メロディープラネット
「いてて……」
追突したつむぎたちはどこかの広い建物にいた。当然のことながらその建物の天井には穴が空き宇宙船は完全に壊れ消滅していた。
「Unreallyじゃなかったらこれほんとに死んでたよ……」
咲夜が頭をさすりながら言う。痛みは思ったよりなかった。過度な痛みは無効化されるUnreallyのシステム上なものだろう。
もしほんとうに痛覚があったら生きてても苦痛だ。
「なにものだ!」
すると誰かが怒鳴るように叫んできた。
どしどしと多くの足音がしていく。
それは小さな音符の兵隊らしきものだった。
「あっ……ごめんなさい! ここに来ようと思ったら宇宙船が墜落しちゃって……」
「どんな理由であっても建物を壊し無断でこの城に入ってくるのは重罪だ!」
言い返す言葉もない。元はといえば着陸を失敗したしきが悪いのだが。
「落ち着~きなさい~」
「姫様!」
すると一人の女性が歌うようにこちらに話しかけてきた。ドレスを着た青髪の女性だ。
ドレスには♯の印がたくさん描かれている。
「ラララ~ここは音楽の王国~。良い音楽を奏でるものこそが正しい~。悪人でないというなら~音楽で誠意を見せてください~」
この国のお姫様らしき女性が歌いながら言う。
「状況はよく分からないけど良い音楽を奏でればいいってことかな?」
「たぶんそうだね……」
つむぎの疑問に咲夜は頷く。
音楽を愛する惑星らしい判断だ。
ここは歌も演奏も上手い咲夜がいくのが妥当だろう。
「はいはーい! じゃあうちがやるーる! ホック相槌頼むよ!」
「ホック!」
しかし最初に手をあげたのはしきだった。
しきはホックを腕に乗せると歌い始めた。
「き↑ら↑きーら↑ひー↑かー↑る~↑」
「ホック!」
「おー↓そー↓らぁあ↓のほしぃ↓よおお」
「ホック!」
その音程はあまりにもひどかった。
カーン!
鐘が一回だけ笑うかのように鳴る。
「なんで!?」
「いやまぁそうでしょ……」
自分の歌の音程に自覚のないしきに、咲夜が呆れたように言う。
「なら次はミーがラップをやるのだ」
次にミーシェルがサングラスをかけDJをやるようなポーズをして歌い始めた。
「ミーの名前はミーシェルだ。
ミーちゃん言うなミーシェルだ。
こうやってやるとあれなのだ!
ラップなんてやらんからわからんのだ!」
キーンコーン!
「じゃあなんでやったの!?」
「天魔竜の気まぐれってやつ……なのだ!」
キメ顔で言うミーシェル。
あぁ、そういえばミーシェルはひなたなんだとこのおちゃめなところを見て思い出すつむぎ。
「つぎは~あなたが~やりなさい~」
「えっ? わたしっ!?」
姫様がつむぎを指名して言った。
戸惑うつむぎ。
これは咲夜がやるべきだ。
自分ができる音楽なんてない。
演奏はろくにできたことがない。
歌は……一つだけ得意なのがあった。
するとつむぎは意を決して言った。
「えっと……じゃあ歌います」
そしてつむぎは一度深呼吸をして呼吸を整えてから歌い始めた。
「これはっ!? モノクローム……」
咲夜がすぐに反応する。
つむぎが得意な曲。
それは咲夜が作曲しつむぎが作詞した曲。
冬のUフェスで歌った曲だった。
これしか自信をもって歌えるものはない。
だからつむぎは歌う。
「…………~♪」
そこに咲夜のハモりが加わった。
つむぎはそれを聞き咲夜の方をみる。
咲夜もつむぎの方をみていた。
二人は笑い合い歌った。
キンコンカンコンキンコンカンコンキンコンカーン!
すると鐘が合格とでも言わんばかりの音色を鳴らした。
姫様も大きな拍手をしていた。
「素晴らしい歌でした……あなたたちの冤罪を認めましょう。私はシャープ姫、代わりにおもてなしさせてください」
シャープ姫となのったお姫様はドレスを掴みお辞儀をした。
それからつむぎたちはお城の中を案内されることとなる。