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天魔竜少女

 それから数週間におよび撮影が行われた。

 つむぎがデザインした衣装も使われておりその衣装が撮影に使われてると思うと嬉しかった。

 たまにねねこやエレオノーラが様子を見に来たりして


 そして……



「さぁ映画が完成したよ。みんなで一緒に見よう」


 

 つむぎたちはここ数日編集作業で大忙しだったひそかから連絡を受けブルローネの拠点に集まっていた。

 ひそかはこの日を待っていたかのように元気そうだ。



 つむぎたちは席に座り映画が始まるのを待っていた。


 そしてスクリーンに製作:秘密結社ブルローネという文字が出され映画が開始された。


 映画のタイトルは天魔竜少女。ミーシェルのことを主人公にしたタイトルらしいものだった。



◆劇場版天魔竜少女



 ある時二人の少女が星空を眺めていた。

 それはつむぎと咲夜だ。

 二人は親友で仲良しだ。



「あっ! 流れ星だ!」


 

 つむぎが流れ星を見つけては咲夜に言う。

 


「いや、これこっちに向かってない?」 



 咲夜はその流れ星にいち早く違和感を気付く。

 その流れ星は隕石のようにつむぎたちのいる場所からそう遠くない場所へと墜落していった。



「川の方だ行ってみようよ!」


 

 つむぎが咲夜の手を引き落ちた流れ星を見に行こうと誘う。いったいそれがなんなのかその真相を確かめるために。

 それが二人の人生を変えることになろうとは知らず。



「あれはっ……女の子!?」



 墜落した流れ星の正体。それは一人の女の子でした。すると少女は立ち上がりこちらを見る。



「君は……?」



 咲夜が問う。若干咲夜は恐れていた。

 この子が何者なのか。それは彼女の容姿と墜落しても丈夫な体に疑問を抱いていたからだ。

 彼女はギリシャ神話に出てきそうな神聖な衣装を身にまとっており所々人間離れした容姿をしていた。



「私はミーシェル……ほかは覚えてない」



 少女ミーシェルはそう言うとぐーっとお腹を鳴らした。



「お腹……空いた」



 つむぎたちはそんなミーシェルを自分達の家に連れていきご飯を食べさせてあげることにした。



「頭に輪っかがあるしもしかして天の使いなのかな?」


「いや角が生えてるし悪魔なんじゃ……でもこの尻尾はドラゴン?」



 美味しそうにシチューを食べてるミーシェルを見ながらつむぎたちは不思議そうに彼女が何者なのか観察した。

 しかしなんの生き物なのかよくわからない。



「帰る場所わからない……どうしよう」



 シチューを食べ終えたミーシェルは悲しそうに言った。

 するとつむぎはにっこりと笑顔で言う。



「ならうちに住みなよミーシェルちゃん!」


「いいの……?」


「うん、だってわたしたちはもう友達だから!」



 それからミーシェルはつむぎたちと楽しい日常を過ごすことにした。


 服はもう少し普通の衣装を着させ三人はいろんなところへ遊びに行った。

 街の人たちははじめミーシェルを警戒したが彼女の純粋な心に次第にそれも薄れていくのだった。


 しかしそんな幸せな日々は長くは続かなかった。



 突如街の中で爆発がたくさん起き建物が破壊され大勢の人間の命が奪われて行った。



「ターゲットを確認、補足」



 逃げる人間を見てそれは体の一部である銃で撃ち殺した。人だったものは悲鳴をあげるよりも前に人ではなくなりあたりは暴走した機械たちが人々を襲いかかっていた。



 つむぎたちもその被害に逃れることはできなかった。



「つむぎっ! ミーシェル危ない!」


 

 ドローンの銃撃を咲夜は自分の身体を犠牲につむぎたちから防いだ。その代償はもちろん咲夜自身が受け体からは血が出血していった。



「咲夜ちゃんっ!」



 つむぎが泣きそうな声で叫ぶ。



「つむぎ……逃げ……て……」



 咲夜は最後の力を振り絞り言った。手を伸ばし愛する者たちへ別れをつげるように。

 そして彼女の息は途絶えた。


 つむぎたちはそれから逃げるようにその場から離れた。



「咲夜……どうしたの……?」


「咲夜ちゃんは死んじゃったんだよっ……!」


「死……?」



 ミーシェルは首を傾げる。彼女はところどころ常識を理解していなかった。

 


「もう咲夜ちゃんとは……おはようって挨拶することも一緒に遊ぶこともこれから先一緒に過ごすことももうできないんだよ……!」



 つむぎは泣きながら言う。

 ミーシェルはそこで理解する。

 死とはなんなのか。



「そんなの嫌……咲夜と離ればなれになるなんて……!」



 そして彼女の体に変化が起きる。

 翼が生えたのだ。

 背中には大きな悪魔の翼が。

 腰には小さな天使の翼が。

 そして服装は軍服を纏い。彼女は本当の姿を取り戻した。


 するとつむぎたちを追っていたドローンの数が増え集まってきた。

 このままでは一貫のおわりだ。咲夜の作ってくれた時間さえ無駄になってしまう。


 しかしドローンはこちらに攻撃してこようとした瞬間、黒い稲妻に真っ二つにされ爆発した。



「思い出した……のだ。ミーの本来の使命を」


「ミーちゃん?」



 そしてミーシェルはつむぎを安全な場所に避難させ、自身は空を飛びある場所へと向かっていった。



 ミーシェルはこの機械の暴走の原因である一体のアンドロイドを見つけた。



「貴様がこの元凶だな……」


「そうです。私はNo.000。私は人類を滅ぼすためにこの暴走を起こしました。あなたこそなにものですか?」



 そのアンドロイドを演じているのはしきだった。しきは普段の姿に武装をし、翼が装着されていた。武装により目は隠れている。

 しきの声は音声を少し調整してロボットっぽく合成している。棒読みなのをあえてカバーするのにピッタリだった。



 するとミーシェルはマントを広げた。



「我が名はミーシェル! この世界の秩序を守る者!」



 堂々としたそれはUnreallyでのいつものミーシェルそのものだった。



「この暴走をやめるつもりはないのか」


「人類は失敗する。自然を破壊し生態系を破壊する。故に不要な存在と判断しました」



 冷酷に残酷にしきは言う。

 しかしミーシェルはそれに対抗するように強く言葉を言った。



「確かに人は失敗する。だがそれだけが全てじゃない。……ミーは人に助けられた。人でないミーを人は優しく迎え入れてくれた。善人もいれば悪人もいる。それは心を持つものの宿命だ」


「それが人類を守る理由になると?」


「ふん、ミーが戦う理由は人類のためじゃない! 大切な友に、笑顔で幸せに生きてほしいからだ!」


「理解不能です。あなたも攻撃対象と認識します」



 対話は無意味そう両者が判断し戦闘が行われた。


 しきはドローンをミーシェルに向かって放ち爆発させる。ミーシェルはそれを華麗に回避し、黒い稲妻を剣の形に変えしきに向かって攻撃していった。


 しきはビームサーベルを取り出すとミーシェルと斬り合いの戦いになった。両者空を飛び建物を破壊しながら銃を撃ち魔法を撃ち剣で戦う。



 そうしたシーンが続きついに決着がつく。



「終わりだ……シュヴァルトブリッツ!!」



 ミーシェルが稲妻の大きな槍を作るとそれをしきに向かって貫いた。



「機能停止……ミッション失敗……」



 最後に目の武装が壊れたしきは瞳が見えそして爆発した。



 そして司令塔だったしきが破壊されたことにより他の機械の暴走も収まった。



「ミーちゃん!」



 ミーシェルはつむぎのいる場所へと戻っていった。



「つむぎよ、ミーは役目を終えた。もう行かなくてはならない」


「役目って?」


「人類を生かすか殺すかの審判だ。ミーはそれで生かし守ることを選択した。貴様ら人間の優しさに触れてな……だがもうここにいる必要はなくなった。ミーは天魔竜界に帰らなくてはならない。またいつか会おう……友人としてな」


 

 ミーシェルは別れの言葉を告げると微笑み空へと飛んでいった。


 そしてエンドロールが流れる。



 ◇



 映画が終わると拍手が巻き起こった。



「良かった! ウチ目立っててサイコー! かっこよかった! ひそかにしてはやるじゃん!」


 

 一番最初に放送が終わりしゃべったのはしきだった。

 しきが思いの外かっこいいのはつむぎも思ったことだ。撮影時はあまりの棒読みさに大丈夫か不安になったが調整でここまで良くなるとは思いもよらなかった。

 


「まぁミーとしては及第点……なのだ」



 ミーシェルはクールに言う。しかし口元はニヤリと笑い満足げだった。



 つむぎと咲夜も完成された作品にはとても満足していた。多少設定の荒さはあれど友のために戦うミーシェルの姿がかっこよく見入ってしまっていた。



「よろこんでもらえてなによりだよ」



 ひそかは演説台に立ちフードを脱いで涙目になりながら嬉しそうに笑った。



「ひそかはね……ただ君たちと一緒に映画を作りたかったんだ。こんな大がかりなことリアルじゃできないしやってて楽しかった……」


「まー良かったじゃんやりたいことが叶ってさ」



 ひそかの言葉に相づちを打つようにしきが言う。

 ひそかが映画が大好きで自らも映画を作っているのは知っていた。それで実際Unreallyでこうやって映画を作るのはやはり楽しいのかもしれない。


 そして涙を拭いたひそかはきりっとした顔になり言う。



「ああ、いつか映画監督になってハリウッドに負けないものを作ろうじゃあないか」



 それはひそかの将来の夢の決意表明であった。


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