そまりの文化祭
「では一年B組の文化祭は演劇をやります」
それは姫乃女学園のとあるクラス。一年B組の文化祭の出し物が決定したばかりの時だ。
「誰か脚本をやりたい方はいませんか?」
眼鏡をかけた学級委員長が言う。
すると一人の少女が立ち上がった。
「はい私が脚本をやります。オリジナルストーリーでやりたいです!」
「演劇部の雪ノ瀬さんですね。頼もしいです。それでは次回、配役を決めましょう」
そうして文化祭の出し物が決まりチャイムが鳴った。
「演劇か……」
クラスメイトが休み時間でばらけているなかで1年B組の生徒夕凪そまりは憂鬱だった。
演劇など自分には無縁だと彼女は思っていた。
彼女は極度のあがり症だ。
リアルでは人前でしゃべろうとすると噛みまくり照れて緊張してしまうことばかりだ。
そんな自分を直したいと思いつつもどうせ無理だと思いとりあえず演劇は裏方に回っておこうと心の中で決める。
そうして暇を潰すように猫の形をした消ゴムを撫でて遊んでいた。
「そまりちゃん!」
「ひゃっ、ひゃい!? ってせつちゃんか……」
いきなり声をかけられ驚き変な声が出るそまり。
振り向くとそこには先程演劇の脚本を担当すると言っていたそまりの友達、雪ノ瀬せつが立っていた。
「ごめんね驚かせちゃったかな? でもね!そまりちゃんに是非聞いてほしいことがあるの」
彼女はなぜか嬉しそうに楽しそうに言ってきた。
「そまりちゃん、演劇の主演やってみない?」
「え、えっ!? えっ!? あたしがっ!?」
そまりははじめせつの言ってたことが理解できなかった。
自分が演劇の主演?
つまり舞台に立つ
しかもメインで
理解できない。
「私、そまりちゃんがお姫様役のストーリーを考えてて是非そまりちゃんにやってほしいの」
「いいねそれ。僕もそまり姫が本当のお姫様になるところ見てみたい」
「まいかちゃんまで!?」
赤髪のボーイッシュな少女、火乃まいかが会話に入ってきて面白そうに言ってきた。
せつとまいかは二人とも演劇部でそまりが気楽に話すことができる友達だった。
「実はねもう脚本はあらかた作ってあるんだ。読んでみて考えてみて」
せつは持っていた一つのノートをそまりに差し出す。
そのノートには演劇シャルロットというその脚本のタイトルらしきものが書かれていた。
「う、うん……」
そまりは恐る恐る手に取り脚本を読むことにした。