ミーシェルUドリーマーデビュー
「ミーシェル様大変です! 配信枠に既に1000人以上の視聴者が待機しています!」
「な、なんだと!? どいうことだ!?」
ギルドメンバーの一人、天使の姿をした少女が状況を説明した。
いきなりアンリアルドリーマーとして生配信でデビューするなどあまりない事例だ。それなのに1000人も待機しているとはどういう状況なのだろうか。
「ドラゴメディウムのメンバー全員がミーシェル様のUnitterのアカウントの配信枠のユニートを拡散、紹介した結果そうなったのかと」
「それでそんなになってるのか……ハードル上がりすぎだ……のだ」
ミーシェルはこっそりデビューするつもりだったのだろう。この状況は考えていないように見えた。
つむぎはふとスマホでDreamtubeを開きミーシェルのチャンネルを確認する。すると配信枠には二千人の待機視聴者とコメントが
『あのアンリミテッドファンジアのトップランカーのミーシェルちゃんがUドリーマーになるんだって!』
『あのかっこいいって噂の!?』
『噂だけで本物を見れるなんて思いもしなかった!』
『とっても個性的って聞いたことあるよ!』
たくさんのコメントが既に期待を寄せてミーシェルを待っていた。
「すごいねミーちゃん、みんなミーちゃんに期待してるみたいだよ!」
「ぐぬぬ……こんなはずじゃなかった……のだ。もっと静かに地味に活動したかったのだ……」
思いがけない展開に平凡に暮らしたいアニメの主人公のような台詞を吐くミーシェル。デビューしていきなり数千人が見ているのはたしかにハードルが高いだろう。それは既にあるミーシェルの人望が人を寄り付けるのかもしれない。
ミーシェルは難しそうな顔をしていた。そしてはぁっとため息をつく。
その後、吹っ切ったのか凛々しく顔つきを変えた。
「まぁよい。腹をくくるのだ! 配信を始めるぞ!」
そして配信が本格的に始まった。
◆ミーの姿をとくと見よ!【天魔竜ミーシェル】
玉座の前に立つミーシェルが配信画面には映っていた。
つむぎたちは配信画面の外でミーシェルの姿を見守っている。
そしてミーシェルはマントを広げ第一声を上げた。
「シッシッシッ! こうやって貴様らに姿をちゃんと現すのははじめてだな……我が名はミーシェル! 天使のような慈愛と魔族の闇の力そして竜の誇り高き偉大さを交えた誇り高き天魔竜族の末裔なのだ!」
恥ずかしがっていたミーシェルは消え、カリスマ性溢れるキャラでミーシェルは視聴者に向けていった。
配信のコメントにはものすごい勢いで書き込みがされていく。『これが本物のミーシェルちゃん!』『ミーシェルちゃん! いやミーシェル様!』『ミーシェル様これからあなたに忠誠を捧げます!』
そういったコメントがたくさん流れていった。
「これまではアンリミテッドファンタジアトップクラスのギルド、ドラゴメディウムの団長であり、これからはアンリアルドリーマーとしても活動する……のだ。ミーはこれからアンリミテッドファンタジアでの戦いを配信したり、我が友たちと一緒にこれから楽しい日々を過ごしていきたいと思っている。……紹介しよう!我が友つむぎと咲夜だ!」
そして画面は切り替わりつむぎと咲夜へと配信画面が変わった。
「はっ、はじめましてっ。ミーシェルちゃんとはずっと友達で仲良くしています麗白つむぎです」
つむぎは少し緊張していた。いきなりこんな大勢の人に見られるのは慣れてなかった。
しかしコメントでは「つむぎちゃんだ」「つむぎちゃんと咲夜ちゃんってミーシェル様と友達だったの!?」
と、意外にも知ってる人がいるらしい。
活動して一年近くなる。Uフェスにも出てもふあにTVにも出て、登録者もそれなりに増えた。
なので知っている人がいてもおかしくない。
しかしここまでミーシェルがいきなり人気だと冬のUフェスで言っていたミーシェルがUドリーマーになったらすぐにチャンネル登録者を追い抜くというのはあながち冗談ではないかもしれない。
そして次に咲夜が自己紹介をする。
「小太刀咲夜……ミーシェルは……まぁミーちゃん? マスコットみたいでかわいい存在だよ」
「誰がマスコットだマスコット!」
いつもの咲夜のミーシェル弄りが炸裂した。
それをみてミーシェルは咲夜に近づき文句を言う。
コメント:ミーちゃん
コメント:ミーちゃん呼びかわいい!
コメントではミーちゃんと言うフレーズに反応した。
「ミーちゃん呼びいいよね! 咲夜ちゃんが始めにつけてわたしもミーちゃんって呼んでるんだ!」
「おいつむぎまで! これではミーちゃん呼びが定着してしまうでないか!」
ミーシェルはミーちゃん呼びを防ごうとしたがもう遅い。
コメント:ミーちゃん!
コメント:ミー様!
コメント:ミーちゃん様!
コメントではミーミー言う文字列で埋まっていた。もはやミーちゃん呼びは防ごうがなかった。
そのコメント欄を見たミーシェルは半分諦めた顔で言った。
「ええい仕方ない! ミーちゃんでもなんでも好きに呼ぶがよい!」
「認めたねミーちゃん」
「貴様にミーちゃん言われるのはなんか腹立つのだ!」
元凶である咲夜のミーちゃん呼びは未だに許可していないようだった。
「まぁよい……これからミーと共にUドリーマー仲間として仲良くしてくれ……」
「うん、もちろんだよ! わたしたちとミーちゃんの仲だもん!」
少し目をそらしながら言うミーシェルに対しつむぎは笑顔で言った。
それを見たミーシェルは微笑む。
「ふっ……友と言うのはやはりいいものだな。それじゃあ次の動画配信を待つがよい……さらばだ!」
そして配信は終了する。
◇
「くっ……疲れた……のだ!」
ミーシェルは玉座に緊張が解けたかのように座り込んだ。
「お疲れミーちゃん」
「うむ、ありがとなのだつむぎ」
つむぎはドラゴメディウムのメンバーの人が用意してくれた三人分のオレンジジュースをミーシェルに一つ渡した。
ミーシェルはそれをストローで半分以上一気に飲み干す。
つむぎが想像している以上にミーシェルは疲れたのかもしれない。あの大人数の視聴者相手ならしかたないだろう。
つむぎがもしデビューした初配信であんなに見られたらまず緊張しすぎて冬のUフェスのときのように気を失いかねない。
そう思うと自然といつも通りだったミーシェルは凄い。恥ずかしいと言っていたのは嘘だったかのようにミーシェルというキャラを演じ続けていた。ティンクルスターのイルミナの中の人である小春うららが言っていた原作がないなら自分が原作者になればいいを体現し続けていたのだ。
「ミーちゃんがUドリーマーになったからこれからは一緒にどこへでも遊びにいけるね」
「うむ、そうだな。ギルドの方もミーが毎日前線にいなくても安定して活動できる目処がたったからな」
ミーシェルはアンリミテッドファンタジアに毎日のようにいた。しかし他のことをしたいと思うようになったのもあるのだろう。
それで効率化とギルドの運営維持にいろいろ手を回していたみたいだ。
「これからはとことん貴様らについていくぞ……覚悟はいいな?」
「うん!」
三人は約束をしこれから三人でいろんな所へ行くことを決めた。
こうしてミーシェルはアンリアルドリーマーとなり新たな風が吹き上がろうとしていた。