お菓子の国
「すっごーい、お菓子の国だ! あそこからあこそまで! あっちもお菓子!」
つむぎは目を輝かせまわりを見渡す。
遠くには巨大なホットケーキのタワーやプリンの山が見える。
この距離でも見えるということはとても大きいのだろう。
転移した地面は大きなビスケットとなっていた。
とにかく規格外の大きさをした、お菓子たちがたくさんある。
「やぁお客さま、スイーツプラネットへようこそ」
30センチくらいの身長のクッキーでできた人形が話しかけてくる。
背がちっちゃいからか、自分がここにいることをアピールしてピョンピョン跳ねている。
「わぁ!かわいい!」
かわいらしいクッキー人形に思わず微笑むつむぎ。
アバターで人以外になっている人物も、もちろんいるがこの住人にはネームプレートがない。
どうやらNPCのようだ。
「わたしたちはここに住むお菓子の妖精です! ここスイーツプラネットはすべてがお菓子でできてます! お客さまたちは自由にお菓子を食べていいですよ」
そう言って妖精さんはお皿とフォークを差し出す。
それを手に取るつむぎと咲夜。
咲夜はさっきから妖精の方を見ていた。
「あっ! わたしたちは食べないでくださいね!? おいしいですけど痛いですから!」
「あ…別にそんなつもりはないよ。ただ私もかわいいなって思ってただけ」
頬をかき怖がらせてごめんね
という咲夜。
「ではスイーツプラネットをとくとご堪能ください!」
◇
しばらく道を歩いているつむぎたち。
歩道はクッキーが縦長に出来てて、草原はホワイトチョコレートで一部はクーリームでできたカラフルな花が生えている。
いろんなものを見ていたつむぎ。
するとあるものを見つける。
「見て咲夜ちゃん!大きなショートケーキだよ」
「ほんと……大きいね」
そこには家くらいの大きさのショートケーキがそびえたっていた。
つむぎは手に持ってるお皿とフォークを見つめる。
そういえば自由に食べていいんだっけと思いだし、ケーキの一部をフォークで取る。
大きいのでスポンジの部分とクリームの部分を均等に取りをすくうようにつむぎは頬張る。
「おいしい~」
つむぎは笑顔で言う。
頬がとろけそうなくらいおいしい。
「うん、おいしいね」
咲夜も食べ方を真似ケーキを食べていた。
「……」
つむぎはとったぶんのケーキを食べ終わると、お皿を地面におく。
すると黙り混みそのまま引き込まれるように、ケーキのクリーム部分に顔をうずめるつむぎ。
当然だが顔面クリームまみれになる。
「なにしてるの!?」
その急な行動に驚く咲夜。振り向くつむぎ。
その顔はすごいありさまであった。
「大きなショートケーキを食べてみるの夢だったんだ……えへへ……大きすぎて全部は食べきれないね」
てへへと笑うつむぎ。
つむぎはショートケーキや生クリームが大好きだった。
そのためかこんな巨大なショートケーキを見て
いてもたってもいれなくなった。
なによりアンリアルだからどれだけ食べても太らないし虫歯にならない。
「ふふ……ほんとうにつむぎっておかしな子だね」
そんなつむぎに咲夜は、最初にあったときのようにくすりと笑う。
「そ、そんなことないって!」
「その顔だと説得力ないよ」
「あっ……//」
否定するつむぎだが今の自分の姿にようやく気付く。
クリームを顔から取ろうと川らしきところを見つけて顔を洗うつむぎ。
「これでよし」
「いやつむぎ……カメラで自分の姿見て」
「どうして?…えっ!?顔が今度は緑に!?」
水だと思った川は緑色のチョコレートだったらしい。
ここが全てお菓子でできていたのを忘れていた。
「どうやって落とそう…」
「メニューのアバターからアバター情報リセットを押すと汚れた服とか元にもどるよ」
咲夜の言う通りに実行してみる。
それからカメラで確認すると元に戻っていた。よかった。
ピンポンパンポーン
突如、どこからかアナウンスらしきものがながれる。
見るとそこにはロールケーキや板チョコで
コーティングされた機関車らしきものがあった。
「もうすぐ中心都市にむけてスイーツトレインが出発します。お乗りになる方はいらしてください」
「あれ乗ろうよ咲夜ちゃん!」
つむぎは咲夜の腕を握り、乗るのを催促する。
咲夜は仕方ないなといった感じで頬を緩めた。
チョコで出来た車両に乗る。中には他にも人がいた。
この世界にすんでいるお菓子の妖精もいる。
咲夜とつむぎはつむぎが外側に、咲夜がその隣にすわった。
しばらくしてから発車しまーすという言葉とともに機関車は出発した。
ガタンゴトンとビスケットで出来たタイヤが動く。お菓子でできていてもそれはちゃんとした電車だった。
◇
しばらくして中心都市についた。
都市というだけあってそこにはお菓子で出来た家があちらこちらとそびえ立つ。
広場があり中心にはチョコレートの噴水が
チョコレートフォンデュのように流れていた。
実際、その噴水にお菓子を入れチョコフォンデュにしてる人がいる。
「あっ! ティンクルスターのポスターだ!」
広場にあった移動店舗車のひとつに、ティンクルスターの三人が映っているポスターがあった。
ティンクルスターコラボ中!
イルミナのカップケーキ
ミラのマカロン
カペラのアップルパイ
と書いてある。
ちょっと言ってくるねと咲夜に言い、その車の方へ向かう。
「すみません。ティンクルスターのお菓子全員のください」
つむぎはチョコレートの妖精店員に注文をする。
店員はすぐさま商品を用意してくれる。
お菓子は箱に入れてくれた。
箱はホワイトチョコで出来ていて環境に優しい。
つむぎは咲夜の方にむかうと、どこかに座ろうかと提案され近くにあった、クッキーの椅子に座ることにした。
つむぎは箱を開ける。
チョコで出来ているのに普通の箱と同じ耐久性を持っていて壊れたりしない。
アンリアルだからだ。
「そんなに食える?」
咲夜が心配そうに問う。
箱のなかには一人で食べるには少し多すぎる量のお菓子が入っていた。
「大丈夫アンリアルだから太らないし!」
そう、この世界はいくら食べても太らない。
アンリアルだからだ。
「でもちょっと不安かも……だけどティンクルスターのファンとして食べ残しなんてしたくないし」
勢いで全部買ってしまったが食べられるかどうか不安だ。
そんなつむぎを見てはぁとため息をつく咲夜。 だが少し微笑みを見せて言った。
「……私も食べるよ。それなら勿体なくないよね?」
「ありがとう咲夜ちゃん!」
◇
「ふぅ……お腹いっぱい」
「当分スイーツはいいかな……」
食べ終わりしばらくしたあと二人は歩いていた。
口の中に甘さがまだ残っている。アンリアルだからといえいろいろ食べすぎた。
もし現実世界だったらと思いカロリーを想像するとぞっとする。
食後の運動がてら散歩する二人。
つむぎが前を行き、少し後ろに咲夜がついてくる。
咲夜は優しい。出会ったばかりの自分に嫌な顔せず微笑んで付き合ってくれる。
そんな咲夜だからこそ、つむぎは惹かれたのかもしれない。
「うわーん。ボクのお家がぁ~」
突然、泣いている声が聞こえた。