ことねとの出会い
それは約一年前。
つむぎが高校一年生になった入学式の日の出来事。
「うぅ……どうしよう」
自分のクラスの席についてたつむぎは不安だった。
幼なじみのひなたと一緒に姫乃女学園に入学したつむぎ。
しかしひなたとはクラスが違い離ればなれになってしまう。
つむぎは引っ込み思案な性格だ。
いつもひなたに引っ付いて動いていたため、はじめてクラスがバラバラになり、不安で仕方ない。
友達は出来るのだろうか?
浮いたりしないだろうか?
考えるだけで怖くなる。
「おはよう」
「あぅ~……これからどうしよう」
「おはよう」
「へっ?」
誰かがつむぎに対して挨拶をしてきた。
緑色の髪の少女が隣にいた。
「お、おはようございます……」
「おはよう。ことは保栖ことね。後ろの席だからよろしくね」
「は……はい」
せっかく話しかけてくれた
ことねという少女に
つむぎはだんまりを決めてしまった。
そんなつむぎの不安そうな顔を見て、ことねは優しそうな表情をして待ってくれてる。
とてもいい子そうだ。
後ろの席だし是非仲良くなって友達になりたい。
(ほんとはちゃんと話したいのに……うぅ……何か話題があれば)
話題を探そうとつむぎはまわりを見渡す。
するとことねのかばんについてるあるものに目が止まる。
「あっ! それライルー!」
ことねのかばんにはライルーのキーホルダーがついていた。
「ぷちモン知ってるの?」
少し驚いたことねはつむぎに尋ねる。
「うん、最新作はUnitchないから持ってないけど前作はやったしアニメも見てるよ!」
「そっか! 君は……えっとそう言えば名前はなんていうのかな?」
「あっ//」
自分が名乗ってないことを思い出したつむぎは
、さっきノリノリで話してたのに急に恥ずかしくなり、かぁ と顔が赤くなる。
「わたしは……双葉つむぎだよ。保栖さんよろしくね」
「ことの事はことねでいいよ。ことはつむぎのことつむって呼ぶから」
「そっか、じゃあことねちゃん、よろしくね!」
それが高校生になってはじめてできた友達。
ことねとの出会いだった。
◇
「高校生になってクラスに友達がいなくて不安だったとき、ぷちモンのライルーがきっかけで友達ができたんだ。今でもその子とは仲良しでよくぷちモンのアニメの話とかしたりしてるよ。だからわたしには思い出深い作品なんだぁ、ぷちモンは」
思い出に浸りながらつむぎは、戦闘画面のライルーを眺める。
「よーし、せっかくだからライルーではじめてのぷちモンゲットしちゃうぞー」
意志を固めたつむぎは、ライルーをゲットすることに決めた。
まずゲットするために、体力を減らす必要がある。
「いっけー、シーニャでアクアパンチ~」
シーニャが攻撃すると同時に右手拳を前に向けポーズを取り、アニメのように技名を呼ぶつむぎ。
実際に言うと恥ずかしさがあるが、本物のぷちモントレーナーになった気分が味わえた。
属性相性は良くないがレベル差でそれなりにダメージが通る。
次のターンでゲットしても大丈夫かもしれない。
すると次にライルーの攻撃ターンに入る。
ライルーのライジングスマッシュ!
「あわわわ!」
あたふたするつむぎ。
水属性には弱点の雷属性の技ライジングスマッシュがシーニャにあたる。
効果は抜群でシーニャの体力を半分以上奪った。
「危ない……このままじゃ負けちゃう! 回復したいけど繰り返しやられたらアイテムが尽きちゃうし……ここは一か八かカプセルボール!」
意を決したつむぎはアイテムからカプセルボールを選びライルー目掛けて投げる。
カプセルの中が開きライルーはその中へと引き込まれライルーを閉じ込める。
「お願い……捕まって!」
手を合わせ祈るつむぎ。
地面に落ちたカプセルボールは、ピコピコ真ん中が光りながら揺れる。
しばらくして揺れていたボールは動くのをやめ、ピコンという音がした。
「やったぁ! ライルーゲットできたぁ!」
捕まえた事を確認することができた。
無事、つむぎははじめて野生のぷちモンを捕まえられた。