世界
この作品は牧田紗矢乃さん主催、第四回・文章×絵企画の投稿作品です。
この作品は、桧野 陽一さんのイラストを元に執筆しました。この場を借りて、御礼申し上げます。
桧野 陽一さん:https://10819.mitemin.net/
手野公園、そこには様々な人が、時を置かずして集まっている。
走る人、歩く人、話す人、黙る人。
そして、趣味の人もたくさんいる。
公園の通路は石畳でできている。
煉瓦のようなものがずっと続いていて、左右は少し段になっていて通路と区別されていた。
通路は電車が通れるようになっているが、これは公園が広いから、そのための交通機関となっていた。
そこで、私は絵を描いている。
イーゼルを立て、いつものように椅子を持ってきて、画板をかけると、あとはキャンバスを広げる。
「何を描いているのですか?」
ふとしばらく経ってから、女性に聞かれる。
「世界を描いているのですよ」
私は彼女に絵を見せる。
「わぁ、きれいですね」
とてもうれしそうに彼女は言ってくれる。
「まだ描きかけなんですけどね」
「描きあがったら、いただけますか?」
「え、まあ。これでよろしければ」
「ありがとうございますっ」
彼女はそう言うと、近くの段差に腰かけてじっと私を見てくる。
筆致や何を描いているのか、どんな気持ちなのか。
それを細かく知ろうとしているようだ。
描き始めたのが午前8時。
描きあがったのは午後も3時へさしかかろうとしていた。
「できあがりましたよ」
ふう、と私は一息入れ、ペットボトルの水を飲む。
クーラーボックスの中に入れていたおかげで、まだ冷たくておいしい。
「ありがとうございます。いただいていきます」
絵を入れる袋は、何かのアニメキャラがかかれたバッグだ。
内側をビニール袋で覆っていて、他に色移りしないようになっている。
「また、来てもいいですか」
「ええ。絵を描いていない時もありますが、それでも見つけてくださったら声をかけてください」
握手を交わして、彼女は元気に去った。
私はというと、少しペットボトルを続けてのんでから、片づけて家路へ就いた。