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#06~10



宵闇に落とした水風船。

弾けて濡れた下駄と爪先。

時間に溶けたアスファルトの先、提灯が手招きニイと笑う。


「おいでおいで、代わりは此処に。

 おいでおいで、来たれば魔寄(マヨ)へ」


通りすがりの猫が一匹、二俣揺らして行くのは果てか。



・・・---・・・



見離された公園に一つ、古びたベンチ。

二人がけにはいつも一人、とある少女の特等席。


好きでも嫌いでもない音楽をイヤホンで流し込み、

五時のサイレンが隙間を潜って鳴り届くその時まで、

少女は一人、空いた隣を撫でていた。


雨風にさらされて出来た木のささくれを、

一人いじくっていた。



・・・---・・・



蛍の光は幻の一つだった。


かつて存在していたとて、

今見えなくば妄想の種に他ならない。


夜に浮かんだ淡い灯も、


溶けては彼方、憧憬の産物。



・・・---・・・



名前など要らなかった。

飾りに関心などなかった。

人間に興味など、何一つなかったのだ。


眩しい朝焼けと底無しの宵闇さえあれば、

他の道楽も暇潰しも下らぬ産物で、


私はただ、延々流るる今日を消費していたし、

未来永劫そのつもりだった。


君が起こした、ちゃちな偶然に巡り逢うまではの話。



・・・---・・・



朝焼けが舞っていた。


ごった返した駅のホーム。

誰ともなく気怠い空気を充満させた電車の中。

鬱屈しながらも規則的に流れる人波。

ふりだしの場として誰彼々をも排出する終着駅。


朝焼けが舞っていた。

俯く皆に気付かれないまま。


悠々と広々と、

あまりに眩しすぎたせいで目も当てられない。


 

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