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現実

 Uフェスの二日目が終わった後咲夜はつむぎを探していた。


 連絡しても一切つむぎは電話にでない。だがUnreallyにログインはしている状態だ。場所はフレンド欄からある程度確認することができる。


 そのつむぎがいると思わしき場から一番近くにあるワープポイントに転移し、くまなく探していく。


 するとつむぎは案外早く見つかった。

 その場所は一度だけ来たことのある場所だ。

 ひそかたちにそそのかされてつむぎが告白ドッキリをしかけてきた公園だ。

 

 その公園のブランコでただ一人ポツリとつむぎは地面から足を浮かせて下を見たまま暗い顔をしていた。



 咲夜の足音が聞こえたのかつむぎはこちらに顔を向ける。



「えへへ……コンテスト、最優秀賞どころか入選すらしなかったよ。きっと入選できるって自信があったのに……これが現実なんだね」


「つむぎ……」

 

 

 つむぎは笑っていた。しかしそれは心の底からの笑いではない。

 彼女の笑みはひきつっていた。無理をした笑顔だ。


 そして彼女の瞳からは次第に涙がポツリと落ちていく。

 一粒また一粒と涙の量は増えていく。



「なんでかな……なんで涙が出るのかな。ただのわたしの力不足なのに」



 彼女は泣いていてもまだ頬を無理矢理ひきつって笑っている。右手はぎゅっと力強く握られていた。



「…………」



 咲夜はつむぎの瞳から出る涙を右手の人差し指で拭く。

 そして優しい微笑みを見せて咲夜は言った。



「無理しないで……泣きたいなら泣いていいんだよ」


「咲夜ちゃん……」



 その言葉はつむぎを吹っ切れさせたかのように一つのスイッチを押されたかのように涙の量が増えていった。



「うっ……うわあぁぁぁぁん!」



 つむぎは立ち上がりそして咲夜に抱きついた。



「せっかくシマリちゃんが応援してくれてみんなが応援してくれてっ! なのに入選すらできなかった! みんなにちやほやされて勝手に浮かれて入選できると思っちゃって結果はこれ! ……馬鹿みたい」



 つむぎは思いのままずっと込み上げていた感情を咲夜にぶつける。

 咲夜はつむぎを優しく抱き締め頭を撫でた。



「私は不器用だから今のつむぎをどう励ませばいいかよくわからない。こうやって側にいてあげることしかできない」



 すると咲夜はつむぎを抱き締めるのをやめ距離を取る。そして真剣な目付きで言う。



「だから、明日私の歌を聞いて……私の伝えたい想いをぶつけた歌を」


 

 それが咲夜のできる咲夜なりの励ましかただ。


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