから一緒に歌を歌って演奏したり、ピアノ教室の帰り道に一緒に遊んだりもした。


 そうしてさやはいつしか彼女のことを″友達″だと思うようになった。

 

 






 だがそんな日々は長くは続かなかった。



「もうさ、私に話しかけないで」

 

 ある日、突然のことだった。

 少女の態度は一変した。

 

 今まで優しく話しかけてくれた彼女がそう言ったのだ。


 さやは信じられなかった。



「どうしてっ!? 私達、友達じゃ……」


「友達……?」



 少女はさやを見て首を振る。



「私達は友達じゃないよ。私達はもう、馴れ合うべきじゃないんだよ」



 そう言って彼女は立ち去る。



 しばらくしてさやは今住んでいる場所に引っ越した。

 その都合でさやはピアノ教室をやめ音楽は独学でやるようになる。


 以降、少女とは会うことはなかった。






 ◇



「それから私は、なにもかもが嫌になって、人と関わるのを嫌ったんだ。たとえ相手が話しかけてくれても。誰とも関わらないのが一番幸せだと思ったんだ」


 咲夜は一通り話をした。


 つむぎはそれを聞いてて辛くなった。


 どれほど残酷な話だろうか。

 ずっと一人でいて、やっと出来た友達だと思ってた人間に裏切られる。

 

 それほどつらいものはない。そんな体験、耐えられない。


 彼女が孤立しようとする気持ちもわかる。


 だけど……


「でもUnreallyの咲夜ちゃんは私に付き合ってくれてるよね? どうしてなの?」


 それが疑問だった。

 一人と関わろうとしない人間が、ここまで自分と仲良くしてくれるだろうか。


 咲夜は自らつむぎにフレンド申請をしてくれたのだ。



「それはUnreallyに出会ってUnreallyの中では前向きにいられるって思ったからだよ」


「前向きに?」


「リアルの私は黒葛さや。鞘にこもった本来の自分を出せない状態。でもUnreallyでは小太刀咲夜。本来の自分を剥き出しにできる。

 一から生まれ変わった咲夜は、会話が苦手なさやとちがって、本当の気持ちが素直に言える。 

 だからUnreallyでつむぎとフレンドになろうと思えた。それにリアルで会っても、もしかしたら大丈夫かもしれないって思ってしまった」



 長い話を一旦区切るように咲夜は息を整える。



「でも実際に会ったらつむぎはわたしのリアルを知っている。心を剥き出しにしてる私だけじゃなくて、心を閉ざしてる私のことも。それで友達になろうって言われて……無理って思ったんだ。また裏切られる、そう脳内によぎってしまって……」



 咲夜はその後、苦笑いをした。



「これで私の話はおしまい。ごめんね、こんな長い話しちゃって。もうリアルのことは忘れてこれからはUnreallyだけでフレンドでいよう。そうすれば私はつむぎを……信じていることができる」



 咲夜は苦笑いを普通の微笑みに変えようとしてきた。


 だがその微笑みはひきつっていて、無理してるように見える。



 咲夜はどうしてもリアルで関わることを嫌っていた。

 Unreallyでは心を開いても、リアルでは心を開かない。



 彼女とはUnreallyだけの関係でいるのが、一番なのかもしれない。


「嫌だよ!」


 だが、つむぎは叫んだ。

 咲夜の会話を聞いていて、つむぎの中では込み上げてくるものがあった。


 手はぎゅっと強く握っていて感覚がおかしくなりそうだ。それは怒りに近い何かだった。



「なんで諦めちゃうの! 黒葛さんのことを知ってたらリアルじゃ友達になれないの!?」


「つむぎ……」



 はじめてみたつむぎのその表情に咲夜は驚いている。


 つむぎ自身もこんな怒りに、満ち溢れた気持ちになったことはない。

 

 でも許せなかった。このままの関係でいることに。


 あんなことを聞くと余計にそう思った。


「今は黒葛さんと話がしたい。だからリアルで会って! 姫乃公園であの時と同じ場所で待ってるから!」



 そう告げるとつむぎはUnreallyをログアウトする。

 

 ヘッドギアを取り外したつむぎは外出の準備をし、公園へと向かった。



 彼女が来てくれるのを信じて。


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