みんなで一緒に
「これよりUnreally方式雪合戦をはじめるよ!」
つむぎが指揮をとるようにカメラに向かって説明をする。
二手に陣営はすでにくじ引きで別れておりそれぞれが準備の体勢に入っていた。
雪の壁があり、そこに隠れている者もいる。
「ルールは体に雪が当たったら退場。なお相手に攻撃する手段は雪に限定されるけど雪の使い方、防御方法はなんでもありだよ。Unreallyらしくアンリアルにいこうね」
つむぎが簡単に説明を終了した。
それでは陣営をみていこう。
Aチームがつむぎ、ミーシェル、ねねこ、エレオノーラの四人。
Bチームが咲夜、しき、ひそか三人チームだ。
人数的にはAチームが有利だがいったいどうなるか。
「それでは用意スタート!」
つむぎの合図で試合が開始される。
「くらえ今回のために作った雪玉連射銃シキチャンマシンガン!」
するとBチームのしきは雪を銃の中に入れ雪玉を連射した。その速さと数はすさまじく普通に回避するのは難しく感じた。
「させないでありんす!」
前線にいたAチームのエレオノーラがなんと刀を手に取り雪玉を高速で全部切り力を失わせていく。
「ちょっ! これ全部切るとか正気!?」
思わずしきも驚きを隠せない。
その人間業を越えた剣さばきは凄まじかった。
「ミーの力で終わらせる! シュヴァルトブリッツ!」
するとミーシェルは黒い雷を自在に操り人間サイズの大きな雪玉を作ってしきに向かって放った。
「ちょっ……ぐぇ」
大きな雪玉の雪崩に飲み込まれ姿が消えるしき。これでしきが退場した。
そう思ったが……
「なーんてね。それはひそかが作った幻さ」
Bチームのひそかが言う。
それはひそかの変化の能力だった。
自分の分身から他人のコピーまで任意のものを作ることができるひそかの能力だ。
「こっちが本命!」
なんと本物のしきは別の壁から上空に飛び雪玉銃を構えていた。そこからなら壁は関係なく誰でも狙える。
そのまましきは壁に隠れていたねねこに向かって雪玉の連射を放った。
「危ないのだ!」
「ミーシェルちゃん!?」
銃撃からねねこをかばったのはミーシェルだった。ミーシェルは翼を広げ上空でねねこへの攻撃をかばった。
そのせいで自分が退場することになってしまうが。
心配するねねこ。
「ふっ……まさかミーが一番最初に退場とはな。だがまぁいい……ミーの分まで頑張ってくれ」
翼を閉じるとさらばといった感じで場外へ退場していくミーシェル。
こうして三対三にへとなった。
こちらが戦力であるミーシェルを失うのはとてもおしい。
「かっこいいーなんで倒したウチよりかっこいい雰囲気だしてんの!?」
「人望とカリスマじゃあないかね」
ミーシェルのかっこいい最後に思わず羨ましがるしき。それを見てひそかはやれやれと思いながら肩をすくめた。
「あたしが仇を取るわ!」
するとねねこがミーシェルの仇を取らんとばかりに前に出てきた。
「ふんふん、ひ弱なねねこにウチを倒せる要素なんてないよーん」
前に出てきたねねこを見下すように言うしき。
だがねねこには秘策があった。
ねねこは上空を指差した。
「あ、あそこに鳥の大群が!」
「えっどこどこ怖い怖い!」
そこにはなにもおらず青い景色だけが続く空だがしきは鳥という言葉を聞くだけで怯えしゃがんだ。
「にゃーん」
そしてブランがしきに向かって雪玉を投げた。
それは簡単にしきに当たってしまう。
「えっ……ウチリタイア?」
「知能指数の低いしきにこの戦法は通じてしまうのか……」
咲夜が呆れるように言う。
ひそかはというとしきから銃を受け取り構えた。
「しきはいなくなったけどこっちにはまだしきのマシンは残ってる。つまり残機は減ってないのさ!」
「ウチをマシィンしか価値ないやつみたいに言うなぁ!」
場外に出たしきが怒鳴る。
ほんとにこの二人は仲が良いのか悪いのか。
「さぁ咲夜くん一緒にエレオノーラ君達を倒そうじゃあないか」
「私は負けてもなんでも正直どっちでもいいんだけど……」
やる気満々のひそかとはうって変わってどうでもよさそうに振る舞う咲夜。
「やる気がないようだね。じゃあつむぎくんはひそかが倒してしまおう」
咲夜のやる気を上げるために煽るひそか。
それにより咲夜の表情は変わった。
そして戦闘態勢に変わった。
「それはだめ……つむぎは倒させない」
咲夜はいつの間にかひそかに向かって対面して言った。つむぎたちの陣営に入って。
「あれ? なんか君陣営間違えてない?」
きょとんとした表情をするひそか。
「アンリアルだから陣営は変わってもいいんだよ」
「アンリアルってつければなんでもいいと思ってないかい!?」
それからひそかがあっさりやられるのは目に見えており、ひそか&しきチームは敗北した。
◇
その後つむぎたちは普通に雪合戦をしたり大きなかまくらを作ることにした。
かまくらが完成すると中でつむぎたちはエレオノーラが作った料理を食べることになった。
「ボルシチでありんす」
エレオノーラが出したのは赤いシチューのようなロシア料理、ボルシチだった。
温かいそれを手に取るとつむぎはふーふーと息を吹きかけ冷まして食べる。
「おいしー、ボルシチってこんな味がするんだね!」
その味はトマトスープに近かった。
具材の野菜の味が濃く出ている。
「ボルシチは日本で言うところの味噌汁でロシアの家庭料理でありんす。わたくしはお母様に教わったやり方で作ってるでありんすよ」
「そっかぁ」
ボルシチがどういうものかよくわかってなかったつむぎはエレオノーラの話を聞いてなんとなく理解する。
隣にいたミーシェルを見る。
ミーシェルは美味しそうにボルシチを食べていた。
そんなミーシェルを見て笑いつむぎは言う。
「それにしても今年はミーちゃんとも来れてよかったよ。去年の夏海に行ったときはミーちゃんは来れなかったし」
「そ、そうだな……」
びくっと震えるミーシェル。
去年の夏の海、彼女がこっそりいたことをつむぎはしらないままだ。
こうしてみんなと遊びにいけてつむぎは幸せだった。
「また今度みんなでどこか来ようね! 次はどこがいい?」
つむぎはそこにいた全員に向けていった。
「はーい、山! 山がいい! ハイキングでキャンプ!」
「心霊スポット巡りをしないかい?」
「かわいい動物がいっぱいいるところがいいわ」
しきたちがわいわいと行きたい場所の案を出していく。その盛り上がりを見ているだけで楽しい。
「いろいろあるね! じゃあこれからいっぱいいろんなところを遊びに行こう!」
つむぎは笑顔で言った。
季節も場所も関係ない。
この世界ではどこへでも自由に行くことができる。そんな素敵な場所だ。