表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/156

殻にこもった少女

「…………」

「…………」


 気まずい沈黙が続く。

 ここまで気まずい沈黙は今まで一度も体験したことがない。

 だがこのままずっとこうしているわけにもいかないのも事実。

 

 つむぎは意を決し口を開く。


「ま、まさか黒葛さんが咲夜ちゃんだったなんてね。思いもしなかったよー。あはは……」

「……」


 苦笑いするつむぎ。沈黙を続ける咲夜。

 いや、今はさやという方が正しいだろう。

 

 誰が信じるだろうか。

 ネットで知り合った友人が、同じ学校で同じクラスで隣の席の子だなんて。


 咲夜に抱いてた印象とさやに抱いてた印象は全く違くて、噛み合わない。


 でもこれはチャンスかもしれない……


 頑張れ自分、頑張れ自分と


 心の中で何度も呟き会話を続けた。



「こ、これもなんかの運命だね、黒葛さん。これを気にさ、わたしたちリアルでも″友達″になって仲良くし「それは無理っ!!」



 今まで聞いたことのない声の大きさでさやは叫んだ。


 友達と言った瞬間


 彼女はつむぎを左目の鋭い目付きで睨んだ。


 とても恐ろしい表情と声だった。


 これが咲夜と同一人物なんて信じられない。



 しばらくまた沈黙が続く……



「……帰る」


「待って!? 黒葛さん!?」



 さやはつむぎに背を向けて歩きだし、つむぎはさやを呼び止めようと追いかける。


 さやはその声で止まる。



「リアルの私とは……関わらないで……」



 最後の警告とでも告げるように、それだけを言いさやはまた歩き始めた。


 つむぎはそれを追いかけることが出来なかった。



 ◇



 次の朝のHR前。



「おはよーつむぎー」

「お、おはようひなたちゃん」



 ひなたが挨拶をしに来た。太陽のように明るく元気なひなた。


 それとは真逆に今のつむぎの表情には明るさがない。



「どうしたの……? なんか元気ないねぇ……」


「ちょ、ちょっとね……」



 ひなたも様子に気がついたようでつむぎの顔を覗き込む。


 昨日の件でつむぎは元気を無くしていた。まさかあんなことになるとは思いもよらなかったからだ。



「あ、黒葛さんおっはよー」


「……」



 さやがクラスへとやってきた。

 挨拶をするひなただが、さやの返事は当たり前のようにない。


 さやはすぐ席に座りヘッドホンをし、窓の方へ顔を向けた。



「相変わらずスルーされちゃった。悲しいのぅ」


「そ、そうだね」



 ひなたは持ち前の明るさで、誰にでも挨拶をすることができる。


 つむぎには勿論、さやと挨拶をする勇気も気力もない。


 もやもやした気持ちのまま授業を受けていった。




 放課後。


 いつものようにUnreallyに入るつむぎ。

 フレンド欄を確認するが、今日は咲夜がログインすることはなかった。

 いや今日もと言った方が正しい。


 昨日の件があっても夕方Unreallyに入ったが咲夜はログインして来なかった。

 フレンド状況を確認しても小太刀咲夜さんは1日以上ログインしていませんと表示されている。


 それからも数日咲夜がログインすることはなかった。



 いつもつむぎに優しく付き合ってくれる咲夜。

 しかし咲夜がさやとわかってから気まずくなってしまった。



 来なくなっても仕方ない。


 

 会ってしまったことがいけなかったのだろうか。


 もし、会わずに知らないままでいたら幸せなのだろうか。


 そう思ってしまう。



 だがつむぎは彼女を待ち続けた。

 


 彼女は言ったのだ。

 彼女の言葉を信じたいのだ。

 つむぎは一つの言葉を思い出す。




 ″リアルの私とは″……かかわらないで……




 彼女が関わりを拒んだのはリアルだ。

 さやとしての関わりは拒んでも

 咲夜としての関わりは拒んでいない。

 

 つまり可能性はまだある。


 そうつむぎは信じていた。





 日曜日。


 午後四時につむぎは自分の家でずっと考え事をしていた。


 アンリアルドリーマーとしての活動についてだ。


 ここ数日、一切Uドリーマーとしての活動が出来てない。

 咲夜のことで手がつかないからだ。

 

 このままではいけない。 


 咲夜も大事だが今の自分には応援してくれるファンがいる。



 ″私が君の、つむぎの一番最初のファンになってあげる″



 しかしそれでも……

 一番最初にファンになってくれた咲夜のことを

 考えられずにはいられない。



「はぁ……」



 つむぎはフレンド欄を見る。Unreallyで出会って仲良くなったフレンドが表示される。


 Unreallyでは引っ込み思案な性格があまり発動せず。自然と自分から会話が出来ていた。


 するとログインしているフレンドの一覧の中に、咲夜の名前があった。


「……っ!」


 つむぎはそれをみて、咲夜のいる場所にワープゲートを繋げた。


 そこは人気のない見知った駅前。ギターの音が響いている。


 咲夜のオリジナル曲だ。

 歌う声はせずギターの演奏だけが鳴り響く。


 だがそれでもいい。


 この曲を弾けるのはただ一人しかいないから。

 そしてその人物はつむぎを見ると演奏するのを止めた。



「咲夜ちゃん……」


「つむぎ……」



 咲夜は寂しげに返事をするように言う。



「こっちでは久しぶり……だね」


「そうだね……」



 会話はどうにかできる。

 だが思うように喋ることは出来ない。

 


「その……さ。あっちではごめんね……」



 辿々しく咲夜は謝ってきた。



「まさかつむぎが同じクラスの人だとは思わなくて。嫌な思い出がフラッシュバックして逃げる形になっちゃったんだ」



 思ったより自然に咲夜は事情を話してくれた。



「わたしの方こそごめんね。何か気に触ることに触れたみたいで」



 つむぎも謝る。

 自分の言葉選びが悪かったのだとあの時睨まれてわかっていた。


 だからこそ聞きたいことがあった。



「そのさ……聞いてもいい? どうして咲夜ちゃんはリアルだと誰とも関わろうとしないの? 過去に……いったいなにがあったの?」



 咲夜が、さやが関わらない理由にはきっと過去が関係しているはずだ。

 誰もが無条件に、あそこまで、人と関わるのを嫌うはずがない。

 


 咲夜は少しの間の後、深く呼吸をする。



「わかったよ。教えてあげる。どうして私がそこまでリアルで関わるのを嫌ってるのか」



 そうして咲夜は自分の過去を語り始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ