#26~30
ぼうっと灯るその中に、
君がいるのだと酷く安心しました。
それは寒い夜のことです。
感覚がひりつき全てを拐われながらに
目に映す橙は三途の川など比でなく耀き、
私の心を容易く連れ去りました。
嗚呼、君は何をしているのでしょう。
私のことなど露と知らぬまま、
向き合う物を知りたかった。
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もう少し、もう少しと頑張っていた。
ほんの一握りの活力と、
抱えきれない意地と病の果てで。
幾度となく夜を越えては朝日を迎えた。
かじかむ手に息を吐き、
冷えたタオルで首元を冷やし、
季節を何度とふいにした。
得るものは何処にある?
得たいものは何処にある?
それはきっと、視えぬ処に。
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つまらぬ日々の切れ端を、
どうか形に出来まいかと縫い合わす。
裁縫など、日溜まりの教室で聞き流していたのだが、
絆創膏だらけの指先で針を操り糸を絡ませる。
解れも多く端は合わず、
寝ずに拵えた一枚の布。
纏って寝るには頼りなく、
着て行こうにも不格好。
やるせなさばかり募っていた。
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流行りものが嫌いでした。
街を行けば皆々様が一様に同じ物を持っている光景は、
あまりに存在意義を亡くしてしまう。
そこへ私も同化し往来を闊歩するなど、
考えるだけで虚無に帰すのと同等でした。
足並み揃えて安堵する心が知れません。
こぞって御手を繋ぐ理由が計り知れないのです。
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どうせ眠れぬ夜だと嗤う、
きっと私は人形のよう。
人の息なき世界の果て、漸く生を弄ぶ。
下らぬ光に背を向けて、
其処彼処へと闇は散らばる。
きっと私は人ではない、
きっと我楽多寄せ集め。
冷たい黒に身を寄せる。
錆びれ尽くしたこの身でも役に立つこと夢に見て、
ざらつく影に息吹を曝そう。