第二部開始!三年生編突入!
「では、来週までに進路希望の紙を提出してください」
と担任の先生が言う。
四月、つむぎたちは高校三年生になり数日が経っていた。
三年生はクラス替えはないためクラスメイトは見知った顔だ。
クラスの全員の机には進路希望の紙が行き届いている。
それからしばらくしてキーンコーンと四時間目が終わるチャイムがした。
まわりはざわつきはじめお弁当の用意をしたり売店で食べ物買いに行こうとしている。
つむぎは席を立ち左側の席にいる少女に話しかけた。
「さやちゃん!」
「ん……」
さやはお弁当を机の上に出すとつむぎを見た。
水色の髪で覆われ片目だけが見える目付きがきつい目。はじめの頃はそう思ってた。
だが今となっては彼女の瞳はジト目で可愛らしくつむぎは思う。
「行こっ」
「うん……」
彼女はゆっくりと頷く。
行き先は決まっている。その前に声をかけられる。
「つむぎー今日も屋上で食べるんでしょ。はやく行こうぜー」
「ことも今日は一緒に行くよ」
声を掛けてきたのはコンビニで買ったパンを片手に持った少女、ひなたと自前のお弁当を両手で持ったことねだった。
つむぎは二人を見るとにっこりと笑いそして言う。
「うん四人で一緒に食べよっ」
つむぎとさやはひなたたちの方へと向かい歩いていく。
いつのまにかこの四人で、晴れた日は屋上で食べるのが当たり前になっていた。
それは三年生になっても変わりはしない。
◇
屋上へと続く廊下。
その途中にはまだ入学してきたばかりの一年生たちのクラスがあった。
「あっ、つむぎ先輩! さや先輩!」
すると一人の一年生が話しかけてきた。
その声は最近も聞いた程慣れ親しみ、その容姿は久しぶりに見た一人の少女だ。彼女は制服は同じだが胸に今年の一年生の象徴である黄色いリボンを付けていた。
「そまりちゃん! そういえば入学してきたんだよね!」
つむぎは少女の名前を言う。
夕凪そまり。Unreallyでは水無月ねねことして振る舞うあがり症な女の子だ。
「はっ、はいどうにか……」
そまりは顔を赤くしていた。
そまりがつむぎたちの高校、姫乃女学園に受験をし無事合格したのをつむぎとさやはUINEでの報告を聞き知っていた。しかし彼女が制服を着てこうやって会うのは今日がはじめてだった。
「つむぎたちの知り合い?」
「うん、紹介するよ。夕凪そまりちゃん。Unreallyでわたしたちの友達なんだ!」
ひなたの質問につむぎはそまりを紹介するように言う。
「ど、どうもはじめましてせ、せんぱい方……」
もじもじと恥ずかしそうに言うそまり。
いきなり顔を真っ赤にして倒れるよりはあがり症は克服されたのだろうか。
「よろしくーそまり。あたしは雨宮ひなた。つむぎの幼なじみ。まぁそんなかしこまらなくていいよ」
「ことは保栖ことね。よろしくねそまり」
「よ、よろしくお願いしますっ」
二人の自己紹介にそまりは深くお辞儀をした。
そまりは礼儀正しくていい子だ。
そまりが一年生として入学してきたのを思い出すと自分達が三年生になったという自覚を再確認する。
「そうだ! 良かったらそまりちゃんも一緒に屋上でご飯食べる?」
「えっ!? い、いいんですか?」
つむぎは提案をした。せっかくだしそまりと一緒にお昼休みを過ごしてみたいとつむぎは思ったのだ。
突然のことに戸惑うそまり。
つむぎは確認するかのようにひなたたちを見た。
「あたしは構わないよー。Unreallyでつむぎとなにしてるのか聞いてみたいし」
「こともいいよ。賑やかなのは好きだから」
二人は承諾の返事をした。さやだけは言葉を放たず、しかしこくりと返事をするように頷いた。
「そ、それじゃあお言葉に甘えて……」
そまりは邪魔にならないか不安そうな顔をしつつも優しく振る舞うひなたたちを見てつむぎたちに同行することを決める。
これでメンバーは五人となり学校の屋上へと向かうことになった。