#16~20
静謐な雨の音さえ脳を揺るがす。
嗚呼、今日は酷く暴れる。
始まりは何時だったか、
引き金に指をかけ頭蓋を壊した日は雨だったか。
誰も居ない右左。響く痛みと走馬灯。
未練がましく息は続き、鼓動を殴るのも早何度。
憐れで醜い神が一人、
流れる温度は寂しくも温か。
私は今日も、四季を待つ。
・・・---・・・
影はつかず離れずの距離、
保っては時折顔を覗かす。
彼方の深底、記憶の陶酔。
手招きにつられ気付けば目の前。
朧気な輪郭、微かな香り、
にたりと惑わす眼も唇も、全ては泡沫遠い日向。
ひやりと染み入る冷淡に、
無様で卑しく下らなく、
心の温度を奪われ絶える。
明日も私は、きっと摘まれる。
・・・---・・・
好意の枷、Iの磔。
どちらにしても私の身体を蝕む他なく。
耳鳴りをもたらし胃の覆しさえ造作もない。
産物の全てはかつての戒め罪と罰、
下らぬ副作用に囚われて、永劫解き放たれるとは思えずに。
しかしそれでも貴方を想おう。
貴方の為なら口角持ち上げ、
謹んで毒を飲もうではないか。
・・・---・・・
懐かしい香りがした。
遠い記憶、そう遠くもない記憶。
悪戯に擽った鼻の先、
残酷なまでに温かな毛布の埃っぽさと香水の残り。
悪魔の囁きは鼓膜を掻き毟りたくなる。
どうしようもない寒気と沸騰を弄ぶ夜。
朝焼けはそこにあった。
現はそこにあった。
しかし夢を見る為には、
微睡みがなかった。
・・・---・・・
どうせ消えぬ囚われならば、
いっそ慈しんでやろうかと呟く。
カラメルよりも煮詰めた
喉に来る甘さと苦味で包み込み、
手間隙かけた装飾をあしらって、
梱包の袋さえ硬貨をかけましょう。
芸術品と名をつけて、
素晴らしいでしょうと見せびらかし、
原型など留めさせずに世話をしてやりましょう。