【過去】『アウトサイダー』(コリン・ウィルソン,)
1956年発行。
「アウト・サイダー」=<容易に周囲の人となじめず、仲間はずれになっていることを病的に意識している個人>
「アウト・サイダー」などというと、なんだかちょっとカッコイイようにも思えるのだが、この本で紹介される人物たちは、別段そう願って生まれてきたわけではないようで。そう生きざるを得ない苦悩に満ちた人間ばかりである。
この世の秩序やルールは多数決によって決まっているようなものであり、その抽選にもれた一部の人物たちは「異端者」としての人生を歩んでいくしかないのか。
本が読まれる理由として、それに「共感ができるか」、もしくは「衝撃的であるか」のふたつに大きく別れるだろう。
本書はその後者である「理解しがたいが多くの人に読まれた物語」の主人公たちをまっこうから分析した本だ。
『異邦人』(カミュ)のムルソー。
『嘔吐』(サルトル)のロカンタン。
『荒野の狼』(ヘッセ)のハリー・ハラー。
そして『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)など、出てくる人々ほとんどがまさにアウト・サイダーであるといってもいい。
若き頃に誰もが一度は感じるだろう「自分は何か周りとは違っているのではないか?」という甘っちょろい幻想と心配を粉々に打ち砕いてくれた一冊でもある。
真に苦悩に面している人物はそんなことは考えないだろうし、たぶんそんな余裕もないんだろな。
個人的には、この本で紹介されているさまざまな文学──これらを読むきっかけとなった書として今ではとても感謝している。
著者のコリン・ウィルソンはこの後、オカルトの権威のような感じになっていくが、この本だけはちょっと別物としてとらえた方がいいかもしれない。
最後に本文から。
「すべての男女は、他人に対して擬装をやめない。彼らの尊厳も、哲学も、宗教も、すべてが野蛮で無統制で、不合理なものに艶だしを塗って、なんとか文明的、合理的なものに見せかけようとする試みにすぎない。『彼』自身は、真理を旨とするがゆえに『アウト・サイダー』なのだ──」