つむぎ、家を建てる
◆Unreallyで自分の家を持ちました! │麗白つむぎ
「こんにちは! アンリアルドリーマーの麗白つむぎです!」
「同じく咲夜だよ」
咲夜の家の隣の空き地にいたつむぎと咲夜は突如動画を撮影していた。
来る道中、つむぎがどうせなら家を買うところを動画にしようと思い付いたのがはじまりだ。
咲夜はそれに快く付き合ってくれた。
「今日はね、動画タイトルにもあるように家を買うことにしたんだ! しかも咲夜ちゃんの家お隣の場所なの!」
目をきらびやかにしたつむぎは、咲夜の方をちらりとみながら言う。
「私がつむぎにこの場所を提案したんだ。ちなみに私の家はこんな感じだよ」
カメラが右方向に向けられる。
そこには咲夜の黒い外壁のおしゃれな家がそびえ立っている。
「すごい素敵なお家だよね! わたしもこんなお家が欲しくて買おうと思ったの。それで咲夜ちゃん、家ってどうやって買えばいいの?」
「空き地の看板があるよね。 そこを指でつついてみて」
画面は咲夜とつむぎの二人が居る場所に戻り、二人の後ろにある空き地と書いてある看板をアップにする。
「うん、とりあえずやってみるよ」
つむぎは言われた通り看板に触れる。
すると項目が出てきた。
土地を購入して家を建てますか?
住居を建てる 100000ユノ
店を建てる 300000ユノ
「二つ項目が出てきたよ? 住居の方でいいのかな?」
「うん、そのままはいを押して」
言われるがままつむぎははいを押した。
ご購入ありがとうございました!
この後は建築アドバイザーの指示に従って
自分だけの素敵な家を建ててください!
そんな文字が現れ
少しした後、システム画面が消えた。
それと同時に空き地と書いてあった看板も消え、そこから光がきらきらと光りだした。
次第にそれは人の形へとなっていき、光が消えて、その正体があらわになる。
「あなたの心は何色? 今日は建築アドバイザーの七色こころです!」
「こころちゃん!?」
そこに現れたのは世界一のアンリアルドリーマー、七色こころだった。
なぜかピンクのメガネをかけていてくいっとさせるポーズをしている。
思いがけない展開につむぎは唖然とした。
「どうしてこころちゃんがここに?」
「わたしはUnreallyでの困ったときのアドバイザーも担当しているのです! つむぎちゃん久しぶり! 咲夜ちゃんも」
えっへんと言うこころは笑顔で久しぶりと言った後、咲夜の方をみて手を振る。
咲夜はこくりとだけ頷く。
「久しぶり~って咲夜ちゃんもこころちゃんに会ったことあるの?」
「うん、何度かね。むしろUnreallyをやってたら会ったことない事の方が珍しいんじゃないかな。結構いろんなところにいるよ」
特になんともないような表情で咲夜は言う。
初日にこころに出会えた自分は奇跡だと思っていたつむぎだが、そこまで珍しくないという事実を知る。
「わたしはUnreallyのネット上の至るところにいるのです。そういえばつむぎちゃんもアンリアルドリーマーになったんだね。動画見たよ」
「えっ!? こころちゃんがわたしの動画を!?」
「わたしの後輩にあたるすべてのアンリアルドリーマーの動画は全部チェックしてるよ」
「へぇ、さすがスーパーAI!」
Unreallyではじめて出会ったときも驚いたがやはりこころのすごさは異常なまでだった。
後輩にあたるアンリアルドリーマーもなにもこころこそがアンリアルドリーマーの元祖だ。
つまりこころは世界中、すべてのアンリアルドリーマーの動画をチェックしていることになる。
その視聴時間は人間で加算すれば、人生の何回分にあたるのか想像もつかない。
「とくにわたしが好きな動画はマテリアライズペンを使った動画かな! うまくいかなくてあたふたしてたつむぎちゃん可愛かったよ!」
「あぅ、あれは恥ずかしいよ……」
マテリアライズペンはお菓子の妖精にもらった特別なアイテムだ。
描いたものを一定時間オブジェクト化しアイテムにすることができる使い方によっては便利なアイテム。
……のはずだったがドーナツを描いてみたら
タイヤや浮き輪、フラフープが出来てなかなか上手くいかなかった。
何度か挑戦し繊細にドーナツらしく描くことでようやく、ドーナツが出来て食べられた。
具体的さがないと欲しいアイテムにならないことを知り、都合のいいアイテムでないことを知った。
「それじゃあ本題の建築についてだね。建築はあらかじめこちらが用意した建物からすきなのを選べるよ。お金はさっき払ったので充分だから自由に選んでね」
そう言ってこころは液晶パネルを取りだし、つむぎに渡す。
液晶パネルには様々な家の建造物の画像がある。
「つむぎちゃん試しに一つ、画像選択してみてよ」
「うん?」
よくわからないまま、つむぎは一つの家の画像を選択する。
すると画像はシュン! と前方に飛んでいく。
それだけで空き地だった土地に選択した画像の家が建った。
「一瞬で家が!?」
「これはまだホログラム。建築された時の想定される外見や大きさを見るのに使うんだよ」
よくみると建物は立体的だがほんのり透明感がある。
「こうやって試しにホログラムを建ててみていい感じのを選ぶといいよ」
◇
「う~ん……」
「つむぎちゃんどう? いいのは見つかった?」
かれこれ20分つむぎはいろんな建物を見てきた。
試しにホログラムを出したりもしてみた。
ホログラムにした家は素敵な家ばかりだった。
これでもいいそう思うものは何個もあった。
だが……
「なにか惜しいんだよねぇ……あっちにはあっちの、こっちにはこっちのよさがあって。素敵だけど、でも理想の家とはなんか違うなぁって」
つむぎはそれで悩んでいた。
理想の家を建てる。それが願いだった。
だからこそ理想を追い求めてどれも完全には満足できなかった。
「そういえば……」
するとずっとつむぎが建造物を選ぶのを待っていた咲夜が話に入ってきた。
「カスタムデザイン建築ってできるんじゃないっけ?」
「うん、もちろんできるよ!」
咲夜の問いに答えるこころ。
「カスタムデザイン建築って何?」
きょとんと首をかしげるつむぎ。
「説明しよう! カスタムデザイン建築とは好きな材質、形、色を選んで、建物の外装を自由に組み合わせて作ることができる建築だよ! 敷地内ならイラストで細部も自由に作ることもできるんだ。でも一から作ることになるからちょっとすすめるのはためらってたけどつむぎちゃんなら大丈夫かな?」
苦笑いをするこころ。
はじめからいろいろ用意されてる建造物を選ぶか一から自分でつくって見るか、つむぎは案外早くその答えが出た。
「わたしカスタムデザイン建築やってみたい!」
理想の家を建てるなら自分で一から作るのが一番理想的だ。
その答えにつむぎは至った。
家の建築なら一度、お菓子の国でやっている。
「よし、それじゃあカスタムデザイン建築やって見よー」
そう言って机と椅子、タッチペンが用意されつむぎはそこへ座る。
「液晶パネルでデザインとカスタマイズをするからこれを使ってね」
さっきまで使ってた液晶パネルはカスタマイズモードに変わっており
いろいろな建物の骨格や扉の種類などが選べるようになっていた。
デザインモードでは細部のオブジェクトの作成や、部分ごとの建物の色のや模様の変更が出来たりした。
どんな建物にしようかは、さっきまで見ていた建物を参考にいいところを集めて理想的なのが出来ている。
つむぎは黙々とデザインをしていった。
◇
「それでは完成しました! ごめんね咲夜ちゃん長い間待たせちゃって」
「私は別にいいよ、つむぎの頑張ってる姿嫌いじゃないし」
咲夜に謝るつむぎ。
かれこれ完成までに一時間も掛かっていた。
しかしとてもいいものができたとつむぎは自信があった。
「それじゃあこころちゃん、完成したデザインをさっそく建築して!」
「はーい! それじゃあレッツ建築建築!」
その言葉と同時にパチンと指を鳴らすこころ。
すると空き地は下の方から次第に光輝き建物を形成していく。
その時間はホログラムよりは長くしかしたったの10秒くらいで、建造物が出来上がった。
「これがつむぎの家……」
咲夜はぽつりと呟いた。
その家は咲夜とは対照的な白い二階建て建築の家だった。
「咲夜ちゃんどうかなわたしの家?」
「凄くいいと思うよ……なんていうかつむぎらしい」
「えへへ、そうかな?」
「わたしもつむぎちゃんらしい真っ白で綺麗な建物だと思うよ!」
二人が誉めてくれてなんか嬉しい。
「咲夜ちゃん!」
つむぎは咲夜をまじまじと見る。
「これからお隣さんとしてよろしくね」
手を差しのべるつむぎ。
それに咲夜は見開いてつむぎを見た。
だがそのあと優しく微笑み手を握る。
「うん、これからよろしく」
「それじゃあ家も完成したわけだし、わたしの家でパーティーしようよ! こころちゃんも一緒にどう?」
「わたしもいいの? それじゃあ遠慮なくお邪魔させてもらうねー」
そうやってつむぎたちの今回の撮影は終了した。
◇
『これからお隣さんとしてよろしくね』
『うん、よろしく』
再生されていた動画がそこで止まる。
つむぎと咲夜が握手をしているシーンで画面は止まっていた。
「麗白つむぎ……小太刀咲夜……これはなかなか侮れないわね」
その動画を見ていた一人の少女が、長い尻尾を振りながら呟いた。




