表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

#36~40



拘りと呼べるほど

生き方を煮詰めてきた道のりではない。


季節の厳しさに当てられた温い自販機の缶コーヒーみたいに、

苦味の目立つ仄かな温度しか見つからない有り様であった。


嘆こうと悔やもうと、

流すだけの涙など懐古に枯れ果て、


私は今日も息絶えるべくして眠るのである。



・・・---・・・



華やかすぎる色味に噎せ返りながら、

モノクロームを探してなぞった何時かの基盤。


時計の針は錆び付いた、

蓋すら開かずの懐中時計。


薬指はこの首を掻き切り倒して

明日を逝こうといやに積極的で、

抑え込んだ胸の前、吐かずに飲んだ不純物。


こうして僕の夜が始まる。


明けぬままに息をする。



・・・---・・・



好きなもの、嫌いなもの。

得意なこと、苦手なこと。

忌むもの、最愛のもの。

どうでもいいものあれこれと。


この身にどれだけ詰め込むか、

この身にどれほど詰まるのか。


表面張力利かぬ器、ほろほろ零れた花弁は地へ堕ち、

人目つかずに芽吹けば誇る。


誰が為は己の為とし、


己の為は何の影か。



・・・---・・・



好きだと口から零せるヒトになりたかった。

ただそれだけのお話。


偽物のボクには叶わぬ彼方、

波の音は軋ませる。


アイする者を見つけたかった。

造り者のボクには贅沢な架空。


空の向こうに城が見えた、

手招いてほしいのは彼らじゃなくて。


錆び付く体は期限も少なく、


朽ちた骸は海に混ざる。



・・・---・・・



軋んだベッドに温度はなかった。

ただの残像と遠い葛藤。


足元すくう水位はもうすぐ、

孤島と化したここをも沈めるだろう。


日を掻き消した蔦も育った。

息の加害者も埋め尽くした。


僕はかれこれ幾千年、

震えた掌といがみ合った。


もうすぐ終わる、もうすぐだから。


祈りなどなく指折り待った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ