表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

#31~35

 


全てが物語っていた。

哀れな残骸ばかりが部屋を占領し、

足の踏み場もないこの部屋は余裕のなさと比例している。


視えぬ泡は一つ、二つと浮かび上がり、

息を攫って爪を立てる。


嗚呼、この心臓は今も尚無様に、

未練がましく日々を刻む。


手荒に扱う螺子も朽ちず、


深い深い底に堕ちる。



・・・---・・・



珈琲も煙草もアルコールも、

不可思議な苦味に魅了された。


解る人にだけでいい、解る人にだけ味わってほしい。


彼等は存在を主張して、甘美を葬り今に至る。


私の役目は夢ではない、私の役目は仄暗い運命。


見上げた空には無数の塵。

月明かりに溶く紫煙と湯気。



・・・---・・・



チチ、ヂヂと鳴く煙草。

誰も居ぬ部屋、灯火世界。

ちくりチクリと喉を刺す。


優越至極の舞台上、

此処は何処かと尋ねる少女は

彼の元を離れはしない。


揺蕩う灰に軋む球体、

「君はさっさと夢にお帰り」

呟く声は肺の奥。


此処は何処かと二度目の言葉、


彼の耳にはもう届かない。



・・・---・・・



血濡れた唇にたりと弓月、

ここはサイハテようこそ壺へ。

賽は投げられ海の底、その手に握るは何のイト。


見えぬ世界の真と裏、

明ける遊戯の代償に君の望んだ糧一つ。


求む欠けた渓谷にて、

滅びとあぶくを携えたなら一つ目の問いは既に底へ、


見つけんと嘆けば夜は沈み、

忌々しくも緋は灯る。



・・・---・・・



無味無臭の人の子に成り下がるぐらいならば、

私は禁断の果実や、

たんと毒を蓄えた嫌われ者に生ナりたかった。


隠れんぼに投じる幼い月夜、

暗闇の梺で奇妙な煙は天まで届かず、

視界の端にて形を消し行く。


さようなら、愛しい紫煙よ。


二度と見れぬ軌跡を前に、

優越の刻をきざもうか。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ