修学旅行二日目
そしてやってきた修学旅行二日目。
本格的に沖縄を楽しむ日だ。
二日目は全クラス合同で班に別れ班ごとに別のコースを体験するのがメインだった。
「つむっちさやっち! 今日はよろしくねー」
「うん、よろしくね! ひびきちゃんかなでちゃん!」
班でバスで出発の朝、つむぎはバスに乗る前に一緒の班となったひびきとかなでに挨拶をした。
ひひぎとかなではことねが作った軽音部ブルーシルのメンバーだ。
つむぎもことね経由でそこそこ話す機会があった。
そしてつむぎ、さや、ひびき、かなでの四人はバスに乗り体験スポットに向けてバスが出発した。
◇
つむぎたちが向かった先は陶芸工房だった。
これからシーサー作りを体験する事となる。
工房には何体かすでにかわいらしいシーサーが置かれてあった。それをお手本にシーサーを作るそうだ。
どうやって作るのかをそこで働いている担当の人に教えてもらい、作業用エプロンを着てシーサー作りがスタートした。
「んしょ……難しいね。アンリアルだったら絵を描けば簡単に作れるのに現実で立体物作るのは大変だよ」
つむぎは粘土のうちの半分を体を支える胴体として形作っていたが。捏ねて思い通りにするのはなかなか難しいことだった。
「昔はすべて手作りで作ってきたから……昔の人は凄い……」
隣にいたさやが先に顔作りに移行していた。
さやのいう通りここにくるまでに見かけたシーサーなど全部が人間の手で力を込めて作られているのだ。今でもフィギュアなどは粘土を込めて細かく作られているものだってある。
立体物を気軽に作れてしまうUnreallyが異常なのだ。
「シーサーってなんで沖縄の家とかによくあるのぉ」
するとかなでの声が聞こえる。
隣にいたひびきにシーサーのことについて質問していたようだ。
「魔除けとかが由来らしいわよ」
「へぇじゃあこれ作ればひびっちに効果あるのかな?」
「なんでそうなるのよ!?」
ひびきがかなでの言ったことに突っ込む。
するとかなでは作りかけのシーサーの台を持ちながらバリアを張るようにひびきに向けた
「だってひびっち怒ったとき怖いし、魔除けにならないかなって」
「私が鬼や悪魔とでも言いたいのかしら……?」
「シーサーはひびっちには効きそうにないや……先に壊されそう」
ひびきの怖い目付きにがっくりとするかなで。
今まさに鬼がいるといった感じだ。
「あはは……二人とも仲良しだね」
「バンド活動のときもあんな感じだから……」
苦笑いして二人を見るつむぎ。彼女たちの普段のやり取りはあんな感じなのだろう。
それはつむぎよりもさやの方が今では理解していた。
その後、シーサー作りに集中しそれぞれが自分のシーサーを完成させた。
つむぎは可愛らしいキュートな笑顔のシーサー。
さやはジト目でどこかさや自身を連想させる顔のシーサー。
かなではまったりした顔でひびきは強そうでいかつい顔のシーサーだった。
「ふふっみんなそれぞれ個性的だね。さやちゃんのはさやちゃんっぽいし」
「そうかな……?」
つむぎの言ったことに首を傾げ不思議を抱くさや。
本人は特に考えずに作ったようだった。
◇
その後近くの場所を観光した後つむぎたちは昼食を取ることになった。
昼食は沖縄名物ソーキそばだ。
いただきますと言った後つむぎは肉とそばを一緒に少しずつ食べる。
「美味しいっ。お肉に味が染みててコクがあってわたし結構好きかもっ」
つむぎ好み味だった。これが手軽に食べられる沖縄の人はちょっと羨ましいなとつむぎは思った。
さやも隣でおいしいと呟きながら食べていた。
そんなこんなで食べていると一緒にいたかなでが話しかけてきた。
「そーいやさ。さやっちってもともとつむっちの友達なんだよね」
「うん、いろいろあって友達になってね」
「友達じゃない親友……」
つむぎがかなでの問いに答えるとさやがボソッと小声で言った。彼女は友達と親友という境界線を完全に分けて考えているらしくつむぎとさやは友達と言われると少し拗ねる傾向がある。
「さやってばライブハウスで人気なのよ。結構ファンがいるし」
器に具をたくさん乗せたそばを食べているひびきが言った。
「さやっち背はちっちゃいけど歌声かっこよくてギャップあるんだよねー。女の子みんなメロメロだもん」
「そうだよね! クールでかっこよくて、でも可愛いところもあって音楽の才能があって素敵だもん! わかるよ!」
つむぎはかなでの言ったことにテーブル越しで目を輝かせながら言う。
「ぐ、ぐいぐい来るわね……ライブハウスに来るさやのファン以上よ」
「そりゃわたしはさやちゃんのファン一号だから!」
引き気味のひびきに対して胸を張って言うつむぎ。咲夜のファン一号ははじめのチャンネル登録者じゃないので言えないがさやに対しては自分が一番だと言える自信があった。
「じゃあ今度つむっちもライブハウス来る? そこまで頻繁にはやらないけど今度いくとき教えるよー」
「うん!」
つむぎは喜んで返事をする。
さやとしてのライブはもっと見てみたいとつむぎは思った。