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箱庭のピアニスト  作者: テトラ・カノン
2 機械仕掛けの国
8/12

4 merry bad end

 階段を降り始めてからかれこれ30分は立った気がする。

 だけど一向に下に着く気配が無い。

 もしかしてループしてる?


「スーさん止まって!」

「なんだよいきなり」

「この階段やっぱりループしてます」

「ループ?」

「そうです。さっきこのドアに傷をつけたんですがそれがまた回ってきました」

「つまりは……地図貸して」

「はい」

「ははーん、これはさっきから見えてる螺旋階段の扉のどれかに入れば良いってことだな」

「ですね。何が起こるかわからないのでここは慎重に……」

「よーし。まずこの目の前の扉だ!」

「話聞いてる?!」

 私の話を聞かずに目の前のドアを勢いよく開けやがった。


「うおおおおおおお!人が来たぞおおおお!」

「は?」

「なんだこれは」

 二人はあっけにとられた。

 そこには多くの人が牢屋に詰めこまれていた。

 たぶんこの世界にもともと住んでた人達だろう、家の写真で見かけた人もいる。


「もし、旅のお方さん。片手より少々大き目な鍵を見かけませんでしたか」

「これか?」

 スーさんはポケットからさっきのカギを差し出した。


「うおおおおおお! 鍵を持ってたぞおおおお! ここからでられるぞおおおおお!」

 牢屋に入ってる人で大歓声だ。


「あと、もしあればなんですが丸いスイッチなど持っておられないですか?」

「これ?」

 私もポケットから差し出した。


「まじかあああああ! この子たちスイッチまで持ってたぞおおおお! これであの忌々しいロボットをぶっ壊せるぞ!」

 再び大歓声。

 即座に一同牢屋から出るや否や


「行くぞおおおおおお! 作戦は指示した通りに! うおおおおおおおお!」

 と、一人の若者を先頭に次々に扉から出ていった。


 気づいたら牢屋はガランとしたもぬけの殻になってた。


「なんだありゃ?台風が通り過ぎてったみたいだな」

「ふぉっふぉっふぉっ。君たち良くやってくれた。村長に変わり礼を言うぞい」

「うお! びっくりしたな」

 いつの間にか背後に年配の爺さんがいた。


「なんなんだこの惨状は」

「いやはや。つい数日前、我が世界に名を轟かす悪名高いロボ博士がいてな、そいつが突如ロボットによる侵攻を始め人間は軒並み監禁された訳じゃ。簡単に言うとな。」

「その人はどこへ行ったんですか?」

「それがわかれば苦労しないんじゃがのう……奴は最期我々に『娘に会いに行く』とだけ告げて消えたわい」

「娘?」

「そう、じゃがその娘、数年前の時計塔火事で死んでるんじゃ。だからみんな自殺だと思っておる」

「そりゃあ、悲しいな」

「まあ、そんな悲しいことは置いといてじゃ。後で礼がしたい。何か我々に手伝えることがあれば何でも言ってくれ」

「あ、それなら一つ。この近くにピアノってないですか?」

「ピアノ?」

「ピアノ?」

 おじいさんとスーさん口をそろえて言った。


「メイドちゃん、なんでピアノ?」

「え? 私にもわからないでもピアノを探してるの」

 私もなぜピアノと言ったかは全くわからない。

 でも今とてもピアノを弾きたい。

 弾くべきだと本能が訴えてくる。


「ピアノか、それなら真っ白な扉に行きなさい。整備もきちんとされていると思う」

「ありがとうございます」

 私は一礼してスーさんを引っ張っていった。


「メイドちゃんどういうことなの?」

「ごめんなさい。わからないのでもなんかこう……姫様が呼んでる気がするの」

「はあ?」

 とかなんとか言ってる間に着いた。

 一羽の水鳥が彫られた白い扉だ。


 開けた先は何の変哲もない音楽室。

 私は導かれるままにピアノに座った。


「お、おい……」

「聞いててスーさん」

 私はおもむろに演奏を始めた。

 手は勝手に動くが私の知らない曲。

 何だろう。姫様がこの世界で見たものを表現したのかな。

 それともただ単に思い出なのか。


「あ」

「あ」

 ふわっと宙浮かぶ感じ。

 気づいたら先ほどまでいた世界は遥か目の前で小さく縮んでいっている。


「メイドちゃんの読みが当たったな。次の世界に行くぞ」

「はい!」

 私たちは最初と同じように真っ逆さまに落ちていく。

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