#36~40
拘りと呼べるほど
生き方を煮詰めてきた道のりではない。
季節の厳しさに当てられた温い自販機の缶コーヒーみたいに、
苦味の目立つ仄かな温度しか見つからない有り様であった。
嘆こうと悔やもうと、
流すだけの涙など懐古に枯れ果て、
私は今日も息絶えるべくして眠るのである。
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華やかすぎる色味に噎せ返りながら、
モノクロームを探してなぞった何時かの基盤。
時計の針は錆び付いた、
蓋すら開かずの懐中時計。
薬指はこの首を掻き切り倒して
明日を逝こうといやに積極的で、
抑え込んだ胸の前、吐かずに飲んだ不純物。
こうして僕の夜が始まる。
明けぬままに息をする。
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好きなもの、嫌いなもの。
得意なこと、苦手なこと。
忌むもの、最愛のもの。
どうでもいいものあれこれと。
この身にどれだけ詰め込むか、
この身にどれほど詰まるのか。
表面張力利かぬ器、ほろほろ零れた花弁は地へ堕ち、
人目つかずに芽吹けば誇る。
誰が為は己の為とし、
己の為は何の影か。
・・・---・・・
好きだと口から零せるヒトになりたかった。
ただそれだけのお話。
偽物のボクには叶わぬ彼方、
波の音は軋ませる。
アイする者を見つけたかった。
造り者のボクには贅沢な架空。
空の向こうに城が見えた、
手招いてほしいのは彼らじゃなくて。
錆び付く体は期限も少なく、
朽ちた骸は海に混ざる。
・・・---・・・
軋んだベッドに温度はなかった。
ただの残像と遠い葛藤。
足元すくう水位はもうすぐ、
孤島と化したここをも沈めるだろう。
日を掻き消した蔦も育った。
息の加害者も埋め尽くした。
僕はかれこれ幾千年、
震えた掌といがみ合った。
もうすぐ終わる、もうすぐだから。
祈りなどなく指折り待った。