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【過去】『くまとやまねこ』(文/湯本 香樹実・絵/酒井 駒子)

 2008年発行


 先に言っておくと前置きが長くなる。


『くまとやまねこ』は別れと再生の物語である。


 これを読んで思い出したのは幼い頃、白い猫を飼っていたことだ。


 ある時、アイツは突然いなくなった。ふらっとどこかへ出かけたきり戻ってこなかった。もう二度とこのまま一生会えないのだなと思うととてつもなく寂しくなった。二度と動物なんて飼いたくないとも思った。が……


 一年を過ぎた頃だろうか、ヤツはなんと帰ってきたのである。最初は目を疑いコレはただのよく似た猫だと思った。けれど、左の腰にある斑点、ヘンな感じで折れ曲がったしっぽ──


 どう考えてもアイツだよな、こいつ。


 アイツはまるでなにごともなかったかのように「ふてぶてしく」またうちの一員となったわけで。


 が、不思議なことに、僕は「帰ってきた」アイツがその後どうなったのか、すっぽりと、まったくもって──記憶が抜けてしまっている。


 もちろんアイツは実家の方にももういない。というか、僕が上京する頃にはもういなかった。はずである。


 一度目の別れはあれほど悲しかったのに、二度目はアイツがどのようにして僕のもとを去って行ったのかすら僕は覚えてない。


 それでも僕は今、悲しくはない。なんというのか、またあの時のようにひょっこりと突然僕のもとへ帰ってくるような気がしないでもない。


 そこでフト思う。これはひょっとしたら「一度戻ってきたという記憶」の方が間違っているのではないのか? と。


 アイツはボクの中に“吸収”されたのではなかろーか、と。だからいなくなったのではないかと。


 そういう意味では、会えなくなったからといって、アイツは『消滅』したわけではない。


 たとえば、それを“吸収”した「ボク」と、なにかを“吸収”した「アナタ」が出会ったとしよう。


 会話や生活の中でそいつのかけらが出てくることだってあるだろうし、こうやってこの文章を書いて、コレをたまたま誰かが読んでくれているとしたら、今もアイツはボクの中で息を吹き返すだろう。


 そうやってボクらは「続いて」いく。


(※【現在】の私から一言──そういえばこれは『アヒルと鴨のコインロッカー』を読んだ後も同じことを思ってました)



 本書『くまとやまねこ』はそういったことをボクに思い出させたのである。


 絵本には似つかわしくない、全編モノトーン・カラーだ(一部だけ色がある)。


 最初に読み流した時はふ~んと思ったくらいだったが、すぐに繰り返して二度目を読んだ。


 そこで思った。


 本書はラストでどうとか感動するといったものではない。一度、全部を読みとおして、もう一度最初から読む。


 すると冒頭のシーンでぐっときてしまうのだ。


 一度目は別にどうと思わなかったファースト・シーンが二度目でぐっと心にせまってくる。

(※【現在】の私から一言。そういえば『あの映画は面白かったのか?』で書いた『LA LA LAND』の時もこんなこと書いた覚えがあるな……あの映画もそうでしたね)


 くまくんは大好きなことりくんに言う。


「ねえ、ことりくん。また“今日の朝”だね。昨日の朝もおとといの朝も“今日の朝”だって思ってたのに不思議だね。でも僕はやっぱり“今日の朝”が大好きさ」


 しかしタイトルが示す通り、本書は『くまとことり』ではなく『くまとやまねこ』である。そう、ことりくんは序盤に死んでしまうのである。絵本では珍しい展開なのであります。


 やまねこがどんな役割なのかはぜひ、本書を読んで……いや眺めてほしいところ。


 今、思うと、やまねこが持っていた汚れたタンバリンというのも印象的です。


 素晴らしい絵です。


 ぜひ、続けて二度、読みなおすことをお勧めします。



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